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「僕は仲間外れで人に理解されなかった」 ─ 映画『グランツーリスモ』デヴィッド・ハーバー「だからそういう人に、自分は理解されていると感じて欲しい」【インタビュー】

プレイステーションの大人気ドライビングシミュレーションゲーム『グランツーリスモ』初のハリウッド実写映画が、いよいよ2023年9月15日より公開になる。ゲームのトッププレイヤーを実際のプロレーサーに育成する前代未聞のプロジェクト「GTアカデミー」を舞台に、ゲームプレイヤーから本当にレーサーとなった男の感動の実話を描く物語だ。『第9地区』などのSF作品で知られるニール・ブロムカンプがメガホンをとった。

主な出演は、主人公を演じるアーチー・マデクウィやプロジェクト発起人役のオーランド・ブルームほか、「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のジム・ホッパー署長役で最もよく知られ、マーベル『ブラック・ウィドウ』(2021)レッド・ガーディアン/アレクセイ・ショスタコフや、『ヘルボーイ』(2019)や『バイオレント・ナイト』(2022)など話題作で活躍するデヴィッド・ハーバー。ハーバーが『グランツーリスモ』で演じるのは、チーフエンジニアとして主人公を厳しく、そして優しく指導するジャック役だ。初めはゲームプレイヤーとしてレースの世界にやってきた若者たちを疑うが、やがて情熱と共に絆を深めていく……というアツいキャラクターである。

ハーバーが持つ、ややコメディ的な印象とは異なり、頼れる「おやっさん」的な立ち位置。熱演を見せたハーバーに、THE RIVERでは動画でインタビューを行った。

『グランツーリスモ』ジャック役 デヴィッド・ハーバー 単独インタビュー

──あなたが演じたジャックはカーレースに対して非常に情熱的な人物ですが、撮影ではさまざまな感情をパッと瞬間的に表現する必要があったのでは。たとえば彼は、レースを見ながら苛立ったり、興奮したりします。ああいった感情表現は一瞬で行えるものなのですか?それとも、感情的な準備を要しましたか?

いつだって役作りはしています。本作の撮影では、レースカーがピットに入ってくるのを僕たちが待ち構えていて、そこから発進していくというように、多くのことが一発撮りでした。別のシーンでは、ヘッドセットを着けた僕とコンピューターだけで、他は何もないということもありました。ニール監督から通信で「来ますよ!」「ミュルサンヌ・ストレートに入ります!」と指示が入るんです。

たくさんの人やクルマが同時進行で動いていくシーンでは、その中で自分の感情も同時進行で表現します。一方では、監督と自分の二人きりのシーンもありました。だから、彼がどこにいて、どう反応するのか、しっかりと準備をして挑みました。ですから、シーンによって異なりますね。

グランツーリスモ

──つまり、本物のカーレーシングを眼前で見ていた?

はい。すごかったですよ。本物のサーキットで撮影したんです。ブダペストでの撮影が多かったですが、巨大なサーキットがあってね。撮影では毎日、ピットでの場面であっても、5台ほどの車が時速182マイル(約293キロ)で走り抜けていくんです。撮影している側をですよ。ニールはそうやって、背景で車が走り抜けていく感覚を捉えていたんです。

製作中は丸一日、大イベントが続いていたような感覚でした。現場に行くと、そこはレース会場です。レースカーがピットに入ってきて、撮影しながらタイヤを交換したり、ガソリンを入れたりしているんです。そしてコースに戻っていく。だからみんな、映画の撮影をしているというより、本物のスポーツイベントの最中にいるような感覚でした。

だからこそ、この映画には激しさやリアルさが宿っていると思います。みんな、内心ハラハラしていましたよ。だって、時速320キロのマシンが走り抜けていくんですから。本当にヤバかったですよ。

グランツーリスモ
Gran Turismo

──この映画の素晴らしいところは、この手の映画としては初めてといっていいほど、ゲーム文化を真に祝福していることだと思います。多くの場合、ゲームは過小評価され、悪者とみなされることもあります。僕もよく親から「ゲームばっかりしてないで、宿題やりなさい」と言われていました。しかしこの映画は、もしも何かに情熱を注いでいれば、それがなんであれ、人生が変わるかもしれないということを示しています。

僕はゲームとは複雑な関係なんです。僕自身はゲームが大好きなんだけれど、やっぱり「ゲームをやめて宿題をやりなさい」と言われて育ちました(笑)。だから、ゲームに対して罪悪感も少しある。でも今ではeスポーツというものがありますね。「スタークラフト2」やRTS(リアルタイムストラテジー)ゲームはよく見ていましたよ。スカーレットやヒロといったスーパープレイヤーがいるのですが、彼らのAPM(Actions Per Minute、一分あたりの操作量)は400にもなる。これはとんでもなくすごいことで、指のスピードや反応速度、反射神経としては、プロのピアニスト並なんです。彼らは正真正銘の達人です。もっと評価されるべきです。

僕たちゲーマーは、まさにオタクとかナードと言われ、下に見られてきました。でも、彼らはとんでもない能力と、とんでもない才能の持ち主なんです。もっと尊敬されるべきだと思いますし、僕は尊敬しています。

グランツーリスモ
GRAN TURISMO: BASED ON A TRUE STORY

──『グランツーリスモ』のレースのシーンでは、スタントダブルたちが実際に車を運転しています。観客もGを感じることができますね。『トップガン マーヴェリック』に似た、劇場体験に向いた映画だと思います。やはり、この映画は映画館の大スクリーンや迫力の音響で観るべきですか?

もちろん!撮影している最中でも、これは大スクリーン向きの映画だと感じていました。猛スピードで走る車を、時速160マイル(約257キロ)のドローンカメラが真正面から撮っているんです。何台ものドローンが大破しました。本当にビッグでリアルな感覚の映画です。まさに『トップガン マーヴェリック』のように、映画館で観るべき映画です。

グランツーリスモ

一方で、本作は胸アツなスポーツ映画でもあると思います。劇場に集まった見知らぬ観客たちが、みんなで一緒に笑ったり、泣いたりできるような作品です。そして、みんなで一緒に応援したくなると思いますよ。実際に、僕も試写会で知らない人たちと観たんですが、一緒に「イエス!イエス!」ってなる瞬間があってね。知らない人たちとそうやって一緒に盛り上がれるのは楽しい。一人でソファで観るのとは違います。みんなで一緒に席に座って、クスクス笑い合うんです。

一緒に歓声を上げるほど夢中になれるなんて、すごいことですよ。そういう共同体験は最高ですね。この映画には、そうやって分かち合えるような瞬間がたくさんあるんです。

グランツーリスモ
Gran Turismo

──そして、この映画は“弱きもの”の物語でもありますね。「ストレンジャー・シングス」や『ブラック・ウィドウ』でもそうですが、あなたが演じるキャラクターが困難に立ち向かうのを観るのが大好きです。弱き者がヒーローとなる物語の、どんなところに惹かれますか?

僕自身、これまでの人生で、自分はちょっと変人だとか、仲間外れだとか、人に理解されない、理解し難い人間だと感じてきました。そういう感覚を持つ人はたくさんいると思います。そういった人が成功したり、理解されたりするのは素敵なことです。

僕の芸術活動の目標は、仲間外れだと感じているような人に、自分は理解されていると、世界の一員なのだと感じてもらうことなんです。弱者のストーリーも、それと同じだと思います。

グランツーリスモ

映画『グランツーリスモ』は2023年9月15日、日本公開。

ブロムカンプ監督へのインタビューもどうぞ

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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