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『グレイテスト・ショーマン』既存曲のミュージカルにするよう求められていた ― ヒュー・ジャックマン&監督がこだわり貫く

グレイテスト・ショーマン
(C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

映画『グレイテスト・ショーマン』の大きな魅力は、優れたミュージカル・ナンバーと出演者によるパフォーマンスにある。本作は『ラ・ラ・ランド』(2016)で作詞を担当したベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが楽曲を提供したオリジナル・ミュージカルだが、その背景には主演のヒュー・ジャックマン&マイケル・グレイシー監督の強いこだわりがあったようだ。

監督は英Den Of Geekのインタビューにて、20世紀フォックス側から、本作を既存楽曲のミュージカルにするよう求められていたことを明かしている。
批評家からの酷評をはねのけて米国で大ヒットを記録した本作は、はからずも劇中の展開にぴったりと一致するような奇跡を見せて話題となっていたが、ここでは作り手たちが“グレイテスト・ショウ”のために信念を貫いたエピソードをご紹介しよう。

製作のカギは「音楽家の発掘」

マイケル監督が『グレイテスト・ショーマン』の製作に携わったきっかけは、自身の手がけたCMに出演していたヒュー・ジャックマンが、本作の脚本を送ってきたことだったという。「特別な作品になる、と彼は思っていましたね」と振り返る監督は、主演俳優との作業の過程で、オリジナル・ミュージカルを作ることの難しさを悟ったようだ。

その代表的なエピソードが、本作の企画中、「ジュークボックス・ミュージカルとして作るよう、強いプレッシャーをかけられた」というものだ。
ジュークボックス・ミュージカルとは、書き下ろしの新曲ではなく、既存のヒット曲をストーリーに合うように使用する作品のこと。かの『ムーラン・ルージュ』(2001)や『マンマ・ミーア!』(2008)など、ミュージカル映画にもこの手法を採り入れた名作は少なくない。新曲を製作する時間や予算などを削減できるため、スタジオ側に大きなメリットがあることは事実だろう。しかし監督とヒューは、この方向性には決して同意しなかったという。

「(ジュークボックス・ミュージカルなら)みんなが楽曲を好きであることはわかっていますからね。ヒット曲を使えば安全だと思います。けれどもヒューと僕には、すべて新曲のオリジナル・ミュージカルを作ることに強い思い入れがありました。だから、(楽曲を作るのに)ふさわしい人を見つけるのに長い時間をかけると決断したんです。」

その後、白羽の矢が立ったのはベンジ・パセック&ジャスティン・ポールの二人だった。しかし、当時の彼らは『ラ・ラ・ランド』を手がける以前で、その名前は決して知られているとは言えなかったのである。

「その頃、彼らはオフ・ブロードウェイのショーをひとつ作っただけで、誰かに信用されるような経歴はありませんでした。それでも彼らと会って、映画のために書いてくれた最初の曲を聴いたら、二人が完璧な人材だということがわかったんです。ミュージカルに目配せしつつ、現代のポップ・ミュージックにも大きな影響を受けた曲を書いてくれると。
僕たちはその中間をやりたかった。(人物の)語りに近い曲ならば、楽曲の中でストーリーを伝えますから、どちらかといえばミュージカル的にする。けれどもその他の曲なら、もっとポップに、軽やかにすることもできるんです。」

マイケル監督らと音楽チームは、スタジオから製作のゴーサインが出る以前から、よりよいものを目指して何度も楽曲を作り直していったという。監督は「(当時)二人の仕事が日の目を見る保証はありませんでした。だから、すべて彼らのおかげなんです。彼らの仕事がうまくいかなければ、映画にはならなかったわけですから」と語っている。

なお、ベンジ&ジャスティンの二人は、『グレイテスト・ショーマン』の公開に先がけて『ラ・ラ・ランド』でアカデミー歌曲賞を受賞。さらに代表作のミュージカル『ディアー・エヴァン・ハンセン(原題:Dear Evan Hansen)』では、演劇界のアカデミー賞といわれる「トニー賞」、2018年の「第60回グラミー賞」を制覇する高評価を受けている。
今後、二人はディズニーによる実写版『アラジン(原題:Aladdin)』に新曲を書き下ろしているほか、同じく実写版『白雪姫』にも楽曲を提供する予定だ。

もしも本作がジュークボックス・ミュージカルになっていれば……という想像は、この映画を手がけたのがマイケル・グレイシー監督とヒュー・ジャックマンであった以上、もはや必要のないものだろう。秀逸な楽曲に支えられた、王道ミュージカル映画としての快感をぜひ劇場で堪能してほしい。

映画『グレイテスト・ショーマン』は2018年2月16日より全国の映画館にて公開中

Source: http://www.denofgeek.com/uk/movies/michael-gracey/54211/the-greatest-showman-director-michael-gracey-interview
© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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