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【レビュー】『ガンパウダー ・ミルクシェイク』両極端MIX、カッコよくてカワイくてヤバイが混ざった刺激的な一杯

ガンパウダー・ミルクシェイク
© 2021 Studiocanal SAS All Rights Reserved.

いろいろなものを混ぜることを「闇鍋」とよく言うが、今日は鍋じゃなくてミルクシェイクを作ります!カワイイもカッコイイもヤバイも全部メタメタに混ぜたら、ガンパウダー・ミルクシェイクの出来上がり!

“ガンパウダー(火薬)”と“ミルクシェイク”という真逆な二つが一緒になったタイトルがよく示しているように、映画『ガンパウダー ・ミルクシェイク』は、殺し屋たちのハードな物語と、キュートでスウィートな世界観のコントラストが楽しい痛快作。トッピングには日本映画を含む古今東西の映画愛ネタが散りばめられており、まさに“映える”ミルクシェイクのように、どの角度から眺めても楽しいし、スプーンですくって舐めても、ストローでズイズイ吸い込んでも美味しい映画だ。

舞台はネオンきらめくクライム・シティ。主人公である無慈悲な殺し屋サム(カレン・ギラン)は、ターゲットの娘エミリー(クロエ・コールマン)を匿ったことで、刺客たちから命を狙われるハメに。彼女が頼ったのは「図書館」を仕切る3人の司書、マデリン(カーラ・グギーノ)とフローレンス(ミシェル・ヨー)、そしてアナ・メイ(アンジェラ・バセット)だ。次々と襲いかかってくる悪党どもを相手に、サムは子連れ狼状態で、そして司書たちはそれぞれの武器を駆使してド派手に戦いまくる。

随所に洒落や遊び心の効いた作品だ。主人公が所属する組織は「会社(ファーム)」という名称で、いかにも堅物そうなスーツを着たオジサンたちがワラワラと登場する。これに抗うのが、カラフルな衣装に身を包んだ女性たち。助っ人となる3人の戦士が、表向きは図書館を運営しているというのもユニーク。ヤバすぎる武器たちが隠されているのは、「暴力」とは対義語であるといえる「本」の中。それも、「ジェーン・オースティン」「シャーロット・ブロンテ」「ヴァージニア・ウルフ」といった有名な小説家たちの本に収納されているところも芸が細かい。

ガンパウダー・ミルクシェイク
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本作の醍醐味は、こうした“両極端な組み合わせ”が連なっているところだ。「暴力」と「コメディ」の組み合わせはその定番であり最たる例だが、本作では“冷徹な殺し屋のファッションや私物がやたらカワイイ”、“笑気ガスを吸って爆笑しながら殺し合いをする”、“狭い駐車場内でスリリングなカーチェイスをやる”、“静かにしなくてはいけない図書館でドンパチ大激戦が勃発する”、“一見お上品で知的な司書たちが返り血浴びながら大暴れする”といったコントラストが視覚的にも構造的にも痛快。監督のナヴォット・パプシャドも「ハロー・キティ映画とタランティーノ映画が出会ったみたいな感じ」と話している。

イスラエル出身のナヴォット・パプシャド監督は、前作『オオカミは嘘をつく』(2013)で、それこそクエンティン・タランティーノ監督にも認められた気鋭。相当な映画オタクで、本作には無数の映画ネタを注ぎ込んでシェイクしている。例えば、映画の序盤で主人公サムが身を包む黒ずくめの衣装の元ネタは、1970年代の『女囚さそり』シリーズの梶芽衣子だという。刺客たちの中でも一際手強い白人の男は、おそらく『レオン』(1994)のゲイリー・オールドマンからの影響だ。また、黒澤映画やセルジオ・レオーネ、ヒッチコック映画、ジャッキー・チェンなど香港映画、はたまたマカロニ・ウエスタンやフィルム・ノワールからの影響も公言。監督は「このジャンルの頂点は『キル・ビル』」とも話しており、確かに『キル・ビル』譲りのケレン味も存分に楽しむことができる。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ネビュラ役で鋭い魅力を放ち、『ジュマンジ』でもアクションコメディに挑戦した主演カレン・ギランに加え、彼女と共に戦う司書たちには、映画オタクのパプシャド監督が夢見た豪華キャストが勢揃い。本人曰く、彼女たちは第一志望のキャストであり、「まさか全員に出演していただけるとは思ってもみなかった」とのこと。控えめで心優しいマデリン役は『スパイキッズ』シリーズや『ウォッチメン』(2009)初代シルク・スペクター役のカーラ・グギーノ、冷静沈着フローレンスはアジアの伝説的俳優ミシェル・ヨー。そしてパワフルなアナ・メイは『ブラックパンサー』(2018)ラモンダ役でもお馴染みの名優、アンジェラ・バセットだ。また、サムと生き別れになった母スカーレット役には「ゲーム・オブ・スローンズ」サーセイ役で強烈なインパクトを残したレナ・ヘディ、「会社」の人事部長ネイサン役には『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)アレクセイ役が豪快だったポール・ジアマッティが起用されている。

ガンパウダー・ミルクシェイク
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これだけのキャストが集ったのだからと、監督は早くも続編に向けて動き出している。まだ正式に製作が決定したわけではないが、既に次回作の脚本を書き進めているそうだ。アイデアは山ほどあるとのことだが、確かにこの作品を観れば、豊かな物語が連脈していくようなポテンシャルを感じることができるはず。

ポップでカラフル、だけどバイオレンスたっぷりの『ガンパウダー ・ミルクシェイク』は、甘さ控えめのシスター・ハードボイルド・アクションだ。日本の漫画やアニメも大好きだという監督による、どこか漫画/アニメ的なパキパキした作風はきっとヤミツキになるはず。公開は2022年3月18日。映画館で、刺激たっぷりの一杯をご賞味あれ。

ガンパウダー・ミルクシェイク
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Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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