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『スター・ウォーズ/新たなる希望』から『最後のジェダイ』へ ― ルーク役マーク・ハミルが考える「時代の変化とその反映」

スター・ウォーズ
©Twentieth Century-Fox Film Corporation Photographer: John Jay 写真:ゼータ イメージ

1977年『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』から、2017年『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』へ
スカイウォーカーやフォースの力をめぐる「スター・ウォーズ」のメイン・サーガは、40年という長い月日をかけて変化してきた。なかでも顕著な変化を示したのが、永遠の主人公であり“ヒーロー”であるルーク・スカイウォーカーの物語だった。姿を消したルークは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)で再登場した際、惑星オクトーにて隠遁生活を送っていたのである。

なぜルークは姿を隠さねばならなかったのか、『エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)からの“知られざる時間”に何が起こったのか。その回答として『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)で示されたのは、ファンの想像を超える背景と展開だった。
激しい賛否両論を呼んだ『最後のジェダイ』について、ルーク役のマーク・ハミルは米IGN誌にて改めて振り返っている。キーワードとなるのは、『新たなる希望』から経過した40年という時間の変化だ。

ルークの物語には「時代の変化」が表れている?

若くて勇敢なヒーローから、歳を重ねて屈折した老人へ。あまりにも振れ幅の大きい変化について、誰よりも戸惑ったのはマーク・ハミル本人だった。

「『ジェダイの帰還』と『フォースの覚醒』の間には大きな(時間の)隔たりがあります。そこをきちんと考えなくてはいけませんでした。“楽観的でポジティブなキャラクターが、気難しくて自暴自棄の、島から人を追い出そうとする男になるまでに、一体どんなことがあったんだろう?”って。」

スター・ウォーズ/フォースの覚醒
写真:ゼータ イメージ

『最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督が描いたルーク像は、実は『フォースの覚醒』を手がけたJ・J・エイブラムス監督が構想したものとはやや異なる。マークによれば、『フォースの覚醒』のラストでルークはフォースの力をレイや観客に示すはずだったそうだ。ところがライアン監督は、そうではないアプローチでルークという人物の変遷を描いた。

現在マークは、40年という時間をかけて描かれたルークの物語や彼の変化について「悲劇的」だと話している。そして、自身や社会の変化についてこう述べたのだ。

「僕はメソッド・アクター(編注:役柄の人格や心理を掘り下げ、その人物になりきって演じるスタイルの俳優)ではありませんが、(『最後のジェダイ』では)メソッド・アクターの技術に挑戦することができました。実際の人生経験を、フィクションのシナリオになんでも関連づけていくんです。
脚本を読んで考えたことは、僕はビートルズ世代なんだということでした。“All You Need Is Love(愛がすべて)”、“peace and love(平和と愛)”。ティーンエイジャーの頃、僕は“自分たちが力を合わせれば、戦争はなくなる、人種差別はなくなる、マリファナは合法になる”と思っていたんです。」

戦争はなくなる、人種差別はなくなる。マリファナは合法になる…はさておき、そうしたポジティブさは、直接的ではなくとも、マークが演じた“オリジナル3部作の”ルークに表れていたものだ。しかし約40年後に『最後のジェダイ』で描かれたのは、それどころか「戦争を裏側から引っ張るビジネスがある」「貧しい人々が一方的に搾取され、虐げられている」というハードな側面だった。そんな中、ルークは孤島から外に出ることを拒むのである。

「僕が当てられたのは、3つのうち1つだけでしたね。(僕たちの世代は)失敗したんだと思います。明らかに、世界は当時よりも悪くなってしまった。」

1977年には前向きで快活だったヒーローが、2017年には心を閉ざして屈折した老人になってしまった。こうしたルークの物語について、マークは背景にある時代の変化を視野に収めたうえで「悲劇的」だと語っているのである。そもそもポップカルチャー/大衆文化とは、“時代の無意識”ともいうべきものを巧みに取り込む(あるいは、知らず知らずのうちに取り込んでしまう)ものだ。もっとも、そんな中でもルークの物語が――確かに悲劇的だったかもしれないが――希望の炎を灯していたことを忘れてはならないだろう。

ちなみにマークは『最後のジェダイ』の制作中、そして劇場公開前後にいたるまで、ルークの描き方に複雑な思いを隠しておらず、一時は「これは僕のルークではない」とまで述べていた。ところが、のちにマークは「僕が間違っていた」として一連の発言を謝罪。「ライアン・ジョンソンは不変の傑作を作ってくれた」との賛辞を送っている

Source: IGN
©Twentieth Century-Fox Film Corporation Photographer: John Jay 写真:ゼータ イメージ

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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