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ハンス・ジマー、初日本公演の直前に語った「本当の思い」 ─ 単独ロングインタビュー6000字

Hans_Zimmer
Photo:Lee Kirby

友人たちとリストを作っています。「どう思う?」とバンドメンバーに尋ねてみて、「良くない」と言われれば、じゃあこの曲はやめようと。逆に、「この曲はやりたくない」と私が拒んでも、「いやいや、この曲は外せない」と言われれば、やります。

『パールハーバー』の楽曲については、かれこれ10年も話をしてきました。私のガールフレンドはあの曲が大好きなのですが、私は好きじゃないんです。でも、次のツアーでは彼女の勝ちということにした(笑)。

──楽曲の中には、10分〜20分の長さがあるものもあります。ライブ演奏のためにアレンジしたり、カットしたりするのですか?

はい。演奏には長すぎるので、たっぷりカットしなくてはならないこともある。それでも、長尺の曲を残すようにもしています。なぜなら、冒険に連れ出せる曲というものがあるから。『パイレーツ・オブ・カリビアン』の曲はMarikoが主役になるような一曲ですが、およそ14分もある。でも、あの映画の世界に連れて行くことができるような曲だから、退屈させない。メロがあって、サビがあって、メロがあって、サビがあってという構成ではない。それぞれに違うムーブがある曲です。だから、『パイレーツ』の曲に文句がついたことはないんです。

Hans Zimmer Live in Yokohama 2025.5.20(火)横浜・ぴあアリーナMM
Photo:Masanori Naruse

それに、ミュージシャンがのびのびと演奏できるものを用意するのがとても大事なんです。彼らはとても美しく演奏してくれるし、音楽がやるべきことをきちんと奏でてくれる。あなたの体の隅々にまで、心にまで響き渡る。そして同時に、知的なクオリティと卓越したテクニックがある。そして最終的に私が好きな理由は、彼らが遊び心に溢れていること。人生には遊び心が必要です。堅苦しいだけの人は嫌いです。葬式で葬送行進曲を演奏する時だって、ちょっとした遊びやジョークは必要なものです。

Mariko:私たちは演奏中にお互いに微笑みあって、楽しんでいますよね。それこそが真の音楽だと思います。

──前回の取材では、とりわけお気に入りの楽曲というものはないとおっしゃっていましたね。では、ライブで演奏するのが特に楽しかったり、エネルギーを感じたりする楽曲はありますか?

『パイレーツ・オブ・カリビアン』の曲がそうですね。『パイレーツ』はバカみたいに楽しい部類。『インターステラー』は、面白くて美しいという部類です。

『ライオン・キング』はいろいろな部類に入る。あれは、もともと当時6歳だった娘のために書きました。そして、父との死別を描いた曲でもある。私も6歳の時に父との死別を経験した。当時、私はまだ父の死に向き合うことができていなかった。だから、あの曲は私の父へのレクイエムでもあるのです。あの楽曲によって、私は父の死に向き合うことができた。

それから、長年気付かなかったことですが、私は女性のための楽曲をこれまでたくさん書いてきました。『ワンダーウーマン』もそうです。『DUNE/デューン』では女性のパワーを描いています。『テルマ&ルイーズ』は、レパートリーに入ったり、外れたりしていますが、是非また戻したい。女性ための素晴らしい映画ですから。でも、コンサートでは映画のイメージを一切投影しません。音楽に語らせ、観客の想像力に委ねるのです。

Hans Zimmer Live in Yokohama 2025.5.20(火)横浜・ぴあアリーナMM
Photo:Masanori Naruse

──『ライオン・キング』ではお子さんのために楽曲を書かれたということですが、今では当時の子どもたちが大人になり、コンサートの観客となりました。僕もその一人です。ご自身の楽曲が世代を超えていくというのは、どんな感覚ですか?

面白いことに、あまり気に留めていないんです。私はあの楽曲で、やるべきことをやった。父への思いを手放すことができた。

今では、私があの曲を演奏すると、娘が喜んでね。カリフォルニアでコーチェラという、大きな音楽フェスティバルがあった時に、私は『ライオン・キング』を演るつもりはなかった。子ども向けの映画ですから。でも、うちのギタリストのナイル・マーが、「ハンス、あなたおかしいよ」と言うんです。「この曲は僕の子ども時代の思い出だ」とね。だから演奏することにしました。すると、コーチェラの8万人の観客が、泣いているんです。みんなが泣いていた。

──僕も、あなたの楽曲を聴いているといつも鳥肌が立ちますし、涙が込み上げてくることがあります。あなたも、自分の楽曲を自分で聴いて感情的な反応を得ることはありますか?

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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