映画『ヒップスター』レビュー ひとりのミュージシャンを通じ家族への想いを真摯に描いた良作!

『ヒップスター』評価・感想

ブリー・ラーソン出演「ショート・ターム」の監督 デスティン・ダニエル・クレットンの初監督作品。
母の死をキッカケに作ったCDアルバムがインディーシーンで注目され 着実にファンを増やしているブルック(ドミニク・ボガード)は、母の故郷であるサンディエゴで生活をしている。
新曲を作るわけでもなく 心にできたしこりとも向き合えないままに日々を過ごしていたある日、母の遺灰を蒔くため 父と3人の妹がブルックの元を訪れる。

実家に帰った時 幼少時代のアルバムを家族で見たことはありますか?
遠き日の楽しき思い出 家族と過ごした時間
それらを振り返ることは楽しくもあるが、あのあたたかい日々へ戻ることはもう二度と叶わないという悲しみも伴う。
ぼくはこの作品を観て、その感覚に近いものを感じました。

http://movieboom.biz/movie/33009/i_am_not_a_hipster

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ミュージシャン
ギターを弾けもしないぼくにはとてつもなく遠い存在 カッコいい存在 別次元の存在に感じられる。

冒頭、ステージに立って歌い出すブルック。
だが、早々に彼はゲロを吐く。

カッコよさの極限とカッコ悪さの極限が同時に描かれるため、ブルックを遠い存在と感じることはなく むしろぼくらと同じくゲロを吐く人間なんだと 妙な先入観を抱かずに彼を追っていくことができた。

とは言え、彼はやはりミュージシャン
芸術家だ。

序盤のあらゆるやりとりからそのストイックさが滲み出ている。
枯れた葉っぱの先端をハサミで丁寧に切り落とす様は、余計なモノは排除し 音楽のみに注力しようとする精神の表れのようであった。

だが、そのストイックさを持ち合わせていながらも 彼は楽曲制作に入らない。
いや、入れずにいる。

彼が心に抱えた問題が、一歩先へ行くことを妨げている。
それを解消しない限りは前へと進めない。

映画ヒップスター

父も母も健在のぼくには、彼の心のすべてを理解することは叶わない。
むしろ一生叶わないことを願うが、人間が人間である以上 親が先に死ぬのは必至。
その道理を把握していれば その想像をして悲しむ心がある者ならば、つまりは誰しもが彼の心に寄り添いながらストーリーを追っていける。

死んだ母への想いを楽曲制作に注ぐ作業と、母が死んだ事実を受け入れるという作業は別次元の問題だと思う。

前者は想いを吐き出す 言わば発散
後者は想いを受け入れる 言わば吸収

悲しみの想いを外に向けて発する(歌にする)のと、自分の心でその悲しみを昇華させる作業

後者の方がきっと重要で 時間もかかり 大変な作業のように感じられる。

ブルックはその作業の真っ最中なのかもしれない。
他人の称賛や善意を拒んでしまうのは、彼の中で母に対する想いに決着がついていないから
母への想いを糧として作ったアルバムに対してのものであるからこそ受け入れられない。

だが、彼はひとりではない。
父も 3人の妹達もいる。
それは救いだ。
家族の登場によって、それまでブルックが見せてこなかった表情が 感情が溢れ出してくる。

母の死を その事実を変えることはできない。
しかし、母を想う時に悲しみのみに囚われるのではなく あたたかさや優しさも伴う心持ちにすることはきっとできる。

劇中、魅力的な非日常展開が起きたりはしません。
ですが、誰にでもいつか訪れるその問題を その葛藤を丁寧に描いていました。

原題である「I Am Not a Hipster」が指し示す通り、ミュージシャン ブルックではなく ぼくらと同じひとりの人間 ブルックの家族に対する想いを真摯に描いた作品でした。

ぜひ劇場でご覧ください。

(c) 2012 Uncle Freddy Productions LLC.png

4
総合評価:B

ヒップスター

原題 I AM NOT A HIPSTAR
製作年 2012年
製作国 アメリカ
配給 ピクチャーズデプト
上映時間 91分

青春
8
2
エロ
2
サスペンス
4
ファンタジー
4

About the author

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

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