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「ヒット作の続編なのに傑作」4つの絶対条件 ─ 『ターミネーター2 3D』公開に寄せて

続編のジンクスを乗り越えた『ターミネーター2』

現在公開中の『ターミネーター2 3D』(2017年8月11日)は言わずと知れた『ターミネーター2』(1991)の3Dバージョンである。しかし、興味深いのはシリーズ第一作『ターミネーター』(1984)よりも続編の方が早く3D化されたことだろう。

事実、『ターミネーター2』は前作以上の興行成績と批評家受けを獲得した作品である。アーノルド・シュワルツェネッガー演じるアンドロイド、T-800の恐怖が前面に押し出された第一作に対し、『ターミネーター2』はハートフルな人間ドラマを盛り込み、広い観客層に愛される内容となった。もちろん、第一作の緊張感を愛する映画ファンも多いだろうが、少なくとも「ヒット作の続編は失敗する」というジンクスを乗り越えた好例といえるだろう。

そもそも、どうしてヒット作の続編はつまらないと言われ続けるのか?それには「続編映画の傑作」を見てみるのが一番だ。2016年、“ScreenRant”が発表した「史上最高の続編映画25本」の上位10本はこうなっていた。

1位『ゴッドファーザー PRATⅡ』(1974)
2位『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』(1980)
3位『エイリアン2』(1986)
4位『ダークナイト』(2008)
5位『ターミネーター2』
6位『ビフォア・サンセット』(2004)
7位『スパイダーマン2』(2004)
8位『トイ・ストーリー2』(1999)
9位『X-MEN2』(2003)
10位『スタートレックII カーンの逆襲』(1982)

 2009年に英国エンンパイア誌が発表した「史上最高の続編映画50本」の上位10本は以下の通り。

1位『エイリアン2』(1986)
2位『ゴッドファーザー PRATⅡ』(1974)
3位『ターミネーター2』
4位 『トイ・ストーリー2』
5位『ダークナイト』(2008)
6位『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』(1980)
7位「ボーン・スプレマシー」(2004)
8位『ビフォア・サンセット』(2004)
9位『スーパーマンⅡ冒険篇』(1981)
10位『死霊のはらわたⅡ』(1987)

なんと10本中7本が被っている。英米圏では「最高の続編映画」と言われれば、『ターミネーター2』のほか、『エイリアン2』や『ゴッドファーザー PARTⅡ』、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』は定番化しているようだ。

それでは、これらの続編映画に共通しているポイントを分析していきたい。なお、ここでいう続編とは「シリーズ第二作目」と定義する。そのため、個人的に偏愛する『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)や『LOGAN/ローガン』(2016)について語れないのは残念だ。

素晴らしい続編の条件その1:前作と同じキャストやスタッフが揃う

『ターミネーター2』は前作の10倍以上の予算を与えられた超大作だったが、監督・脚本ジェームズ・キャメロンに加え、アーノルド・シュワルツェネッガーやリンダ・ハミルトンといったメインキャストも続投している。

『ゴッドファーザー PARTⅡ』はキャストの大半が同じ役柄で続投しただけでなく、撮影の名手ゴードン・ウィリスなどの技術スタッフも引き続き現場に貢献した。『ゴッドファーザー』の重厚なフォルムは受け継がれつつ、過去と未来を行き来するストーリー構成が作の評価を高めたのだ。

前作が傑作として呼び声高いなら、続編には同じキャストやスタッフを集結させる必要があるだろう。

〈悪い例〉『スピード2』(1997):キアヌ・リーブスが恋しくなる…

素晴らしい続編の条件その2:前作がそもそも傑作ではなかった

前作が傑作でなかった場合、たとえヒットして続編を制作することになってもテコ入れは必須となる。欧米圏のジャーナリストは日本のように生ぬるくはない。「どうせ、あの駄作の続編だろ」と冷ややかな目で見てくることは必至だし、批評が悪いと公開前にヒットが遠ざかってしまう確率が急騰するのだ。

アメコミファンから賛否両論だった『バットマン ビギンズ』(2005)がなければ、『ダークナイト』の「主役」、ジョーカーの深い人物造形はありえなかっただろう。当時、アクション超大作に慣れていなかったサム・ライミ監督の『スパイダーマン』(2002)は不完全燃焼感が少なくなかったが、続編はテーマ性、アクション描写ともに前作越えを果たしていた。優秀な映画制作者は作品の欠点を見つめ、修正するだけの技量をそなえているのである。

〈悪い例〉『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』(2016):前作『インデペンデンス・デイ』(1996)にはいくらでも修正点があったはずなのに…

素晴らしい続編の条件その3:続編を撮る必然性がある

 映画が売れたからといって無理やり続編を作っても喜ぶほど観客はバカじゃない。無理やりな設定や、死んだはずのキャラクターの復活、そして「お約束」を越えて「思考停止」に見えてしまう定番シーン…。

 たとえば『ビフォア・サンセット』は『ビフォア・サンライズ』(2004/旧邦題『恋人までの距離』)の9年ぶりの続編だが、登場人物も9歳年をとっている。そして、若さゆえの情熱で突っ走れた前作とは違い、恋や家庭に深く思いをめぐらしながら言葉を紡いでいく。同じように年をとった観客も、キャラクターの変化に共感できる構成になっているのだ。

 『トレインスポッティング』(1996)20年ぶりの続編、『T2 トレインスポッティング』(1917)もまた登場人物が20歳分年齢を重ねている。前作と同じようにケチな犯罪行為やドラッグに手を染める主人公たちも、20代の若者と40代の中年では意味合いが全く異なるのだ。

〈悪い例〉『ホーム・アローン2』(1992): 前作ほどでないにせよ、それなりにはヒットした。しかし、いくらなんでもネタに捻りがなさすぎ。舞台が変わっただけでアイディアはほとんど変わらず…。脚本は青春映画の巨匠、ジョン・ヒューズ。大好きなんだけどこれは流石に肯定できず。

素晴らしい続編の条件その4:モデルチェンジに成功している

大ヒット映画や傑作映画に対し、同じ方法論で続編を作っても観客は満足しないだろう。同じ味の料理なら、最初食べたときの感動にかなうはずがないからだ。そこで、続編では大きく方向転換してしまうパターンもある。『ターミネーター2』は感動要素をふんだんにプラスし、モデルチェンジに成功した。

同じくジェームズ・キャメロン監督の『エイリアン2』も、SFスリラーだった前作から一転、ド派手なアクション映画に生まれ変わった。得体の知れない地球外生命体に怯えるだけのヒロイン、リプリーより、母として敵に立ち向かうリプリーが女性観客の支持を集めたのも見逃せないポイントだろう。

〈悪い例〉『ベイブ/都会に行く』(1998):オーストラリアののどかな田舎の風景が愛されていた前作だったのに、都会に行っちゃダメだろ!

 

こうして見ると、続編=駄作と決めつけるのも早計だと分かる。確かに傑作映画ほど続編に求められるハードルは高くなるものだ。しかし、作り手の創意工夫次第で乗り越えられるミッションには違いない。今年も『ブレードランナー』(1982)の続編、『ブレードランナー2049』やリブート版『エイリアン』シリーズの第二作『エイリアン:コヴェナント』が公開予定だが、果たして…。

おまけ:筆者が選ぶ続編映画BEST10

1位『アダムス・ファミリー2』(1993)
2位『フレンチ・コネクション2』(1975)
3位『バットマン リターンズ』(1992)
4位『グレムリン2 新・種・誕・生』(1990)
5位『マッドマックス2』(1981)
6位『ロボコップ2』(1990)
7位『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)
8位『悪魔のいけにえ2』(1986)
9位『トレマーズ』(1995)
10位『アメリカン・サマー・ストーリー』(2001)

Source:http://screenrant.com/best-movie-sequels-ever-made/
http://www.empireonline.com/movies/features/50greatestsequels/

Writer

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石塚 就一就一 石塚

京都在住、農業兼映画ライター。他、映画芸術誌、SPOTTED701誌などで執筆経験アリ。京都で映画のイベントに関わりつつ、執筆業と京野菜作りに勤しんでいます。

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