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トランプを強く意識するも…失速否めない『ハウス・オブ・カード』シーズン5総まとめレビュー

ハウス・オブ・カード

しかし、その「見せ方」には不満点も多いです。

まず、戦いの舞台がホワイトハウスや議会ではないので、フランシスお得意のパワーゲームが存分に発揮されません。コンウェイ優勢ということもあり、アンダーウッド陣営が「守り」に入ってしまいます。そもそもテーマが「選挙戦」なので、政治的駆け引きはそれほど期待できないのですが。

そして、勝つために彼のやることと言えば、裏工作がほとんど。大統領選挙らしい華々しさには欠けます。シーズン4では大迫力の演説・遊説シーンや討論番組、ニュース映像など、選挙戦のお祭り感も楽しかったのですが…。シーズン5では大統領執務室や会議室での会話シーンが多く、少々地味でした。本当に大統領選挙をやっていたのか?という感じです。

クレアとトム・イエーツの恋愛模様も作品のテンポ感を削ぐ要因になっていたと思います。クレアの人間的な面を掘り下げる展開として非常に重要ですが、特に深みも生まれず、ただ冗長に感じてしまいました。トムがあまり役に立っているようにもみえず、単なる「夜のお友だち」になり下がってしまったのが残念でした。

緻密さに欠ける後半

後半では、過去の不正が暴かれたフランシスが窮地に立たされる様が描かれます。ゾーイ・バーンズ殺害の疑惑(シーズン1)や大統領弾劾の裏工作(シ-ズン3)など、過去に握りつぶしてきた悪事が次々に暴かれていきます。あれだけ強引に敵を排除してきたんだから、一度誰かの不満が噴出してしまえば抑えきれなくなってしまうのも当然かもしれません。さらにフランシスの再選にも疑惑の目が向けられ、にっちもさっちもいかなくなってしまいます。

しかし、終盤で衝撃の事実が明かされます。なんと一連の不正追及すらフランシスの陰謀だったというのです。彼は「真の権力」が大統領ではなく、それを操る実力者にあるのだということに気付き、妻クレアを大統領にすることでホワイトハウスの内外からすべてを操ろうとしたのです。ところが、最後にさらなるどんでん返しが待ち構えています。クレアの裏切りです。フランシスは不正の追及を逃れるため、大統領になる妻に恩赦を出すよう要求し、政界の表舞台から去るのですが、見事に裏切られます。夫フランシスと妻クレアの徹底的な対立が表面化したところでシーズン5は終幕。『ハウス・オブ・カード』は新たな局面を迎えることになりそうです。

非常にスリリングな展開が用意されている後半ですが、前半と同じく冗長で緻密さを欠いた印象を受けます。特に妻クレアの裏切りは、正直フランシスの根回し不足としか思えません。シーズン4でも一度裏切られかけているのに、なぜ彼女をコントロールしきれると考えたのでしょうか。丁寧に戦略を組み立てていく様が魅力的なキャラクターだっただけに、あまりにツメの甘い失敗にガッカリしてしまいました。

加えて「邪魔な人間を(物理的に)消す」という陰謀を多発しすぎです。シーズン5の終盤だけで作家のトム・イエーツ、データサイエンティストのエイダン・マカラン、クレアの右腕で選挙の不正に関わっていたリアン。ハービーの3人が殺されます。これまでもピーター・ルッソ(シーズン1)やゾーイ・バーンズ(シーズン2)などアンダーウッド夫妻にとって邪魔な存在は度々陰謀によって殺害されてきました。しかし、基本的には法的にも倫理的にもぎりぎりアウトになるかならないかのラインを攻めながら、政略で敵をつぶしていくのがこのドラマの面白さだったはずです。都合の悪い人物を安易に殺してしまってはリアリティラインは壊れるし、政治ドラマとしての緻密さにも欠けると思います。おそらく3人の死はシーズン6以降のフランシスとクレアの対立で活かされていくのでしょうが、『ハウス・オブ・カード』としては一線を越えてしまったのではないでしょうか。

不満は多いが…続編に期待

一定の面白さは保たれているものの、これまでの完成度の高さに比べると一段落ちてしまった印象を受ける『ハウス・オブ・カード』シーズン5。しかし、続編が作られることを匂わせるラストになっており、まだまだ期待はできると思います。第13話のラスト、妻の裏切りを悟ったフランシスは「絶対に殺す」とつぶやき、クレアはフランシスのように画面の向こうに語りかけ「次は私の番よ」と宣言しました。いったい、アンダーウッド夫妻はどうなってしまうのでしょうか。シーズン6制作決定のニュースを待ちたいと思います。

Source:https://www.amazon.co.jp/dp/B01M7SOJGX/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_KwntzbEEA3G6C

Writer

トガワ イッペー
トガワ イッペー

和洋様々なジャンルの映画を鑑賞しています。とくにMCUやDCEUなどアメコミ映画が大好き。ライター名は「ウルトラQ」のキャラクターからとりました。「ウルトラQ」は万城目君だけじゃないんです。

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