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映画史に残る!『ワイルド・スピード ICE BREAK』は、もはや怪獣の出ない怪獣映画だ!微ネタバレありレビュー

2017年4月28日(金)、ついに日本公開されたシリーズ8作目『ワイルド・スピード ICE BREAK(原題The Fate of the Furious / Fast & Furious 8)』。本作は邦題サブタイトルに冠された「膠着を破る」という意味もある言葉「ICE BREAK」が示す通り、「強引」でダイナミックなストーリー展開と、頂点を極めた感のあった前作の上を行く「ど派手な」VFXアクション演出によって、主演キャストの死というこれ以上ない悲劇に見舞われ、存続自体危ぶまれたシリーズの再発進を大々的に謳いあげる祝砲のような一作となっています。

日本に先駆けて公開された世界でのオープニング興行収入は、『スターウォーズ/フォースの覚醒』や『ジュラシックワールド』をぶち抜いて圧巻の歴代一位を獲得。興行収益総計も夢の10億ドルに迫ろうかという超がつくほどの大ヒット。もはや映画史に残ることは確実のシリーズ最新作ですが、日本国内に限った話をすれば、『ワイルド・スピード』シリーズは世界的な大ヒット連発とは裏腹に、そこまで人気があるとは言えず、前作までを未見だからという理由で本作を鑑賞することを躊躇している方も、大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
心配ご無用でございます。確かに登場人物相関図は、前作までを予習していた方が判りやすいかもしれませんが、ストーリーの根幹に関わる主要キャストについては丁寧に人物紹介的なエピソードが描かれますので、本作からの観客もちゃんとキャラクターに感情移入できるつくりになっています。
敵も初登場となるヴィランですし、もっと言うなら主人公ドミニク(ヴィン・ディーゼル)以外のメインキャスト、ルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)やデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)は、それぞれ前々作、前作より登場した歴史の浅いキャラクターです。敷居が非常に低い、シリーズの入り口としても最適な本作の見どころを、筆者の個人的で偏った見解ではございますが微ネタバレを含みつつ三つのポイントに絞ってご紹介します。

【注意】

この記事には、『ワイルド・スピード ICE BREAK』に関する微ネタバレ内容が含まれています。

1.観る者の想像を超えるVFX

 (C)Universal Pictures
(C)Universal Pictures

いやね、僕も『ワイルド・スピード』シリーズを紹介するのに「VFXが凄い」なんて当たり前のこと出来れば言いたくないです。しかし、前段でも触れましたが、「車に乗った状態でのスカイダイビング」やら「高層タワービル間を、車で多段ジャンプ」やら、カーアクションとして考え得る演出の全てをやりつくし、お釣りまであった感のある前作『ワイルド・スピード SKY MISSION』を、その想像力や迫力でさらに上回るものを見せられては、もう、ただただ感嘆するより他ありません。巷に蔓延る「どこかで見たようなシーンばかり」なカーアクション映画とは遥かに一線を画し、アバンタイトルのキューバでのレースから始まり、以下掲載の巨大鉄球破壊シーンや、予告編やイメージバックにも使用されているアイスブレイクなアイツとの追っかけっこなど、ここまでとにかく観客の度肝を抜こうとして、それに悉く成功している映画も珍しいです。

https://youtu.be/cK_gcJYItNg

筆者は鑑賞の途中から、良質な怪獣映画を観ているような気分になってしまいました。なかでも白眉は物語中盤のニューヨークのシークエンス。詳しくは言いませんが、敵がターゲットを追いつめる手法や、ドミニクがファミリーと対峙する場面など、よくこんな演出思いつくなと、この部分だけでもお金を払う価値が充分あると言えます。個人的には近年リアル志向にシフトしてしまった007シリーズが、本来持っていた、いい意味での「荒唐無稽なアクション」の伝統を引き続いているのはこの『ワイルド・スピード』シリーズではないかと考えます。

2.まさかのアイツがファミリー加入

(C)Universal Pictures
(C)Universal Pictures

先日洋画アクションファンにとって悲しいニュースがネットを賑やかしましたね。シルベスター・スタローンが『エクスペンダブルズ』続編からの降板を決意したことにより、シリーズ自体の存続に黄信号が灯ってしまったとか。「ああ、もうアイツらに会えないのか」なんて気落ちしてる方に朗報です。『エクスペンダブルズ』シリーズ屈指の人気キャラ、スタローンの副官リー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)。彼が満を持して、ワイスピファミリーに移籍、これからのファミリーは、ドミニクと、前作加入したロック様(ドウェイン・ジョンソン)と、そして彼の三本柱で盛り立てていく、製作者のそういった意図が伺えます。ごめんなさい、冗談です。が、鑑賞後の方ならお分かりのように、あながち冗談とも言い切れないほど、ジェイソン・ステイサムが演じる両キャラクターは酷似しています。(性格や格闘スタイル、話し方や英国特殊部隊SAS出身という出自に至るまでそっくりです。)

© Universal Pictures
© Universal Pictures

ポール・ウォーカー亡き後、否応なく寂しくなってしまったファミリーの顔ぶれに、誰を加入させてテコ入れを図るかと思えば、まさかの前作の敵、アクション俳優としてメインストリームにいるジェイソン・ステイサムを強引にぶち込んでくるこのキャスティング。むしろ清々しいです。

ステイサム演じるデッカード・ショウとは

未見の方にあえて説明しますと、そもそもステイサムが演じるデッカード・ショウは、前作『SKY MISSION』において、ドミニクが大事に大事にしているファミリーの一員、韓国人のハンを事故にみせかけて殺害したことが判明したキャラクターで、端的に言って「ファミリーの仇」なわけです。前作ではその件もあってファミリーと殺しあいもしています。

翻って本作『ICE BREAK』では、あるキャラがファミリーの仇となってドミニクにひどい目にあわされるのですが、本来であればデッカードはあの人と同じ扱いを受けるはずなのに、何故だかハン殺害の件はほとんど不問に付されています(笑)。しかも行使する切れ味抜群のアクションや、終盤に見せる意外な一面など、いかにも善玉な描かれ方はシリーズの熱烈なファンは首をかしげたくなるところかもしれません。
ただ、その件は少し引っかかりますが、ハンはもともと存在感が大きいキャラじゃなかったし、前々作におけるレティの件があるように死んでない可能性もありますので置いておくことにすると、『ワイルド・スピード』は、ヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサムという一人一人ブロックバスター映画の主役を張れる当代きってのアクション俳優三人が、轡を並べて戦うところが観れるというまさにヒーロー大集合、アベンジャーズ的な映画で、そういった意味でも決して見逃せない映画と言えるわけです。

3.ヴィランが恐くて素敵

良いアクション映画の条件として欠かせない「魅力的な悪役の存在」、ヴィランが恐くて強いほど、対極にいるヒーローがその輝きを増すことができます。『ダイ・ハード』のハンス(アラン・リックマン)しかり、『スピード』のハワード(デニス・ホッパー)しかり。しかも本作でヒーロー側に座るのは、前段で紹介した泣く子も黙る三人衆(ヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサム)、生半可な俳優ではこの三人を向こうに回して敵として対峙することはできないと思いますが、そこに持ってこられたのが我らが大隊長フュリオサ(『マッド・マックス 怒りのデスロード』より)ことシャーリーズ・セロン。

© Universal Pictures
© Universal Pictures

彼女が演じるのはサイバー・テロリスト、サイファー。ファミリーの一員天才ハッカー、ラムジーをして「かなわない」と評する超絶頭脳の持ち主です。酷薄そうな表情と眼差し、淡々としていて、それでいてドスが効いた声。血も涙もない所業をしているにも関わらず、彼女が喋りだすと感じる抗いがたい悪の引力。ワイスピシリーズの御多分に漏れず、本作も冷静になるとヴィラン側が考える世界転覆作戦は、運の要素が高い上に効率がいいとは思えないものですが、そのバカっぽさ(褒めてます)を感じない説得力。よく考えれば非常に難しい役どころですが、シャーリーズ・セロンは完璧にミッションをこなしていたと思います。

そういえば彼女は20代のときに『モンスター』でオスカーを獲得していましたね。ヒーロー相手の怪獣役など、もともとお手の物なわけです。そして特筆したいのは本作の脚本、荒唐無稽なストーリーにも関わらず陳腐さのかけらも感じない台詞回しは、キャラクターの魅力を最大限に引き出し、観客を製作者の狙い通りに誘導することに成功していると思います。

 (C)Universal Pictures
(C)Universal Pictures

いかがでしたでしょうか?もちろんダッジ・チャージャーやランボルギーニ・ムルシエラゴ などのスポーツカーもこれでもかってくらい登場しますので、シリーズファンの多数を占めるカーマニアの方々もお腹一杯になると思います。これでもかってくらい予算をつぎ込み、それぞれの歯車がうまくかみ合った「ハリウッドの本気」が観れる一作。ハラハラドキドキして、カッコよさにしびれて、そして最後にホロリと泣ける、「これぞ娯楽」という映画ですので、食わず嫌いをせず、ぜひ劇場の大スクリーンで御覧になってみてくださいね。

 (C)Universal Pictures

Writer

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アクトンボーイ

1977年生まれ。スターウォーズと同い歳。集めまくったアメトイを死んだ時に一緒に燃やすと嫁に宣告され、1日でもいいから奴より長く生きたいと願う今日この頃。

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