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『ワイルド・スピード ICE BREAK』に備えよ!ファミリーの絆が全てを貫く、ワイスピのスピリットとは何だったか

© 2016 Universal Studios. All Rights Reserved.

ブライアン・オコナー(演:故ポール・ウォーカー)引退の初めての続編となる最新作『ワイルド・スピード ICE BREAK原題:The Fate of the Furious)』は、長らくファミリーの支柱であったはずのドム(演:ヴィン・ディーゼル)が裏切り、宿敵デッカード(演:ジェイソン・ステイサム)が味方に加わるなど、シリーズの中でもかなりの異色作になりそうです。

3作目『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』におけるハン(演:サン・カン)の死が、デッカードによる復讐だったことが6作目『ワイルド・スピード EURO MISSION』により判明したため、『TOKYO DRIFT』の主人公であるショーン(演:ルーカス・ブラック)にとっても赦すべからざる存在であるデッカード。

『ICE BREAK』では窮地に陥ったファミリーを救うべく登場するようですが、果たしてかつてのブライアンやホブス(演:ドウェイン・ジョンソン)のように、ファミリーの一員となるのでしょうか
価値観の相違を乗り越えドムのファミリーとなったブライアンやホブスとは異なり、ハンの命を奪った者という大きな壁があります。

『TOKYO DRIFT』で提示されていた、シリーズを貫くテーマ

ドリフト走行を通して自己実現していくショーンの物語であると同時に、ハンの最期の物語でもある『TOKYO DRIFT』。

度々問題を起こし、東京に住む父の元へ引っ越してきた高校生のショーンは、突き付けられるルールに苦悩していきます。“ルールを破ると、どうなるのか”
彼にドリフト走行を指南することになったハンは、その問いに静かに答えています。

俺が今欲しいのは、信用できる奴だ。心を開ける奴かどうか、見抜くのは難しい。車一台潰してそいつの真価が分かるなら、惜しくも何ともない

人生は単純だ。行き先を決めたら振り返らなきゃいい」(“Life’s simple. You make choices and you don’t look back.”)

彼の言葉は今やシリーズ全体を背負ったものに感じられます。

ハンがショーンの様子を窺っている姿が胸を打つ、ショーン、D.K.(演:ブライアン・ティー)、そしてハンによる渋谷センター街でのチェイスシーン。デッカード登場へと繋がる激しいバトルシーンでもありますが、この最中、ある場面でショーンは静けさに包まれ、1作目でドムが語った“自由になれる数秒”を体感します。

しかしそれも束の間であり、デッカードの復讐によりハンを失ってしまうショーン。7作目『ワイルド・スピード SKY MISSION』でドムと出会った彼は、デッカードの是非について問いかけます。もちろん赦すはずはないと言い切るドムでしたが、『ICE BREAK』では彼自身がファミリーを裏切ることに。

『ワイルド・スピード』…亀裂と赦しの物語

© Universal Pictures
© Universal Pictures

これまでにもシリーズにおける家族、ファミリーの根底には、必ずしも全てを許された関係性ではないという側面がありました。

ブライアンは潜入捜査を知られ、裏切り者としてドムやミアと決裂してしまいます。ローマンはかつての因縁を胸にブライアンと対峙し、ホブスはドムを憎んでいました。ジゼル(演:ガル・ガドット)も元は、ドムにとっての敵側に居た人です。

『ICE BREAK』ではファミリーとして登場するラムジー(演:ナタリー・エマニュエル)も、一度はドムと衝突しています(※『SKY MISSION』未公開シーンより)。
“家族”というドムの言葉に拒絶反応を示すラムジー。人付き合いを好まず、望んでいるのは自らの才能の証明だけだと言い捨てています。

『ワイルド・スピード』シリーズでは毎回、相容れない者同士が互いを認め合っていく過程を丁寧に描いていくことで、アクション映画である以上にドラマ性を強めてきました。
赦しがたい相手と向き合い、全てを許容しているわけではないけれど戦いを共にする…。
そんな緊張感があるからこそ、ありえないはずの共闘に思わず胸が熱くなるのかもしれません。

元を正せばデッカードも、ドムたちとの対立は弟の復讐のため…。家族のために行動を起こしたという意味では、シリーズ中唯一ドムと同じ動機を持っていた宿敵です。ハンの痛みを忘れることは出来ませんが、デッカードに真正面から赦しが見出されることもあるのかもしれません。

ブライアンの葛藤を終えてもなお続く物語とは

ヴィン・ディーゼル主演のストリート・レースものであり、同時にポール・ウォーカー主演の潜入捜査ものだった1作目『ワイルド・スピード』では、警察官であるブライアンの葛藤が描かれていました。

ドムとの出会いの中で自分の信念を持つ大切さに気付き、5作目『ワイルド・スピード MEGA MAX』でついに家族となり、ミア(演:ジョーダナ・ブリュースター)との間に新しい命を授かったことで、ブライアンの自分探しは父性の芽生えへと至ります。

浜辺で遊ぶブライアン、ミア、そして二人の間に誕生したジャックを、ドムたちファミリーが見守るという『SKY MISSION』のラストは、シリーズとしても自然なクライマックスだったように思います。

しかし物語には続きあり、10作目まで制作が決定しているとのこと。『ICE BREAK』は新たな三部作の始まりとなるようです。ブライアンが現役を引退したことで、物語はどのように変化していくのでしょうか。

変化する世界観

『ワイルド・スピード』シリーズは、作品ごとにジャンルと世界観が大きく変化していくのが特徴です。

1作目から潜入捜査の要素を引き継いだ2作目『ワイルド・スピードX2』、レースの要素を引き継いだ3作目『TOKYO DRIFT』と続編が作られ、5作目『MEGA MAX』ではそれまでの主要キャラクターが一堂に会し、強盗団としてのドムたちの活躍を拡大したケイパー・ムービーへと舵を切りました。

『MEGA MAX』の制作時、コミカルなシーンはシリーズに相応しくないと制作会社は判断したそうですが、ジャスティン・リン監督が反対を押し切りローマン(演:タイリース・ギブソン)のシーンを作ったことで、今のような形になったそうです。ローマンのノリがなければ、もっと深刻な話になっていたかもしれません。加えてハンとジゼルの出会いが繊細さを生み、ホブスの参戦で熱さが増し、7作目でデッカードが登場し至高のバトル映画にまで昇華されました。

© Universal Pictures
© Universal Pictures

最新作『ICE BREAK』ではさらなる進化を遂げ、ついには巨大潜水艦まで登場することが明かされており、アクション映画としての並々ならぬ気概が伝わってきます。

チームとしてはこれまで通り、ローマンとテズ(演:クリス・”リュダクリス”・ブリッジス)、ファミリーを受け入れ始めたラムジー、ドムに代わってリーダーを務めるホブス、そして絆と記憶を取り戻したレティ(演:ミシェル・ロドリゲス)がミッションに挑みます。デッカードの協力に加えて新たにメンバー入りするのは、ポール・ウォーカーの長年の親友でありポールを慕っていたというスコット・イーストウッド。

雰囲気としては『SKY MISSION』で初登場したミスター・ノーバディ(演:カート・ラッセル)に近いですが、気になるスコットの役名はリトル・ノーバディとのことで、どうやらミスター・ノーバディの推薦枠のようです。ラムジーの存在と合わせて、熱気に満ちたチームにクールな風通しを与えてくれそうな印象があります。

そんなチーム・ホブスの初ミッションは、“ドムを止めること”。新たな宿敵サイファー(演:シャーリーズ・セロン)に引き寄せられるように悪の道へと進んでしまうドム。彼がどのような理由でサイファーに手を貸すことになるのかという点で物語は進むようですが、この点は1作目に通ずるブライアンの葛藤が思い出されます。アウトサイダーであり、常に自分の道を走ってきたドムは、ブライアンやホブスにとってのかつての宿敵でした。“ドムはいったい何者なのか”という疑問を、我々は再び抱くことになるのかもしれません。

しかし予告編の雰囲気とはまた異なる形で、シリーズはファミリーの絆をより強くしていくことを宣言しています。

“どこにでも行ける道”、“無限の可能性”、“試されるファミリーの絆”などの印象的な言葉と共に、『ICE BREAK』を機にシリーズがこれまでとは異なる形で加速をしていくことが示唆されていますが、やはり今後もシリーズを支えていく原動力となるのは、キャラクターたちの繋がりのようです。

映画『ワイルドスピード ICE BREAK』は2017年4月28日公開。

(C)Universal Pictures

Writer