映画『怒り』レビュー 鑑賞後は打ちひしがれて何もできなくなる程に骨太な作品

『怒り』レビュー

2010年に公開された「悪人」の吉田修一×李相日のタッグが、豪華な出演者達と共に再び。
東京・八王子で起きた残忍な夫婦殺人事件から一年
犯人は顔を整形し、今も警察から逃げ果せている。
千葉 東京 沖縄、時を同じくして 犯人と顔の似た素性の知れない3人の男が現れる。
それぞれの男と関わっていく登場人物達の心模様を、各々が胸に抱えたその想い 怒り その先にあるモノを描いた作品だ。

なんて骨太な作品なのだろう。
千葉 東京 沖縄の3つに分けられて描かれるストーリー。
その一つ一つが独立した一本の作品に成り得るだけの力を 魅力を秘めていた。

142分の上映時間などあっという間の出来事であった。

冒頭、観客は凄惨な殺害現場を目撃する。
見たが最後、もうそこからは逃れられない。

その後描かれる人間模様に心安らぐことがあったとしても、すべては冒頭の殺害現場に 凶悪な殺人犯の存在に結び付いてしまう。

3人の内の誰かが犯人なのだと
3人の内の誰かがウソをついているのだと
3人の内の誰かが人を殺した男なのだと

疑いの眼差しを常に向けてしまう。

そんな卑しくもある自分の心に 綺麗事など描かれたりはしないリアルな劇中世界に囚われる。

終始胸を締め付けられるような感覚に陥るのだが、原因はこれらだけではなかった。

誰であれ、他人に知られたくないことの一つや二つ 胸に抱えながら生きていると思う。

人に知られでもしたら、恥ずかしくて 情けなくて 死んでしまいたくなるようなことだってあると思う。

偉そうに言えたことではないが、ぼくにはある。
いくつかのレビューであたかも曝け出したかのようなフリをする時があるが、本当に明かせない部分は一度たりとも出しちゃいない。
そんな勇気も覚悟も持ち合わせちゃいない。

抱えたその想いは、不用意に他人に触れて欲しくなどない
放って置いて欲しい 一切関与しないで欲しい。

犯人にとってそれは「人を殺した」という事実であり、他の登場人物達も皆 それぞれ胸に何かしらの想いを隠し持っていた。

胸が締め付けられ しんどくて 苦しくて ツラくて 涙まで流れてきてしまうのは、あなたもぼくも 容易に他人に明かすことのできない領域を胸に隠し持っているという自覚があるからだ。

否応無しにドンドン引っぺがされていく登場人物達の心

その姿に、自分の隠し持った想いがリンクしてしまうのだと思う。

一度抱えてしまったその想い 負の感情
それを解き放つことなどできるのだろうか
他人に打ち明けることなどできるのだろうか
誰かのその想いを受け止めることなどできるのだろうか

作品を観て終わりというわけにはいかなかった。

己自身はどうするのかと
今も隠し続けているそれを、向き合うことから逃げ続けているそれを一体どうするのかと

胸に宿したその想いを一生隠し通すことも可能かもしれない。

だが、それでいいのだろうか

一度芽生えてしまったその想い
それは正攻法でしか打ち消せない 打ち勝てないのだと思う。

時の流れなどによって薄れることもありえるのかもしれないが、根本を解決しない限り消えたりなどしない。
何よりも 自分自身がそのことを一番心得ているはずだ。

誰にもバレることなく、一生ソイツを胸に抱えたまま心中できること
その想いを打ち明けられる場に 相手に巡り会えること

どちらが幸せなのか

どうか後者であって欲しい。
打ち明けた結果ダメになったとしても 他人に打ち明けられた結果自らが拒否してしまったとしても
いつかは互いに受け入れ合える相手に巡り会えるのだと信じたい。

鬱屈としたこの想いから解放されたい
いや、されずとも構わない

それを共に受け入れて生きていける人が隣にいてくれるのなら。

ぼく個人の感じ方かもしれませんが、一人で その後の予定が何もない一日の終わりなんかに観に行くことをオススメします。

相手にもよるが、観終えた直後に陽気に感想など話し合いたくもない。
打ちひしがれた自らの心を取り繕って人と接する余裕などない。
そんな状態で別の何かに着手するなど困難だ。

とても良い作品です。
ぜひ劇場でご覧になってください。
きっとあなたの心にも響くと思います。

映画『怒り』は9/17公開。

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About the author

映画アドバイザー 元俳優 ライター 映画イベントMC。Instagramを中心に最新映画から懐かしの映画まで幅広く紹介。「ファイトクラブ」 「GO」「男はつらいよ」がバイブル。好きな監督はウディ・アレン。お仕事のご依頼はa.safety.pin.storm@gmail.comまでお願い致します。

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Comments

  • 匿名 2016年10月24日 at 2:14 PM

    うっすい感想

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