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【インタビュー】『イン・ザ・ハイツ』メリッサ・バレラ、初のハリウッド映画で大役に挑戦 ─ 「とても重要で、とても普遍的な物語」

イン・ザ・ハイツ
© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

『ハミルトン』リン=マニュエル・ミランダによる傑作ブロードウェイ・ミュージカルの映画版『イン・ザ・ハイツ』が、2021年7月30日(金)より全国公開となる。THE RIVERでは、主要キャストであるアンソニー・ラモス、コーリー・ホーキンズ、メリッサ・バレラのほか、ジョン・M・チュウ監督への取材を実施し、貴重なコメントの数々を入手した。

今回は、ヒロインのヴァネッサ役を演じたメリッサ・バレラのインタビューをお届けする。メキシコの映画・ドラマで10年近くキャリアを積んできた彼女は、初のハリウッド映画となった本作で大役に抜擢。人気ホラーシリーズ『スクリーム』の次回作にも起用され、今後さらなる活躍が見込まれている。

「ずっと夢見てきたことが、ついに現実になると思った」

──『イン・ザ・ハイツ』出演が決まった時の感想はいかがでしたか?

私の人生でいちばん幸せで、いちばん満たされた思いでした。あの時のことはよく覚えています。リンからFaceTimeで連絡があったんですよ。最初、私のことを詳しく知りたいから、誰かから電話がかかって来る、という風に聞いていて。キャスティング・ディレクターのバーニー・テルシーがかけて来るんだろうと思っていたんです。だけど電話に出たら、リンの顔が見えて。彼はプエルトリコにいて、自分の楽屋でハミルトンの格好をしていました。私が驚いていたからだと思いますけど、リンは笑ってましたね。だけど、私は何が起きているのかさっぱり分からなくて。

リンに「どういうことですか?」って聞いたら、「誰からの電話だと思ったの?」って聞き返されたんです。「バーニーから電話が来て、私のことを聞きたいって言われていて」と話したら、リンは笑って「いやいや、バーニーがビジネスの電話をして、僕が良い電話をするんですよ。『イン・ザ・ハイツ』のヴァネッサを演じてください」と。その時は身体から力が抜けて、涙が出てきて、自分をコントロールできなかったですね。「私を信じてくれてありがとう」って、「全力を尽くします、本当に幸せです」って、とにかくお礼を言いました。リンは「なんで泣いてるの?」って笑っていたけど、私の方は「なんでかわかんないですけど、とにかくうれしくて」と。

それから、リンは「(舞台の)本番があるから」って電話を切ったんですが、私はソファに座って、じっと考えていました。その時の感覚を永遠に覚えておきたかったんです。10年間がんばって、ずっと夢見てきたことが、ついに見えてきたという気がしたし、それが現実になりつつあると思いました。その後、母や夫に電話をして、また泣いて。バーニーからお祝いの電話もあったし、アンソニー(・ラモス)やジョン(・M・チュウ監督)からもメールをもらって、最高の一日でしたね。これからも永遠に大切な一日です。

イン・ザ・ハイツ
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「とても重要で、とても普遍的な物語」

──あなたが演じるヴァネッサの魅力を教えてください。

私は、ヴァネッサは普通の女の子だと思います。憧れがあるし、夢があるし、欲しいものがある、普通の女の子なんじゃないかって。だけど彼女は、自分自身の夢を叶えるには、必ずしも普通ではないような家族やコミュニティに生まれてきた。普通は大きな夢を持っていても、どこかで現実に戻って、「これが私の現実。これを大切にしなきゃ」って思うことが多いですよね。夢を叶えられるか、それとも「あの時の私は現実的じゃなかった」って思うか、そのどちらか。ヴァネッサは、その中間で身動きが取れなくなっています。

ヴァネッサにはファッション・デザイナーになるという夢があり、才能もあり、きっとやりたいことは実現できる。だけど、現実は厳しくて、彼女は自分を疑うことになります。「私の夢は現実的なのか、それとも諦めるべきなのか」って。だからこそ彼女の物語はとても重要で、とても普遍的だと思います。夢を持っていても、心の中では「そんなことできっこない」とか、「家族の誰にもできないことが、どうして自分に出来ると思うの?」とかって声が聞こえるものだから。

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──撮影中、一番苦労したエピソードを教えてください。

クラブのシーンが一番大変なチャレンジでした。たくさん踊らなければいけなかったし、振り付けも難しくて。パートナーとサルサを踊るんですが、何人もパートナーがいましたしね。ヴァネッサという役は、クラブにいる男性たちが、みんな彼女と踊りたいと思うような役。7分くらいの曲で、きちんと踊れるようになるために8週間練習しました。複雑なダンスで、スピードもすごく速いんですよ。

もう出来ないんじゃないかと思ったこともあったし、フラストレーションも感じて、申し訳なく思いました。だけど、私が踊れないからって振り付けを簡単にしてもらうようなことはしたくなかったし、踊れないから代役を立てるのも嫌だったんです。不安な気持ちを乗り越えなければいけなくて、コレオグラファーのチームには本当に支えてもらいました。あのシーンを担当したエディ・トレス・Jrには本当に面倒を見てもらったし、自信をつけてもらいました。絶対に諦めずにいてもらえたことを本当にうれしく思います。あのシーンは私の誇りですね。

イン・ザ・ハイツ
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リンは「音楽ですべてを考えてくれる」

──あなたにとって、リン=マニュエル・ミランダの楽曲の魅力とは?

リンは音楽の天才だと思います。心に伝わる良い歌詞を書くだけではなく、メロディも素晴らしい。ビートや休符、抑揚、フレージング……すべては、彼が求めるエモーションのために意図して書かれているんですよ。レコーディングの時、そのことをスタジオでたくさん学びました。私はこのミュージカルのファンだから、リンの歌は長い間歌ってきたけれど、スタジオでアレックス・ラカモア(音楽総指揮)に「ちょっとビートに遅れてるよ、もっと走り抜けて」って言われたんです。「それがヴァネッサの目的だから。彼女はクールで、気取っていて、先に進んでいる。だから(ビートに)遅れるのは筋が通らない」って。リンはそういう考え方が、役者として、パフォーマーとしての仕事を楽にしてくれるんです。なぜならリンは、すべての仕事を私たちのためにやってくれているから。リンは音楽の中ですべてを考えてくれていると思いますね。

──あなたがお薦めする『イン・ザ・ハイツ』の見どころ、聴きどころは?

あまりに美しい場面がたくさんあるので、選ぶのは難しいですね。だけど、『Carnaval Del Barrio(カーニバル・デル・バリオ)』は特別なシーンだと思います。ある大きな出来事があり、みんなが落ち込んで、力を失い、行き詰まりを感じている時に、ダフネ・ルービン=ヴェガが演じるダニエラというキャラクターが出てきて、「カモン、ピープル!」って。「落ち込んでなんかいられない、私たちのコミュニティはこういうものじゃない、私たちはこういう人たちじゃない。歌って踊って、人生を、自分たちを祝福しないと」って言うんです。

それがカタルシスを生むようなダンスになって、ラテンアメリカの国々を讃えるものになっていく。旗が振られるし、登場人物もほとんど出てきます。舞台を観た時にも、うれしくて泣いてしまった場面でしたが、実際に撮影した時も、その瞬間を生きているって感じがしたし、本当に自分たちを祝福しているんだと思えて、素晴らしかったですね。

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──ハリウッドのスタジオ映画に出演されるのは今回が初めてですが、撮影はいかがでしたか?

本当に素晴らしかった。まさに大作、という感じでした。ドラマ「Vida」(2018-2020)で大きなセットやクレーンには慣れていましたが、『イン・ザ・ハイツ』はさらに上のレベルでしたね。本当に美しくて、素晴らしくて、浮かれてしまいました。だけど実は、「これはワーナー・ブラザースの映画なんだ」とかってことを、あんまり考えていなかったんです。夫がニューヨークに来た時、「超一流って感じだね」って言われて気づきました。「ほんとにそうだな、信じられない」って。

映画『イン・ザ・ハイツ』は2021年7月30日(金) 全国ロードショー

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Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。