宮崎駿と『インサイド・ヘッド2』ピート・ドクターが対談 ─ 「スタジオジブリではテスト試写を行いますか?」「ないです、映画はお客さん全員が理解することは不可能です」

スタジオジブリの宮崎駿と鈴木敏夫プロデューサー、最新作『リメンバー・ミー』も大ヒット中のピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーのピート・ドクター、『インサイド・ヘッド2』の監督ケルシー・マン、プロデューサーのマーク・ニールセンが対談を実施した。日米アニメのトップが互いの製作哲学を語り合う。
ピクサー・アニメーション・スタジオとスタジオジブリは1980年代頃から親交が厚く、『千と千尋の神隠し』ではピクサーがアメリカ配給版の英語吹替の監修を務めたり、『トイ・ストーリー3』には『となりのトトロ』のトトロがカメオ出演したりするなど深い交流がある。
そんな中、最新作『インサイド・ヘッド2』を引っ提げ来日したピート・ドクターらがスタジオジブリを訪問。手描きアニメーションを追求するスタジオジブリと、最先端技術を駆使し3DCGアニメーションで映画を制作するピクサーのそれぞれの制作現場の裏側や作品に対する想いなど、世界のトップアニメーションクリエイターの両者だからこそできる、アニメーション制作にまつわる熱い議論を交わした。
対談の中で出てきた様々なトピックの一つが「テスト試写」について。ピクサーでは映画が完成する前に何回もテスト試写を繰り返し、様々な人の意見を取り入れて映画を作り上げていくという制作手法を取っている。ピート・ドクターが「スタジオジブリではそういう事を行いますか?」と聞くと、宮﨑駿は「ないです。映画はお客さん全員が理解することは不可能です。責任を取るのは自分たちですから、そこにたまたまいた人に責任を預けるわけにはいきません」と持論を展開。
するとピート・ドクターは「僕らのやり方だとテスト試写は役に立つんです。製作途中なのでこの部分は全然響いてない、感情を感じたいのに感じられてないということを見極められるので、調整することができるんです。確かに僕も意見を聞いている時は右から左に流すこともしますが、試写では一緒に観るんです。そうすると飽きている時や画面に観入っている時を肌で感じられるので、そのリアクションは本心だと思っています。それを観ながらなるべく多くの方に響くように調整するのが僕らの責任だと考えています」とそれぞれのアニメーション映画制作にかける信念や違いについて議論を交わした。
本作を鑑賞した鈴木敏夫は、「思春期を迎えたライリー、その頭の中はどうなっているのか?75歳のおじいちゃんには勉強になりました」とコメントを寄せている。
世界に誇る作品を生み出すそれぞれの制作の裏側を語り合ったラジオ番組「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」では、さらにディープで白熱した濃い話を語りつくしている。「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」は2024年8月4日・11日(日) 23:00-23:30の2週に渡って放送予定。TOKYO FMをはじめとするJFN全国38局ネットで放送。終了後ポッドキャスト配信あり。映画『インサイド・ヘッド2』は大ヒット公開中。
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