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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』監督、コミック映画化の方程式とは?「大切なのは観客と繋がること」

Photo by Chris Jackson https://www.flickr.com/photos/cmjcool/8633318298/

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、かの名作コミック『インフィニティ・ガントレット』(小学館集英社プロダクション刊)を原案とする作品だ。史上最凶のヴィラン・サノスや、恐るべき力を持つ6つのインフィニティ・ストーン、サノスの使っているインフィニティ・ガントレットといった要素はすべて同作を基にしたものである。
ところが以前、ハルク役のマーク・ラファロとブラックパンサー役のチャドウィック・ボーズマンは、本作がコミックから独立した物語であることを明かしていた。あまりに内容が違うため、二人は撮影現場で戸惑ったようですらある……。

思えばアンソニー&ジョー・ルッソ監督は、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)や『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)でも、原案コミックから驚くべき跳躍を見せるストーリーによってファンの度肝を抜いてきた。なぜ二人は、コミックのストーリーを大胆に変更するのだろうか。ルッソ監督が考える、コミックをベースとした映画作りの方程式とは?

コミックを出発点に、世界を変換する

2017年夏に行われたインタビューで、ジョー監督は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』について「確かに、『インフィニティ・ガントレット』は映画の出発点でした」と述べている。注目すべきは、「出発点」であるとハッキリ明言されていることだろう。

ジョー: (『インフィニティ・ガントレット』は)素晴らしいコミックで、(作品の)裏側にあるものも非常に大きい。僕らが映画で扱っているスケールに取り組むきっかけになりましたね。アンソニーと僕は最近のコミックも大好きなので、『インフィニティ』から新しめの要素も使わせてもらっています。気に入った要素をすべてかき集めて、僕たちが描きたいストーリーに役立つ要素を検討しました。

たとえば映画に登場するサノスの手下4人は、『インフィニティ・ガントレット』ではなく、ジョナサン・ヒックマン原作のコミック『インフィニティ』(ヴィレッジブックス刊)に「ブラック・オーダー」として登場したキャラクターだ。このように本作では、コミックの要素がブレンドされながら脚本に落とし込まれていったのである。

こうした作業の背景について、ジョー監督は印The Telegraph India誌にてマーベル・シネマティック・ユニバースはコミックとは別物」と述べ、「共感する要素をコミックから持ってくるのは楽しいですよ。でも、単に解釈したいだけなら本を読みますね」と語っている。

ジョー: 10年前、マーベルは(コミックから)離れた物語によって映画の企画に着手しています。ですから僕たちは、『ウィンター・ソルジャー』や『シビル・ウォー』で始まった物語を、『インフィニティ・ウォー』やその次回作へと発展させたかった。必ずしも『インフィニティ・ガントレット』をそのまま扱ってはいませんが、あの作品の素晴らしいアイデアは、映画の大部分で使わせていただきました。この映画の背景に『インフィニティ・ガントレット』があるんです。

大切なのは「観客と繋がること」

ジョー監督によれば、コミックを映画へと変換する上で大切なことは「観客と繋がれる部分を見つけること。観客が見てきたものを踏まえて、エモーショナルな繋がりを持つこと」だという。そこではファンへの配慮ではなく、むしろ自分たち自身の作家性を第一に考えているようだ。

ジョー: ファンサービスをやるにしても、それぞれのファンが求めるものはみんな違うんです。ファン全員に喜んでもらうことはできません。僕たちは(マーベルの)ファンで、コミックを読みながら成長して、(今では)映画を作るのが大好き。だから僕らの使命は、自分たちが喜ぶもの、幸せになれるもの、興奮するものを作って、みなさんと共有することだと思っています。僕たちと同じように、皆さんが楽しんでくれることをずっと祈っていますよ。

そうした指針を強固なものにしたのは、『ウィンター・ソルジャー』や『シビル・ウォー』に対する観客や批評家からの高評価だったという。アンソニー監督は、『ウィンター・ソルジャー』製作当時の不安を振り返っている。

アンソニー: 正直、『ウィンター・ソルジャー』がどうなるのか分からなくて。なぜあの映画を作りたいのか、キャラクターのどこが好きなのか、あの映画で何をしたかったのかは理解していましたが、世界中のみなさんからどんな反応があるのかが分からなかった。あの映画を受け入れてもらえたことで、自分たちの直感や情熱に従うべきなんだという確証を得られましたね。うまくいけば、観客の皆さんにも届くものなんだと

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に続く『アベンジャーズ/エンドゲーム(邦題未定、原題:Avengers: Endgame)』で、ルッソ監督は「『ウィンター・ソルジャー』から始まった、ストーリーテラーとしての僕たち自身の冒険を終える」述べている。4作品に通底するテーマを、二人はいよいよ完結へ向かわせようとしているのだ。
二人がコミックのどんな部分から刺激を受けたのか、そしてどのように映画へと変換したのか、二人がマーベル・シネマティック・ユニバースに託したテーマとは何なのか……。あらゆる方面から掘り下げて、じっくり噛み締めていくことにしよう。

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は2018年4月27日より全国ロードショー

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』公式サイト:http://cpn.disney.co.jp/avengers-iw/

Sources: Comicbook.com, Telegraph India
Eyecatch Image: Photo by Chris Jackson

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。