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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』ラストのCGがシンプルに作られた理由 ― 「最初は普通じゃダメだと思っていた」

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』サノス
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータイメージ

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)は、冒頭から結末までサプライズが…「サプライズ」といえば聞こえがいいほどの“衝撃”が詰まった映画だった。その舞台裏には、そんなストーリーを見事に具現化してみせた作り手たちが、驚くべき映像をスクリーンに映してみせたVFXスタッフがいる。

本作でVFXスーパーバイザーを務めたダン・デリーウ氏は、米ScreenRantのインタビューにて、映画のラストに用意された、とある大規模なCG表現の制作秘話を明かしている。制作当初、VFXチームはもっと複雑な表現をもって物語の結末を飾ろうとしていたというのだ。

注意

この記事には、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の重大なネタバレが含まれています。

アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
© 2018 MARVEL

ヒーローたちの消滅、あえてシンプルに作られた理由

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のクライマックスにおいて、サノスは6つのインフィニティ・ストーンを手中に収め、指を鳴らすことで全宇宙の生命を半減させることに成功する。ドクター・ストレンジやスパイダーマン、ブラックパンサーをはじめとしたおなじみのヒーローたちも、次々と塵のように消滅してしまうのだ。その様子はあまりにもあっさりとしていて、それゆえに残酷だ。

ダン・デリーウ氏は、“登場人物が次々に消滅する”という結末を知った際、「ただの指パッチンじゃダメだ、単なる消滅じゃダメだ」と考えていたという。その背景には、劇中でサノスが扱っているインフィニティ・ストーンを、それぞれ特徴的な視覚効果で見せるという工夫があった。

「サノスがインフィニティ・ストーンを使う場面にはすごく気を遣いました。(インフィニティ・)ストーンの能力がわかるエフェクトと色を使ったんです。ですから、消滅について考え始めた時点ではそのロジックを持ち込んでいました。つまり、人々が消えていく時には6つのストーン(の能力)が合わさっているわけで……どうやってストーン(の能力)が結びつくんだろうかと。ソウル・ストーンが働けば魂が崩壊するのか? パワー・ストーンが働けば身体が分解されてしまうのか? そしてスペース・ストーンが、その塵を実際に動かすということなのか?」

そこでVFXチームが最初に取り組んだのは、そうしたインフィニティ・ストーンの各要素をすべて融合させるという手段だった。しかしダン氏はその結果について、「ある意味で美しかったんですが、やり過ぎでした」と振り返っている。「たとえばソウル・ストーンのエフェクトが強すぎると、消滅する時に燃えているように見えてしまうんです。」

ところで先日、ダン氏は別のインタビューにおいて、全生命の半分を消滅させたストーンの原動力はパワー・ストーンだったのだと明かしていた。“生命を消滅させる”という出来事において、パワー・ストーンが最もシンプルだったからだという。卵が先か鶏が先か、その映像表現も必然的にシンプルな手法が採られることになった。

「インフィニティ・ガントレットの働きを視覚的に作り込みすぎるのではなく、細かな努力をしました。どんな速さで身体が塵に変わるのか、どんなふうに身体が消えるのか、(身体が)分解される際に(塵は)どう流れるのか。そのことによって、彼らが塵に変わる場面では、全員に特徴的な見せ方を作ることができました。ある人物はすぐに消えてしまい、またある人物は時間が長くかかる。よりインパクトを与えるため、叙情的な、詩的といっていい見せ方で人物を塵に変えられたんです。」

この効果は、まさしくキャラクターのエモーショナルなドラマを引き立てるうえで大きな役割を果たしていただろう。たとえばピーター・パーカー/スパイダーマンの場合、スパイダーセンスで異変を予知していたという設定もあいまって、とりわけ時間をかけて消滅までの経緯が――トニー・スタークとの最後のやり取りが――描かれている。かたやティ・チャラ/ブラックパンサーの場合、オコエに手を差し伸べながら、あまりにも素早く姿を消してしまった。

観客の度肝を抜いた衝撃的な幕切れは、かくも細やかなこだわりから生まれたCG表現によって支えられている。ブルーレイやDVDなどで本作を楽しむ際には、ぜひ隅々までその描写の粋を味わってほしい。

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』MovieNEXは2018年9月5日発売。

Source: SR
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータイメージ

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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