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【ネタバレ】『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』ヒーローのチームアップ、それぞれの背景と意図を脚本家が語る

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
© 2018 MARVEL

「本作の見どころは豪華スターが演じるヒーローのタッグ、チームアップである」
映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の内容が語られる上で、これまでに何度このような言葉が使われたのだろうか。しかし映画の公開以前はもちろんのこと、いざ本編を観てもなお「見どころはヒーローのチームアップ」だと言い切れるほど、本作には魅力的なキャラクターのコラボレーションが詰まっている。

マーベル・シネマティック・ユニバースの10年間、その魅力をひとまずぎゅっと凝縮した『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の仕掛け人たちは、こうしたクロスオーバーをいかにして企み、また仕掛けていったのか? 脚本家のクリストファー・マルクス&スティーブン・マクフィーリーは、各キャラクターの組み合わせについて、その経緯や意図を明かしている。

注意

この記事には、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のネタバレが含まれています。すでに作品を鑑賞された方向けの内容となりますのでご注意下さい。なお、このページをSNSにてシェア頂く際は、記事内容に触れないようお願い致します。

アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
© 2018 MARVEL

アイアンマン/ドクター・ストレンジ/スター・ロード/スパイダーマン

豊富なチームアップが見られる『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』において、最も豊かで、最も意外性が強いのがこの四者のコラボレーションだろう。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)や『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)で描かれたトニー・スターク/アイアンマンとスパイダーマンの師弟関係に、ドクター・ストレンジや、スター・ロードをはじめとしたガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバーも関わってくるのだ。なかでもロバート・ダウニー・Jr.とベネディクト・カンバーバッチが見せる、スターク&ストレンジの関係性はとりわけ繊細である。

マクフィーリー: ストレンジとスタークは、二人ともビジョンがあってエゴも強いという点で、このユニバースの同じ場所に存在しています。彼らは一番賢い人物ですが、そんな男たちを同じ場所に放り込めば何が起こるんでしょうね?

マルクス: 今、トニーは『アイアンマン』(2008)の頃にはなかった重圧を背負っています。『アベンジャーズ』(2012)でポータルを通り、エイリアンを見たわけです。地球上で唯一、なにか恐ろしいことが起こると直感しているんですよ。

マクフィーリー: (それに対して)ストレンジはより広く、より成熟した視点で物事を捉えられる。トニーには少しPTSDのようなところがありますね。“僕は見てしまった、なんとかしようと全力を尽くした、でも事態は起こってしまったんだ”という。

マルクス: トニーは事態を解決する責任を感じています。でもストレンジの方は、そんな方法がないことを悟っているのかもしれません

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
© Marvel Studios 2018

そんな両者の間に入って、事態を思わぬ方向へ展開させたり、観客を和ませたりする役割を担っているのが、スター・ロードとスパイダーマンだ。

マクフィーリー: ストレンジやスタークと同じように、スター・ロードも自分が一番賢いと思ってますよ。…ただ、彼は賢くない(笑)。

マルクス: 二人の男(スターク&ストレンジ)は互いに衝突しますけど、ある時、もう一人の男(スター・ロード)も大きな問題を抱えているんだと理解するんですよね。

マクフィーリー: ピーターの方は、とにかくどこへ行くのも楽しい。いろんなことに目を丸くしていて、まだ子どもなんです。過去2作品で描かれたトニーとピーターの関係性も大事にしたいと思いました。

ソー/ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバーは、劇中でソーと出会い、ロケットとグルートはソーとともに旅をすることになる。本作の脚本家コンビにとって、彼らを描くのは今回が初めてのこと。「全員のキャラクターを、それぞれの監督ほど理解することはできません」と述べられているように、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのジェームズ・ガン監督は二人の脚本を監修し、そこに自身のアイデアを盛り込んでいったのである。

マクフィーリー: たくさん草稿を書いて、ガーディアンズの出てくるシーンは(ガン監督に)読んでもらい、提案を受けました。

マルクス: (ガン監督は)最低ひとつは笑えるせりふを入れてくれますね。最初の歌も彼の提案ですし。

ちなみに劇中のスター・ロードがガモーラを撃つ展開について、ガン監督とスター・ロード役のクリス・プラットは、当初の脚本に書かれていた「ガモーラを撃たない」という内容に意見していたという。マクフィーリーによれば、ガン監督は「スター・ロードなら撃っている」と強いこだわりを見せ、これにプラットも同意したことで内容に変更が施されたのだという。

ちなみに脚本作業の初期段階で、ロケットは完成版ほど目立たない、辛辣な言葉遣いを強調した「お決まりの使い方」になる予定だったそう。しかし最終的に、その特徴こそがソーとのチームアップに繋がったとか……。

マルクス: ソーはものすごく強いので、その隣にロケットを置いておくのは面白いと思いました。ロケットがソーをばっちり手助けすることはできなさそうですが、それが予想外の新しい要素をロケットにもたらしてくれるだろうと。

もちろん本編をご覧いただければ一目瞭然だが、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)のコミカル路線を活かして、二人はソーのキャラクター造形にも執筆段階で変更を加えたという。

マクフィーリー: 早いうちにいくつかのシーンを書き直しています。(クリス・)ヘムズワースが『マイティ・ソー バトルロイヤル』を撮り終えて心配してたんですよ。“聞いてください、オーストラリアでヤバいことをやってきたんで”って。

サノス/ガモーラ

このように本作でも持ち前のユーモアを存分に発揮するガーディアンズ・オブ・ギャラクシーだが、その中でかつてないほどシリアスな展開を迎えるのがヴィランであるサノスの娘ガモーラだ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)以来となる親子関係は、劇中で思わぬ方向へ進展していくことになる。

マルクス: (サノスとガモーラには)描きたかった過去がたくさんありました。(サノスと同じく)ガモーラもヴィランであって、彼女は恐ろしい行為に長い時間を費やしてきたわけですから。

マクフィーリー: とにかく最強の力を手に入れて世界を征服し王座に座りたい、そんな屈折した男としてサノスを描きたくなかった。少なくとも二人の娘がいて、なんらかの理由で子どもを育てたのだというところから、彼を魅力的にしたかったし、これまでのヴィランにない重層性を持たせたかったんです。

マルクス: それに重要なのは、一番愉快なチームであるガーディアンズがサノスの最も近くにいるということ。「父親を殺したい」という思いが強い以上、もう愉快ではいられません。彼らにも超えなくてはならないハードルが与えられるんです。

スカーレット・ウィッチ/ヴィジョン

サノスとガモーラの親子が愛情をめぐる“試練”に巻き込まれていく中、地球ではワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチとヴィジョンが、同じく愛情をめぐる葛藤をそれぞれに抱えることとなる。すべてのきっかけは、スカーレット・ウィッチに能力をもたらし、そして今ではヴィジョンの額に埋め込まれているマインド・ストーン。サノスは自らの望みを叶えるため、マインド・ストーンを手に入れなければならないのだ。

マクフィーリー: 『シビル・ウォー』の翌日から物語を始めたくなくて、(劇中で)約2年の時間を空けることにしました。だから二人の関係が築かれ、成長してきたことを(直接描くのではなく)示唆しているんです。彼の頭にはマクガフィン(編注:人物や物語にとって重要な役割を持つもの)が埋まっていて、それが問題になっていくわけですが……。

マルクス: 組み合わせという点でいえば、ヴィジョンはロボットでスカーレット・ウィッチは魔女なので、(関係性を)「うまく描けるだろうか?」と思いました。しかしスカーレット・ウィッチは人々から厳しく疎まれていて、ロボットと友人になることには純粋な人間よりもオープンなんですよ

最凶のヴィランであるサノスとヒーローたちが激突するという筋立ての中にあって、脚本家の二人は、ヴィジョンとスカーレット・ウィッチの物語を「あらゆる人間の感情を経験する」ものにしたいと考えていたという。小さく、個人的なストーリーを巨大なプロットの中で活かすことが大きな課題だったそうだ。

キャプテン・アメリカ/ブラック・ウィドウ/ファルコン/ハルク

前述の通り、『シビル・ウォー』から『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』には約2年という時間が流れている。しかしスティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカやナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ、サム・ウィルソン/ファルコンの「空白の時間」が本編で言及されることはまったくない(前日譚コミックには詳細に描かれている)。彼らの物語は、本作のストーリーを描くために泣く泣く削除されたというのだ。

マルクス: まだ何も決まっていなかった頃、(この映画で)描けることをシーンとしてすべて書き出していきました。しかし、そうすると18時間の映画になってしまって。そこでサノスとインフィニティ・ストーンの物語に絞ることにしたんです。

マクフィーリー: 逃亡中のスティーブやナターシャ、サムを描く5時間の映画は作りたい、でもそれはできません。ただし、すべては『シビル・ウォー』の結果ですし、あの作品は重要ですから、なかったことにもならない。そこでキャプテン・アメリカは髭を生やし、ブラック・ウィドウはブロンドヘアになった。逃亡生活の影響を作ったんです。

スカーレット・ウィッチとヴィジョンの関係性を含めて、本作で「空白の時間」はあくまで示唆する程度にとどめられている。その詳細が、来たる『アベンジャーズ/エンドゲーム(邦題未定、原題:Avengers: Endgame)』で語られるかどうかは不明だ。

ちなみに『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)で描かれたブラック・ウィドウとブルース・バナー/ハルクの関係性についても、本作ではわずかに匂わされるだけとなった。これもサノスとインフィニティ・ストーンの物語に集中するための、脚本家チームにとっては苦渋の判断だったという。

マルクス: (ハルクとブラック・ウィドウの)シーンをいろいろ執筆したんですが、「今やることじゃない」と思いました。きちんと追いかけたいものはたくさんありましたが、現実問題、サノスが来るという状況下でそういう問題には誰も取り合わないでしょう。誰と誰が寝たのか、寝てないのか、なんてことよりもはるかに差し迫った問題があるわけですから。

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は2018年4月27日より全国の映画館にて公開中

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』公式サイト:http://cpn.disney.co.jp/avengers-iw/

Source: Vulture

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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