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『ブラック・ウィドウ』スカーレット・ヨハンソンの訴訟問題、ディズニーの反論に業界が抗議 ─ 複数の俳優が法的措置検討か、マーベル社長の意思は

スカーレット・ヨハンソン
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/48471753011/ Remixed by THE RIVER

マーベル・シネマティック・ユニバース作品『ブラック・ウィドウ』(2021)の劇場・配信の同時展開は契約違反であるとして、主演・製作のスカーレット・ヨハンソンが米ウォルト・ディズニー・カンパニーを提訴したことについて、業界からの反応が相次いでいる。ディズニーの反論に対し、エージェントや業界団体による批判の声明文も公開された。

2021年7月29日(米国時間)、ヨハンソンは、『ブラック・ウィドウ』が劇場限定公開という前提でマーベルとの契約を締結したが、「ディズニーがマーベルの契約違反を誘発した」としてディズニーを提訴。ヨハンソンは劇場興行収入に基づいて報酬を受け取る契約だったが、配信の同時展開により推定5,000万ドル以上の損失が発生したと主張している。一方のディズニー側は、この提訴を「世界的なコロナ禍の影響を無情にも無視した」ものと批判。ヨハンソンとの契約は遵守している、Disney+での『ブラック・ウィドウ』配信にあたっては2,000万ドルの追加補償を支払っていると述べた。

ハリウッドの団体からの反応

ディズニーの反論に対し、怒りの声明を発表したのが、ヨハンソンのエージェントであり、ハリウッドの大手エージェンシー・CAA(Creative Artists Agency)の共同会長を務めるブライアン・ロード氏だ。「ヨハンソン氏が世界的なパンデミックに対して無神経だという告発は、恥知らず、かつ誤ったものであり、彼女を実際とは異なる人物に仕立て上げようとしている」と記したのである。また、一方的に報酬額を公開したことは「アーティスト、またビジネスウーマンとしての彼女の成功を、まるで浅ましいことかのように、(自分たちの)攻撃の道具として使用しようとするもの」と指摘した。

ロード氏は、ヨハンソンの提訴は、あくまでもディズニーによる意図的な権利侵害が招いたものだと強調。ディズニーの反論は「ヨハンソンの地位に対する直接的な攻撃であり、彼らの示唆することはすべて、数十年にわたって我々が仕事をともにしてきた企業にふさわしくないものだ」と批判している。

また、ハリウッドで「#MeToo」「Time’s Up」といったセクシャル・ハラスメントへの抗議運動を支援してきた女性団体・Women In Filmも声明を発表。「契約上の権利を守ろうとする行為を、無神経で利己的なものだとする声明には断固として抗議する」と記した。「ビジネス的な対立においても、こうした性差に基づく人格攻撃はあってはならないもの。女性たちが利益を守ろうとすれば人格攻撃を受ける、という環境を作り出すことになる」と記した。

周囲の俳優たち、そしてケヴィン・ファイギの意思は

Varietyは、あるエージェントが「多くの俳優たちはスカーレットを応援している」と証言したことを報じている。「彼女には大きな力があり、この問題に関する議論は可視化されました。こうしたことが公に行われることで、彼女は業界のルールを変えられるかもしれない」。

また、複数の業界関係者によると、ディズニー映画に出演した複数の俳優が法的措置を検討しているとのこと。米The Hollywood Reporterの元記者であるマシュー・ベローニ氏によると、同じく劇場・配信の同時展開となった『クルエラ』(2021)のエマ・ストーンもそのうちの一人だという。ちなみに米Deadlineは、『ジャングル・クルーズ』(2021)のドウェイン・ジョンソンは提訴しない意向だと報じている。

今回の訴訟報道を受け、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのドラックス役を演じているデイヴ・バウティスタは、Twitterに記事を引用しつつ「僕がドラックスの映画を作るべきだと(ディズニーに)言ったら、“ノー!”だって」とコメントし、ディズニーのやり方を間接的に批判した。ヨハンソンとの共演歴もあるアレック・ボールドウィンは「#TeamScarlett」のハッシュタグを投稿。現在、このハッシュタグは世界的に拡散されている。

なお、問題の渦中にありながら、訴訟の直接的な対象にならなかったのが、ディズニーの傘下に属するマーベル・スタジオだ。契約に違反したのはマーベルだが、ヨハンソンは、この事態を招いたディズニー側に責任があると主張しているわけである。そもそもマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、『ブラック・ウィドウ』の公開時期が決定する前から、劇場公開に強いこだわりを持っていたともいわれる。

前出のマシュー・ベローニ氏は、「(ファイギは)会社員として、組織と激突したり、怒鳴り合ったりはしない人物」だと評しつつも、「彼が怒り、恥を感じていると聞いている」と記した。ファイギ自身は以前から劇場・配信の同時展開に反対し、劇場限定公開を求めていたが、最終的には折れたとされる。しかし、ファンの反応や映画の興収成績、そしてヨハンソンの提訴を受けて、現在は「ディズニーはヨハンソンとの信頼関係を回復すべき」との考えだという。

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Source: Deadline(1, 2, 3), Variety, Comicbook.com, ScreenRant

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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