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『ジョーカー』米国興収予測が発表、狂気の犯罪王子は『ヴェノム』を喰うか ─ 真っ向対決、9,000万ドル超え狙う

ジョーカー
TM & © DC. Joker © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

第76回ベネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞した、DCコミックスの人気ヴィラン誕生を描く『ジョーカー』の公開が近づいている。2019年9月12日(現地時間)、米国では本作の興行予測が発表された。狂気の犯罪王子ことジョーカーがライバルとして狙うのは、2018年の秋に大ヒットしたマーベルのダークヒーロー映画『ヴェノム』。最狂vs最凶、戦いの火ぶたが切って落とされようとしている。

まずは、最も強気な予測を立てている米Deadlineの数字から確かめてみよう。同誌は公開後3日間の米国オープニング興行収入を9,000万ドルと予測、また8,200万ドルとの予想もあると伝えた。いずれにせよ、これは『ヴェノム』の8,020万ドルを上回る大胆な数字である。なにせ『ヴェノム』はPG-13指定だったが、『ジョーカー』はR指定なのだ。ただし2018年には、伝説のホラー映画を甦らせたR指定作品『ハロウィン』が7,620万ドルを記録したばかり。コミック映画という後押しを受け、9,000万ドル超えも狙えるというわけである。

もしも『ジョーカー』が『ヴェノム』の記録を超えた場合、本作は10月公開作品の米国オープニング興収記録を塗り替えることになる。しかし一方で、米VarietyはDeadlineよりも少しだけ抑えめの予測を発表。『ジョーカー』は『ハロウィン』と同じく7,600万ドル以上、8,800万ドル以下に収まるとみている。むろん、R指定作品としては大ヒットが予想されていることに違いはないのだが。

こうした流れの中、もっとも堅実な姿勢を示しているのが、実は本作を製作・配給する米ワーナー・ブラザースだ。一連の予測を「強気すぎる」として、ワーナーは5,000~5,500万ドルとの初動予測を発表。その背景には、『ジョーカー』がいわゆるヒーロー映画ではなく、むしろ『タクシードライバー』(1976)や『キング・オブ・コメディ』(1982)といった人物中心のスリラー映画に近いこと、キャラクターに新解釈が施されているためにコミックファンからソッポを向かれてしまう可能性があることなどが挙げられている。Deadlineでさえ、コミックファンからの反応が鈍かった場合、オープニング興収は6,500~8,000万ドルほどになるかもしれないと記しているのだ。

過去、優れたオープニング記録を示してきたR指定のコミック映画には、『デッドプール』(2016)の1億3,240万ドル、『デッドプール2』(2018)の1億2,550万ドル、『LOGAN/ローガン』(2017)の8,840万ドル、『300〈スリーハンドレッド〉』(2006)の7,090万ドル、そして『ウォッチメン』(2009)の5,520万ドルがある。しかし並べてみれば分かるように、『ジョーカー』はいずれともジャンルが一致しない作品だ。

さらに興味深いのは、『ジョーカー』は第76回ベネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞するほどの高評価を得ている一方、トロント国際映画祭でのプレミア上映後には、熱狂的絶賛と激しい拒絶反応が入り乱れる事態となっていることだ。Varietyによれば、本編の過激な内容が議論を呼ぶ可能性もあり、その点が興行成績に影響を及ぼす可能性もあるという。もっとも、『ジョーカー』は5,500万ドルという低予算で製作されているため、もしオープニング成績が5,000万ドルを突破すれば、広報・配給コストも含めすべてを回収できる見込みだ。

現時点では初期予測ということもあり、実際のところ、『ジョーカー』がどれだけの滑り出しを見せるのかは未知数である。そんな中で確かなのは、本作がすでに“コミック映画史上最大級の問題作”となっていることだ。日本でもファンの間では大きな注目が集まっており、マスコミを対象とする試写では絶賛の声も聞かれるだけに、これから何が起こるかは分からない。そもそも、誰も予想できなかった出来事で人々を戦慄させ、その価値観を揺さぶり、塗り替えてしまうのがジョーカーである。その単独映画として、これ以上のスタートはないのかも…とは、さすがに言いすぎだろうか。

映画『ジョーカー』は2019年10月4日(金)日米同日、全国ロードショー

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Sources: Deadline, Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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