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【考察】『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』予告編、これはアーサーの妄想なのか?

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ
© & TM DC © 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

社会問題的な衝撃をもたらした『ジョーカー』から5年。続編映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の予告編は、虚実が入り乱れた怪奇映像だ。

主人公アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、笑いのある人生は素晴らしいと信じ、都会の片隅でピエロメイクの大道芸人として細々と生きていた孤独で心優しい男。前作で彼は、歪なカリスマ、ジョーカーへと衝撃の変貌を遂げる。

この続編でアーサーは、レディー・ガガ演じるハーリーン・クインゼル(通称ハーレイ・クイン)と出会う。二人は恋に落ち、夢のような時間を過ごすようなのだが、アーサーのことだから、それが現実か妄想かはわからない。この予告編映像について考察してみよう。

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映像の冒頭、アーサーはどこかに収監されている様子だ。これはおそらく精神病棟(アーカム・アライラム?)であり、現実だろう。看守からは「今日も笑わせろよ」と言われており、アーサーは病棟内でコメディアン気取りの変人として嘲笑の的になっていることが示唆されている。

部屋から連れ出されたアーサーは、入院者たちが合唱か何かのレクリエーションを行なっている側を通り過ぎる。そこでアーサーが目を止めた女性こそが、後のハーレイ・クインであるハーリーン・クインゼル(レディー・ガガ)だ。ジョーカーの主なストーリーで、ハーリーンは彼の精神科医として訪問しているうち、ジョーカーに魅了されて闇堕ちするという設定が知られている。一方、本作のハーリーンは、アーサー同様に精神病棟に入院している患者である可能性がある。

続くシーンで、映像は早くも妄想と現実が入れ替わる。雨の屋外通路を連れらていたアーサーだが、職員の傘の色がカラフルなものに変わっているのだ。ここで、前作『ジョーカー』で描かれた大部分でさえ、現実と妄想が釈然としないという前提を思い出そう。前作でアーサーは、憧れていたテレビ番組の生放送に出演し、社会への恨みをぶちまけた後、番組ホストをカメラの前で射殺。パトカーで護送される折、アーサーの行動に触発された共感者たちが暴徒化し、彼は悪のカリスマ”ジョーカー”として崇められる様子が描かれた。しかし、続くラストシーンでアーサーは精神分析を受けており、「ジョークを思いついた」と笑う。結局のところ、映画の出来事のうちどこまでが現実なのかは、説明が避けられているままなのだ。

ジョーカー
TM & © DC. Joker © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

さらに前作では、同じアパートに住む女性ソフィー(ザジー・ビーツ)とデートを重ねる様子も描かれていたが、こちらもアーサーの妄想であったことが明らかになっている。このことから、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』に登場するハーリーンとの関係も、全て彼の想像上の出来事である可能性は否めないだろう。

実際、ハーリーンはアーサーが夢見そうな理想的な女性像として描かれている。「あなたと違って何もしていない」と彼女のセリフが重なるシーンでは、ずぶ濡れになったアーサーが見つめる窓辺に、ハーリーンが一人だけ立っている。行動規則が厳しいであろう精神病棟の中で、ハーリーンのこのような時間が実際に許されるのだろうか。また、ハーリーンは銃で頭を撃つジェスチャーをしているが、これは1作目でソフィーがやっていたのと同じである。もしかするとアーサーが見つめる先には、誰もいないのではないか?

また、病棟施設内と見られる劇場で、ハーリーンはこっそりとアーサーの手を触れようとしたり、「ここから出ましょう」と耳元で囁いたりする。いかにもベタな流れで、恋愛経験に乏しいアーサーが考えそうな、夢の展開である(しかも、勇気を出して自分から仕掛けるのではなく、女性の方から誘ってくれるというのがミソである)。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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