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『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』新恐竜ギガノトサウルスは頭だけで「車と同じ大きさ」とアニマトロニクス製作者【インタビュー】

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
© 2021 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

世界的大ヒットフランチャイズ『ジュラシック・ワールド』シリーズ最新作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』では、名物恐竜T-レックスの大きさをも上回る新恐竜・ギガノトサウルス(通称:ギガ)が遂にお披露目となる。『ジュラシック』シリーズに登場する恐竜の再現には、アニマトロニクス(animatoronics)と呼ばれる、遠隔操作によって動作するロボット人形で動物を再現する技術が大きく貢献しているが、本作『新たなる支配者』では、スタン・ウィンストンやニール・スキャンランといったアニマトロニクス製作における先人のレガシーを引き継ぐ新たな人材が起用された。気鋭スタジオ「John Nolan Studio」を率いるイギリス出身のCFXアーティスト、ジョン・ノーランだ。

アニマトロニクス分野において『ハリー・ポッター』シリーズでアシスタントの経験を積んだノーランは、『タイタンの戦い』(2010)『戦火の馬』(2011)で技術者、『ロビン・フッド』(2010)ではシニアデザイナーを務め、20年以上のキャリアで豊富な大作経験を持つ。そして本作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』では、アニマトロニクス製作を統括するリーダーを担った。

参加の経緯も気になるところだが、前作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018)から一変した物語の状況での恐竜製作という大役に、ノーランはどう挑んだのか。THE RIVERとの単独インタビューに自宅から応じてくれたノーランが制作過程を振り返る。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』ジョン・ノーラン 単独インタビュー

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
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── 本日はどうぞよろしくお願いします。『ジュラシック』シリーズは初参加となりますね。まずは参加の経緯を教えて下さい。

本作の(アソシエイト・)プロデューサーのティム・ウェルスプリングと別の映画でご一緒していて、彼がスタジオやコリン・トレボロウ監督、プロデューサー陣との面会に誘ってくれたんです。そこで恐竜について話しました。コリンは私に「恐竜が好きですか?」と尋ねてきて、そう聞かれるのは初めてだったんですけど、私も「好きです」と答えたら、「ファミリーへようこそ」って。それだけで、仕事が決まりました。その後は14種・計38頭の恐竜のリストを渡されて、ただ驚くばかりでした。

── あなたが率いる製作スタジオは、ロボットや怪獣、未知の動物といった様々なクリーチャーを再現されてきたと思います。特に恐竜を製作するにあたっては、どのような難しさがありましたか?

私たちは動物やクリーチャー、モンスター、人間などを作ってきましたが、恐竜についてはそれまでの映画を参考にしたり、古生物学者と働いたりすることを除いて、参照できる過去の作品がなかったので難しかったです。正直に言えば、当て推量で仕事を進めることもあって、動物園に行ったり、は虫類動物を参考にしたりすることもありました。

複雑な作業ではありましたけど、周りにいる選りすぐりのメンバーのみんなと協力して、何か間違いがあれば指摘し合うといった感じで進めました。(『ジュラシック』シリーズの)6作目に携われてよかったと思うのは、それまでの5作を参照することができたことです。スタン・ウィンストンやニール・スキャンランが手がけた視覚効果で再現されたキャラクターや、アニマトロニクスのおかげでなんとか乗り切れました。

── 『ジュラシック』シリーズ以外に、この映画の製作で参考にした作品はありますか?

正直、特に無いんですよね。映画で培った自分たちの経験のみです。参考にしたのは全て『ジュラシック』シリーズからだけです。より良いものを作ることに注意を払い、会社として、デザイナーとして新しい恐竜に何をもたらすことができるかを意識していました。具体的には、恐竜に瞳孔や舌、喉、呼吸のメカニズムを新しく加えました。

頭だけで「車と同じ大きさ」、ギガノトサウルスの再現について

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
(c) 2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC. All Rights Reserved.

── 前作『炎の王国』では、アニマトロニクスとCGの融合が追求されていました。新たにあなたのチームが参加したことによって、恐竜の再現に進化は期待できますか?

そう願ってます。特にギガノトサウルスについては、「クリーチャー・エフェクト(CFX)」「視覚効果(VFX)」「特殊効果(SFX)」の3つの部門で動いていましたから。あのキャラクターは、最初からCGで再現されることが決まっていたのですが、コリンができるだけ多くのパートをカメラで撮りたいとおっしゃったので、あの恐竜の頭部や首のアニマトロニクス製作を頼まれたんです。頭は車と同じくらいの大きさで、控えめに言ってもすっごく重いロボットでした。皮膚は6インチ(約15センチ)の厚さのフォームラバーで出来ていて、1トン以上の重さでした。すごく大変だったので、会社にとっても『ジュラシック』シリーズにとっても、アニマトロニクスが進化を遂げる良い例になってくれると良いなと思ってます。

オリジナル版で登場するT-レックスのシーンは最高で、あれより良いものは無いです。映画史における最高のアニマトロニクスとして今もあり続けています。そうしたものに近いような作品を作ったり、オリジナル版にオマージュを捧げたりすることができたのも嬉しかったです。観客の皆さんにとっても、十分怖いシーンになっていると良いな。私はそうなると信じていますけど(笑)。

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
(c) 2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC. All Rights Reserved.

── 映画はアメリカで2022年6月に公開されますが、もうすでに本編はご覧になられましたか?(編注:取材は2022年4月に実施)

実はまだなんです。編集版もまだなんですけど、現場では全ての恐竜と一緒にいたので、幾つかのシーンについては断片的に観ることはありました。これまでに観たものは信じられないくらい、とにかくスゴくて、良い仕上がりです。

── ご自身で作られたアニマトロニクスをいざ本編で観たら、どんな気持ちを抱くと思いますか?

視覚効果を担当する人と同じように、私たちはとにかくリアルなものを作ります。なので、もしオリジナル版で(アラン・グラントの博士役の)サム・ニールがトリケラトプスに額をつけて息をしているかどうかを確かめる、あの美しいシーンみたいに、登場人物とアニマトロニクスでできた恐竜が感情を交えるシーンを私たちが再現できたとしたら、すごく満足すると思いますね。あのようなシーンは特別ですから。

── 先程名前が挙がっていたギガノトサウルスについて、コリン・トレボロウ監督はDCコミックスに出てくるヴィランのジョーカー的な存在だとおっしゃっていました。あなたもそれは感じましたか?

ギガは新入りで、ヤバい奴なんです(笑)。T-レックスよりも体格で勝っていて、キャラクターとしても大きな存在感があります。先程も言ったように編集版はまだ確認できていないのですが、モニター越しに俳優たちと一緒に映るギガは観ていて、とにかくとんでもないですよ。すごく良いので、あのショットが完成版でも残されていると良いな。

おそらくコリンは、ケヴィン・ジェンキンス(※)のアートワークを参考にされていたと思います。彼はギガのデザインアートも描いていました。ギガの顔に垂れるようなメイクが施されたときはまるでジョーカーみたいでした。とにかく大きくて、大スクリーンで観るのが待ち遠しいです。

(※)『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』のプロダクション・デザイナー。『スター・ウォーズ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『DUNE/デューン 砂の惑星』などハリウッド大作映画に多数参加。

「最高品質」のアニマトロニクス

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(c) 2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC. All Rights Reserved.

── 本作では、以前と恐竜たちの環境が全く異なりますよね。恐竜たちのジャングルで暮らしていた時から異なる環境 ── 例えば街中や一般の道路など ── で歩き、飛び、生活しているはずです。そういった環境の変化は、アニマトロニクス製作にどんな影響を与えましたか?

それは良い質問ですね。少なからず影響はあったと思います。アニマトロニクスや傀儡(くぐつ)の観点からすると、恐竜の動きにはいろんな種類があると思います。ディロフォサウルスでは、(アニマトロニクスを)コントロールするのに12人がかりで行っていました。そして彼ら(操作する人)も隠れていなければいけない。他にも、大掛かりだったり、具体的だったりするシーンは、操作するのが非常に難しいです。

これ言っても良いのかは分からないですが、本編ではすごくむき出しでだだっ広い場所が舞台のシーンがあるんですけど、そこでは特に操作する人を隠すのが難しかったんです。そこで私たちは、傀儡師に地下から恐竜を操作してもらわなければいけませんでした。オリジナル版でもジャングルに恐竜がいるシーンでは、葉っぱなどで傀儡師を隠していたと思います。物語の環境の違いは、(アニマトロニクスを)動かす方法に大きな影響しましたね。

── 製作の段階で、もしアニマトロニクスが思うような動きをしてくれなかった時は、落ち込んだりもするのでしょうか?

いえ、もっと頑張らなければという気持ちになります。そうしなければいけないんです。逃げ道もないわけですし、現場に実際の恐竜を連れて行くこともできないですから。コリンも恐竜が大好きなので、最高品質の作品を私たちに期待しますし、私たち自身もそうです。思うようにいかない時は、次はそうならないように一生懸命働くのみです。

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
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── アニマトロニクスの製作には、たくさんの方が携わっていると思いますが、最も大変だったプロセスは何でしょうか?

恐竜を作る時って、彫刻やアニマトロニクス、エンジニアリング、ペイント、仕上げなど、本当に色々な部署があるんです。これを統括する立場として、私は全ての部署が円滑に上手く機能するようにしなければいけませんでしたし、それがやはり複雑で難しかったことの1つですね。製作チームもみんながワクワクしながら仕事しているので、コリンに頭と首だけと頼まれた彫刻チームが全身をやってしまうみたいなこともあったりして(笑)。とにかく私は、CG部門やプロダクションデザイン部門と協力しながら、カメラの中で求められることを達成しようと意識しています。

── 最後に、観客をアッと言わせるような恐竜がいたら教えて下さい。

もうそれは、ギガでしょう。ギガノトサウルスでなきゃ。とにかくサイズがとんでもないので。本当にでかいんです。

映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は2022年7月29日(金)全国ロードショー。

Writer

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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