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『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』アラン・グラントの物語は「もうおしまい」、サム・ニール単独インタビュー

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』
© 2021 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

この夏一番の大作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が遂に公開を迎えた。前作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018)から実に4年ぶりとだけあり、とりわけ恐竜ファンにとっては待望の帰還となった。

1993年の『ジュラシック・パーク』シリーズに始まる『ジュラシック』シリーズの集大成とされる本作では、まさしく世界的恐竜ブームを巻き起こしたレジェントたちが揃ってスクリーンに帰ってきた。アラン・グラント役のサム・ニール、エリー・サトラー役のローラ・ダーン、イアン・マルコム役のジェフ・ゴールドブラムの3人だ。

THE RIVERは、なかでも『ジュラシック・パーク』シリーズの顔を務めたサム・ニールと単独インタビューを実施する超貴重な機会に恵まれた。およそ20年ぶりのカムバックに、「随分とすり減った靴をもう一度履くような感覚だ」と話すニールは、長い空白を感じさせない超自然な演技でグラント博士を蘇らせた。

インタビューでは、盟友2人との再会や新世代との共演に加え、『ジュラシック・パーク』での思い出、さらにはシリーズの今後についても訊ねている。ニールはゆっくりと言葉を選びながら、聞き手にとっても感慨深いエピソードを披露してくれた。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』サム・ニール インタビュー

── 本日はどうぞよろしくお願いいたします。

やあ、今日はよろしくね!

── 今はオーストラリアにいらっしゃるとお聞きしました。

そうですよ!

── それでは普段お住まいのニュージーランドから離れているわけですね。

そうなんです。今はシドニーにしばらく滞在していて、(家にある)牧場には戻れていませんね。でも今日は太陽も顔を出していて、秋の美しい日ですよ。そういえば、日本ではちょうど桜が散っちゃった頃かな?(編注:取材は2022年4月に実施)

── ほとんど散ってしまいました。

シーズンが終わってしまったんだね。

── そうなんです。さてさっそくですが、『ジュラシック』シリーズへの復帰は20年ぶりとなります。製作陣からアプローチされた時、ご自身でどんな反応をされたか覚えていますか?

最初はちょっぴり疑うような気持ちもありました。ただのカメオ出演みたいなことは避けたかったのでね。もしやるのであれば、自分のキャラクターとか、ローラ(・ダーン)とジェフ(・ゴールドブラム)のキャラクターが映画の物語に完全に組み込まれていて欲しかったんです。

コリン(・トレボロウ監督)とは、(製作を)始める半年くらい前にスペインの映画祭で会いました。そこで彼は、僕のアイデアが、自分にとっても無くてはならない重要なものだと言って説得してきました。その数週間後に脚本が届いた時は、出たいと思ったし、実際に出られて良かったと思います。

── 撮影の時には、ご自身のアイデアを提案されたりしたのでしょうか?

うーん、そうだな……そこまでもないですね。アラン・グラントって男は、ある意味錆びた存在なんですよ。彼は本質的には同じ人間だけれど、歳を取ってしまった。そして前より気難しくもある(笑)。あとは何だろう……そこまで変わっていないかな。

ジェフはどこでも、一発ギャグのようなジョークを自分で放り込んで、シーンを熱く盛り上げていましたね。僕はどちらかといえば、脚本に書かれていることを演じるのに興味があってね。

再演は「すり減った靴を履くようなもの」

── 最近では、オリジナルキャラクターを復活させる風潮がハリウッドでは顕著に見られます。復帰する側として、ためらいの気持ちはありませんでしたか?

なかったです。現場をまた訪れることができてすごく嬉しかったな。僕はこれまで2作の『ジュラシック』作品に出演してきたけど、良い思い出しかないです。いつも楽しくやらせてもらっていたし、共演した俳優たちのことが大好きだった。恐竜もまあ好きだったし(笑)。再会の喜びも大きくて、自分が楽しいと分かっていることがまた出来た。全くためらいはなかったですよ。

── 本編を観て、グラント博士をはじめオリジナルキャラクターの登場シーンは誇張されたものではなく、ものすごく自然に感じました。これは強く意識されていたことなのでしょうか?

そうですね。脚本家は2つの物語をゆっくりと編み合わせて全員を集合させる術を見つけなくてはいけなかったと思います。なので、僕が意識したというよりは、彼らの役割でしたね。僕はただ、アラン・グラントになりきることに専念していました。アラン・グラントになる方法は分かっていたから、ただ歳を取った彼になるだけでよかった。アラン・グラントを演じることって、随分とすり減った靴を履くようなものでね(笑)。1993年に初めて履いた靴で、その靴が今までどこにいたのかも全部分かっていた。そしてもう一度履くと
心地良いんですよ。履きはじめて30年ですから。

── ジェフやローラとは久しぶりのお仕事ですが、いかがでしたか?

僕たちはお互いのことが好きです。いろんなことを一緒に乗り越えてきたし、1作目では嵐を生き延びた仲です。世界中でコロナが拡大していくなか、僕たちは5~6ヶ月くらいずっとホテルで一緒にいました。暗い時でも僕たちは一緒に何か楽しいことをやろうとしていましたよ。

── クリス・プラットとの共演についてお聞きしたいです。クリスは、『ジュラシック・パーク』であなたが担ったシリーズの顔という役割を引き継ぎました。そして今回2人は、遂に対面を果たしています。劇中で「Don’t Move」とハモってもいましたが、2人はどんな関係性にあると思われますか?

2人とも、互いに敬意を持っていると思いますよ。アランは恐竜を生き返らせることに常に懐疑的でしたよね。そしてそれがクリス・プラットのキャラクターにとってのライフワークだった。アランはどちらかといえば、従来の科学者的な存在で、骨をひたすら掘っているような人間です。なので彼らはお互いを尊敬しながらも、ためらいを持っている。アランは、ラプトルを調教するというアイデアはどうかしていると考えているから、それをやろうとしている人間には半分畏れを抱いている。もう半分は、こんなのクレイジーだって思っているんですよ(笑)。恐竜が外の世界に放たれて、暴れ回ることには反対しているけど、それでも恐竜に魅入られてしまっているんだと思います。

── そういえば、クリスもあなたも、『ソー:ラブ&サンダー』から連続で共演していますよね。クリスとは、このことについて何かお話しをされましたか?

話していないし、何なら初めて知ったな(笑)。と冗談はさておき、僕は小さなカメオキャラクターだったからね。タイカ(・ワイティティ監督)とは昔からの友人で、(撮影は)2日くらい参加して楽しもうぜ、って感じでした。僕たちは8年前に『ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル』という映画を一緒に作ったんです。あの映画が“世界のタイカ“の基盤を作ったと思います。僕たちもそれから仲が良いんだけど、みんなタイカのことは大好きだから、『ソー』には誰だって出ちゃうんです。キャストを見たら分かるけど、ちょっくら撮影に参加してあとはランチみたいな感じなんですよ(笑)。

アラン・グラントは「もうおしまい」、今後について

──この映画は、『007』のようなスパイ映画の要素を帯びた作風になると予告されていました。マルタ島での追跡劇のシーンなどを観ると、実際にそうだったと思います。グラント博士については、サトラー博士と一緒に研究所に忍び込むあたりで、スパイ要素を感じましたが、撮影中は意識されていましたか?

いいえ、そう言われたのは初めてですね。アイデアをありがとう。スパイとしては考えたことがなかったな。どちらかといえば、盗人のように思ってました(笑)。そこにいるべきでない彼がそこにいるという意味でね。とにかくスパイのことは考えていなかったな。ふむ、興味深いですね。

── 研究所のシーンでは、お二人の化学反応をすごく楽しめました。現場では、アドリブなんかもよくされたんですか?

少しはしたかな。たくさんというわけではないけど、ローラとの演技は夢のような理想的なもので、全てが自然で、何でも楽に感じるんです。ローラとの撮影はすごく楽しかったですね。

── 本作で『ジュラシック』シリーズは完結を迎えます。グラント博士の物語も然りですが、今後もシリーズは続いていくと思いますか?

もちろんです。いろんな方向に進んでいけるんじゃないかと思いますね。ほぼ確実に、僕たちのキャラクターの物語は終わりました。でも同時に、興味をそそる新しいキャラクターも出てきた。例えば、ディワンダ(・ワイズ、ケイラ役)とか、マムドゥ(・アチー、ラムジー役)とかね。彼らのキャラクターにはどんな可能性だってあると思います。

── もしももう一度アプローチされたら、どうされますか?

僕たちはもうおしまいじゃないかな。またやるだけの理由を思いつく事ができないのでね。これ以上はもう十分ですし、やってしまったら信憑性を下げてしまうんじゃないかと。演じるのは好きですし、実際に楽しかった。『ジュラシック』シリーズは僕の人生でものすごく重要な存在であり続けてきた。でも、いつかは終わりにしなければいけないでしょう?

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
© 2021 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

── 最後に、『ジュラシック・パーク』で一番鮮明に残っている記憶を教えていただけますか?

『ジュラシック・パーク』ですか。はっきり覚えていることはたくさんありますよ。ただ、カウアイ島の山頂で、電気柵を登った初日の撮影はよく覚えているな。スティーヴン・スピルバーグと働いていて、とにかくその時は自分はなんて強運の持ち主なんだって思っていました(笑)。まだ恐竜は見ていなかったけど、やっぱり初日が一番かな。あの時点ですでに最高な冒険のど真ん中にいて、スリル満点な1日だった。柵のテッペンにいた時は一番覚えてます。

映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は2022年7月29日(金)全国ロードショー。

Writer

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。