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『キングコング:髑髏島の巨神』スタジオNGの大胆アイデアとは ─ 「従来のコング映画とは違う」斬新なアプローチに挑む

映画史に燦然と輝くモンスター、キングコングには長い歴史がある。1933年製作『キング・コング』で初登場して以来、その活躍ぶりは映画館のスクリーンにとどまらず、ゲームやアニメ、コミック、ゲーム、テーマパーク、ミュージカルなど、まさにジャンルもメディアもを問わず縦横無尽。『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)は、そんなキングコングにとって実に8度目の映画化となった。

監督のジョーダン=ヴォート・ロバーツは、現代にキングコングを甦らせるため、さまざまな手を尽くし、新たなアプローチを取り入れている。そもそも『キングコング』といえば、1933年以来“美女とコングの恋物語”という定型があるものの、ロバーツ監督はこれを採用することもしていないのだ。ブリー・ラーソン演じるカメラマンのメイソン・ウィーバーは、決して従来通りの“コング映画のヒロイン”ではない。

理由はシンプルだ。米New York Daily Newsにて、監督は「そういうものは数えきれないほど観てきたし、よくできた作品が数えきれないほどありますから」と語っているのである。「なぜまたそっちをやらなきゃいけないのか、美女と野獣の物語を描き直すことで何を得られるのか。僕には、美女と野獣の物語が今でも新しく、そして共感できるものだとは思えなかったんです」とも。

すなわちロバーツ監督は、『キングコング』の現代化にあたり、意図的にシリーズの伝統から離れたのである。そして出来上がったのは、過去作品へのオマージュを随所に忍ばせながらも、巨獣たちの力技バトルを見どころとするモンスター・ムービー。日本のアニメやマンガ、ゲームからの影響をフルに反映したコング映画というのも前代未聞だろう。英Empireでは、従来との差別化のために過激なオープニングを考案し、スタジオからNGを出されたエピソードも語られている。

「第二次世界大戦中、軍隊が(髑髏島の)ビーチにやってきて、互いに殺し合いをしているというアイデアでした。そこに前作(ピーター・ジャクソン版『キングコング』)そっくりの巨大な猿がジャングルから出てくる。だけど、兵士たちにあっさり殺されてしまうんです。“キングコングが死んだぞ? 主人公が殺されちゃったよ?”みたいに観客が戸惑っているところに、もっと巨大な、本物のキングコングが咆哮をあげながら出てくる。“今までのコング映画とは違うぞ”というメッセージを送れると思ったんですが、スタジオからは“それはダメ”と言われちゃいましたね。」

ちなみに、このアイデアは形を変えて本編のオープニングに残っている。映画は第二次世界大戦中、米兵のマーロウが日本兵のイカリと髑髏島で戦う場面から始まるのだ。ニセモノのコングが殺されてしまうというアイデア、もし実現していたらどう受け止められていたのだろう?

Sources: New York Daily News, Empire

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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