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マーティン・スコセッシ、次回作は自身初の西部劇 ─ ディカプリオ&デ・ニーロ出演、「米国史の闇」実在事件で描きたいテーマとは

ロバート・デ・ニーロ レオナルド・ディカプリオ マーティン・スコセッシ
Georges Biard https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Robert_De_Niro_Cannes_2016_2.jpg | THE RIVER | Remixed by THE RIVER

マーティン・スコセッシ監督の最新作、レオナルド・ディカプリオ&ロバート・デ・ニーロの共演でも話題の『キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン(原題:Killers of the Flower Moon)』を、スコセッシが自身初の「西部劇」だと形容した。1920年代に実際に起こった先住民族の殺人事件を通して、巨匠はいったい何を描こうとしているのだろうか。

デイヴィッド・グランの犯罪ノンフィクション『花殺し月の殺人──インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』(早川書房刊)を映画化する本作は、アメリカ南部・オクラホマ州で1920年代に起こった、先住民族オセージを狙った殺人事件をひも解く物語。オセージ族の人々が連続死を遂げる背景には、現地での石油発見があって……。原作は、石油マネーと政治、人種差別が真相解明を阻んだ“アメリカ史の闇”に迫ったベストセラー作品だ。

スコセッシは本作について、仏Cahiers du Cinémaにて「我々は西部劇だと考えています」と明言。実際の事件について自ら解説している。

「(事件は)1921年から1922年、オクラホマにて起こりました。カウボーイたちが登場しますが、車も馬も持っていますね。映画は主にオセージ族を描いています。恐るべき土地を持っていた先住民なのですが、彼らはその場所を愛していた。なぜなら、白人たちはその場所に決して関心を持たないと信じていたからです。しかし白人は、そこに石油があること、オセージ族が世界一裕福であることを知った。そして、ユーコンやコロラドといった鉱業地域と同じように、ハゲタカが降り立ったんです。白人、ヨーロッパの人間がやってきて、すべてが失われました。あらゆるものを支配する裏社会では、インディアンを殺すより、犬を殺すほうが刑務所に送られる可能性が高かったんです。」

既報によれば、デ・ニーロが「オセージ・ヒルズの王」と呼ばれた名士で連続殺人鬼のウィリアム・ヘイル、ディカプリオが殺人に関与したヘイルの甥アーネスト・ブッカートを演じるとのこと。スコセッシによると、残りの役柄はネイティブ・アメリカンの俳優が演じるという。以前、スコセッシは本作について「虐殺に加担することを追求したい、本質を描きたい」述べていたが、今回も異なる角度から同様の意図を明かしている。

「こういう出来事に我々を導いた精神性について考えるのは非常に興味深い。文明の歴史はメソポタミアまで遡りますが、ヒッタイトという民族は他者の侵略を受けて消滅しました。のちに、彼らは(他の民族に)同化したのだ、いや吸収されたのだといわれています。私が興味を持っているのは、2度の世界大戦を経て、この精神性が別の文化で蘇っていること。すなわち、時代に左右されないのだと思うんです。そういうことを今回の映画では描こうとしています。」

スコセッシとともに脚本を執筆するのは『ミュンヘン』(2005)のエリック・ロス。撮影監督は『沈黙 -サイレンス-』(2016)『アイリッシュマン』(2019)などスコセッシ作品常連のロドリゴ・プリエトが務める。撮影は2020年春にも開始される見込みだ。

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Sources: Premiere, Collider

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。