【筋トレ】『クレイヴン・ザ・ハンター』トレーナーに極意を聞いた ─ レップ数の考え方からプロテインの摂り方まで

ソニー・ピクチャーズによるマーベル映画最新作『クレイヴン・ザ・ハンター』が、2024年12月13日より日米同時公開となった。マーベル映画史上最も獰猛な肉体派ヴィランを描くこの映画で主演のアーロン・テイラー=ジョンソンは、原作コミックのようにダイナミックな筋肉を見せつけている。突き出したメロン肩と、バキバキの腹筋。相当ハードな筋トレと食事管理を行わなければ作れないボディだ。
THE RIVERでは、この映画でアーロン・テイラー=ジョンソンのトレーナーを務めたでデヴィッド・キングスバリーに単独インタビューを敢行。映画の肉体改造の裏側だけでなく、「最適なトレーニング方法」「レップ数の考え方」「本当に有効な腹筋の鍛え方」「プロテインの摂取タイミング」など、筋トレやダイエットに励むすべての人にとって役立つ情報も聞いた。もしも映画に関心がなくても、ワークアウトに少しでも関心がある方なら、とても興味深い内容が語られている。キミも筋トレを頑張って、クレイヴン ボディをゲットしろ!

『クレイヴン・ザ・ハンター』トレーナー デヴィッド・キングスバリー インタビュー
──僕自身、ジムに通って筋トレをしていますので、筋肉を増やしてバルクアップすることの難しさはよくわかります。その点で、『クレイヴン・ザ・ハンター』のアーロン・テイラー=ジョンソンの肉体は本当に素晴らしいですね。製作陣からは、クレイヴンの身体を仕上げる上でどのようなリクエストをされていたのですか?
撮影前、アーロンとトレーニングを始めるより前に監督やスタジオからの要求について話し合うことはありませんでした。でも、アーロンとは話をしましたし、原作コミックのことは意識しました。映画では新キャラクターですが、コミックには既に存在しています。なので、クレイヴンの見た目というのはまず先行してある状態。コミックでの彼は筋肉モリモリで、凄まじく引き締まっています。もちろん、これを再現しようというのは、とても大変なことでした。
それから、スタントコーディネーターとも話をしました。アーロンがこなすことになるスタントでのフィジカル面についても擦り合わせなくてはいけませんでしたからね。見た目の仕上がりと、パフォーマンス面も組み合わせて、撮影に耐えられるようにする必要がありました。本作にはスタントもたくさんあれば、全速力で走るシーンもたくさんあるし、壁によじ登るなどのダイナミックな動きもたくさんある。だから力強さと筋肉量もさることながら、俊敏さも必要でした。

──アーロンはこれまでもアクション映画をやっているので、本作以前から筋肉質ではありました。今作で特に強化した部位はどこですか?
アーロンはロンドンに着いた頃から前準備をしてくれていて、できるだけ自力で筋肉をつけてきてくれていました。初めから筋肉量は申し分なかったですね。僕たちがやったのは、引き続き筋肉量をつけてもらうことと、画面上で筋肉が目立つように、体脂肪を落とすこと。映画で見たときに身体が引き締まっていれば、筋肉モリモリに見えるものです。
カメラに映る上では、どれだけ絞れているかが大事。だから、彼の筋肉全てをきちんとカメラに映すために、体脂肪率を落とすことを始めました。アーロンは元々筋トレをずっとやっていて、過去にいくつもの映画のために筋肉を作ってきていました。これは大きなアドバンテージです。一度やったことがあるのなら、それだけ筋肉もつけやすい。
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──プロのトレーナーとして、アーロンのどんなところに驚かされましたか?
アーロンはとにかく役に対する入れ込み方と覚悟がハンパない。役のためなら、どんなことでも全力でやる人です。トレーニングから栄養摂取、回復、睡眠に至るまで、全てのことを最高の結果のために最適化して行っていました。一つ一つへのコミットメントが尋常じゃない。どれだけ朝が早くても、どれだけハードな日の深夜でも、彼は必ずジムに来て、激しいトレーニングをやり遂げる。あれだけやる気に燃えたクライアントを見られるのは、トレーナー冥利に尽きますよ。全力でコミットした人の結果を見られるのも、すごく嬉しいですね。
──アーロンとはどれくらいの期間トレーニングをしましたか?
撮影前の準備は、確か10〜12週間くらいだったかな。そして撮影が始まってから、クランクアップまでずっと並走させてもらいました。撮影期間中も、ずっと身体を絞った状態をキープしないといけない。彼は準備前から既に自分で筋トレもやっていましたので、それがどれくらいの期間かはわからないですね。
──準備期間中は、どれくらいの頻度でトレーニングしていましたか?
平均すると、週に4~5回ですね。スタント・リハーサルに入ってからは、別日でスポーツ・トレーニングもやっていました。
──本作のアーロンを見ると、肩の筋肉の盛り上がりがすごいですよね。肩ってなかなか効かせるのが難しい部位でもあると思うんですけど。
筋肉をつけるのには時間もかかりますね。大きな筋肉をつけたいなら、一貫したトレーニングも必要です。基本的に筋肉量のアップには、メニューの選定が大事です。狙った部位に効かせるメニューであるかどうか。サイドレイズやオーバーヘッドプレスは、肩の筋肉に最適です。そして、正しいフォームであるかも大事だし、重量設定も大事。どれくらいの頻度で鍛えるのか、部位ごとに週何回やるのか、何セットやるのか。何レップ(=回数)やるのか。そういうことが全部大事です。

一番いい頻度としては、一つの部位を週に2回やることです。肩を張らせたいなら、週に2回肩をやる。セット数とレップ数を最適化して、成長を実感する。より強くなりたいなら、より重い重量をコンスタントに持ち上げられるようにするんです。筋肉量を増やすなら、プロテイン摂取やリカバリーも重要です。
『クレイヴン・ザ・ハンター』のアーロンの場合、体脂肪を落とすことも重要でした。たとえば、もし肩に十分な筋肉量があったとしても、そこに脂肪が乗っていたら、形やキレが出ない。それから、撮影の直前に追い込んでパンプさせることもありました。セットの脇にダンベルやバンドを置いておいて、ギリギリまでサイドレイズやアップライトロウなどをやるんです。彼はスタントもやるから、ウォームアップにも良かったですね。

──他に、撮影前日などの最後の追い込みにどんなことをやりましたか?
映画の中では、腕が映ったり、腹筋が映ったりと、色々な瞬間があるので、その内容によってさまざまな追い込みをやりました。炭水化物や塩分を摂ってグリコーゲンを作って、筋肉をパンプさせたり、撮影までの数日は水分摂取を控えて、水抜きをやることもありました。こういうことを組み合わせました。
──大会前のボディビルダー選手と同じですね。
そうですね。水や炭水化物のコントロールについては同じプロセスです。でも気をつけないといけないのは、彼は演技もやらないといけないし、走らないといけないし、スタントもしないといけないということ。だから精神的にしっかりしていることや、強さ、協調性も求められるわけですが、そういったものは脱水状態だと失われてしまいますからね。
──有酸素運動はやりましたか?
いいえ、有酸素運動は行っていません。ウエイトトレーニングだけです。全力疾走するシーンに向けては、スポーツ的な有酸素運動をやることにはなりました。スプリントのシーンがたくさんあるので、彼のコンディションに問題がないかを確認するためですね。
でも、それ以外に有酸素運動はやっていません。スタントの撮影自体が、もはや有酸素運動ですからね(笑)。それ以上加える必要もなかった。やったのはジムでのトレーニングだけです。
──全力疾走のシーンに向けて、脚のトレーニングはどのようにしましたか?
大規模な全力疾走シーンに向けては、トレーニング用そりを多用しました。ジムに一台あって、僕とアーロンと、彼のスタントダブルの3人で使っていましたね。1人がそりを押している間、後の2人が休憩するというやり方で。めちゃくちゃキツかったです。
──アーロンの食事管理についてはいかがでしょうか?
食事はかなり大きな部分を占めていますね。引き締まった身体を作って、維持するためには、とにかく食事が大事。それでいて、良いエネルギー状態でないといけない。代謝機能、ホルモン機能、全てがきちんとしていないといけない。食生活が乱れた状態で体脂肪を落とすと、こうした栄養素も簡単に失われてしまうからです。
なので、 微量栄養素をしっかり摂らなくてはいけません。タンパク質をしっかり摂って、脂肪や炭水化物も適量摂る必要があります。食材もできるだけ質の高いものを選びます。
本作では、現場付きのシェフがアトランタから来てくれていて、彼女が全ての食事を作ってくれました。アーロンが食べるものに関しては、僕が全てチェックをしました。よく食べていたのは、ステーキ、ポテト、卵、魚、鶏肉、米です。脂肪はアボガドなどから摂っていました。あとは果物も栄養摂取のためにずっと食べさせました。ベリーやキウイ、バナナなどですね。
──食事制限はツラいイメージがありますが、アーロンの様子はどうでしたか?
シンプルな食材でも、うまく調理されていて、味付けも良ければ、十分楽しめるものですよ。アーロンはいつもバランスの取れた健康的な食事をしていました。良い栄養素を多く含む食事を食べていれば、体に必要なものを全て摂取することができるので、ジャンクフードを食べたいという欲求もなくなるんです。だって身体が満たされているんだから。
よくボディービルダーのようなダイエットをしようとして、「油と鶏肉とブロッコリーだけ」みたいなクレイジーなダイエットをする人もいるけれど、自分の身体に必要な栄養を全て摂るような食べ方をした方が、ずっと楽なのになと思います。
──アーロンが特に得意としていた種目はなんですか?
アーロンは元々アスリートで、なんでも得意でした。スタントをやる姿を見て、すごいなと思いましたね。今作で彼は自分でたくさんスタントをやったのですが、見ていて楽しかった。ジムでは、ウエイトを上げる姿しか見ていませんでしたから。こんなに凄いことができる人なんだって思いましたよ。なんでもうまくこなしていましたね。

──クレイヴンのようなボディを手に入れたい人に向けて、オススメのトレーニング方法を教えてください。
まずオススメしたいのは、週4回のウエイトトレーニングです。上半身、下半身、上半身、下半身と分割する。つまり上半身を週2回、下半身を週2回です。上半身の日は、胸、背中、肩、腕をやる。1つのエクササイズを、それぞれ2〜3セットやる。
よく、胸のために5種類のメニューをそれぞれ4セットくらいやる人がいますが、それはやりすぎです。それでは身体が回復できない。筋肉にダメージを与えすぎで、長期的に見るとあまり生産的ではありません。長期的には、一つの筋群に対して2〜3セットやるのが良いです。これを週2回やります。
レップ数で言うと、筋肉の発達には6〜10レップがオススメです。アーロンとのトレーニングでも、いつも6〜8レップでした。そして、高重量で6〜8レップ上げたら、インターバルは2分ですね。しっかり回復させて、2セット目もしっかり上げられるように。なので、なかなかスローなセッションにはなりますが、それはきちんと回復させて、一つ一つのレップを丁寧にやることを心がけるためです。
──レップ数ですが、部位によって異なることはありますか?例えばサイドレイズの場合、15レップくらいかけてネチネチやるのが良いのかなと思っていました。