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『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』魔法のからくりを直接訊いた!「職人技と最新技術の融合」 アニメーション・スーパーバイザー特別インタビュー

©THE RIVER

全世界が驚愕、スタジオライカによる最新作KUBO/クボ 二本の弦の秘密が2017年11月18日(土)より待望の日本公開を迎える。『コララインとボタンの魔女』のスタジオライカが放つ驚きのストップモーションで、情感あふれる日本の風景や風習を息を飲む美しさで描いた本作。2017年アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞のノミネートを始め、〝アニメ映画界のアカデミー賞と称されるアニー賞にノミネートされるなど、全世界の映画賞を総なめした話題作だ。

この魔法のような作品のアニメーション・スーパーバイザーを務めたブラッド・シフ氏がTHE RIVERのインタビューに登場。およそストップモーションとは思えない豊かな表情を見せるクボや壮大な映像のからくり、そしてスタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫氏にして「この映画をアメリカ人が作ったというから二度驚く」と言わしめた日本描写はいかにして実現したのかを訊いた。

クボ 魔法のからくり

©THE RIVER
筆者とブラッド氏を挟むテーブルの上には、実際の撮影に使用した本物のクボ人形と、実に様々な表情パーツが並べられていた。これらの微妙に異なる眉の描かれた額のパーツと口のパーツを組み合わせて、活き活きとしたクボの表情を作り出していく。例えば眉をしかめた額パーツであっても、笑った口のパーツと組み合わせれば、少しシニカルな表情になる。こうした組み合わせは、実に4,000万以上のパターンも作ることができるそうだ。

本物のクボ人形を目前に感激しきる筆者に対し、ブラッド氏はなんと表情パーツの付け替えを実演してくれた。
はじめに前髪パーツを外すと、額を顕にしたクボはさながら楽屋で化粧中の歌舞伎役者のように「オフ」の表情を見せてくれる。ブラッド氏はそこから、さらに口のパーツ、眉の描かれた額のパーツまでを取り外してくれた。途端、クボ人形にかけられた魔法の種がまるで機械仕掛けのからくり人形のごとく露呈する。

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わずか1秒間に必要なフレーム数、24 ── アニメーターらは、気が遠くなるほど膨大量のフレームごとに、都度手作業で額と口のパーツを取り替え、ミリ単位で動かしていった。仕上げに、顔面に走るパーツの繋ぎ目をビジュアルエフェクトで除去する。

「凄いのはこれだけじゃないんですよ」──ブラッド氏は、手塩にかけたクボ人形が愛おしくて仕方ない様子で、細いカッターのような刃物を取り出した。後ほど確認したところによると、エグザクトナイフ X-ACTOと呼ばれるデザインナイフだそう。この鋭い切っ先でクボの眉を上下させ、そして瞳を回転させるのだ。繊細な動きができるよう、瞳のからくりには気を使ったという。ブラッド氏が切っ先を操るごとに、クボが眼を開閉させ、その片眼をキョロキョロ動かしてみせる。
「やってみるかい」と、ブラッド氏は筆者にクボ人形とエグザクトナイフを手渡してくれた。ナイフの切っ先は非常に鋭利で、力加減を誤ればクボの瞳に傷をつけてしまいそうなほどである。事実、瞳の表面には肉眼でしか確認できないほど細かく浅い穴痕があった。「かなりスムーズに動くでしょう?」と優しく微笑んでくれたが、貴重なクボ人形に触れながら筆者の右手はすっかり震えてしまっていた。ストップモーションでパペットを動かすアニメーターの仕事がいかに神経をすり減らすものであるかを痛感する。なお光栄なことに、こうしてクボ人形の瞳を直接触る機会を与えられたのは、日本人ジャーナリストとしては筆者が初めてだったそうだ。

©THE RIVER

職人技と最新テクノロジーが出会ったとき

ミリ単位の動きを手作業で制御するストップモーション・アニメの技は昔ながらだが、『KUBO』の製作についてブラッド氏は「職人技と最新鋭のテクノロジーのハイブリッドだ」と語る。

Writer

THE RIVER編集部
THE RIVER編集部THE RIVER

THE RIVER編集部スタッフが選りすぐりの情報をお届けします。お問い合わせは info@theriver.jp まで。

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