『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』魔法のからくりを直接訊いた!「職人技と最新技術の融合」 アニメーション・スーパーバイザー特別インタビュー

「ライカによる2009年のストップモーション・アニメ『コララインとボタンの魔女』の頃に比べてテクノロジーが飛躍的に進化しました。顔に取り付ける表情のパーツは3Dプリンターで作っているのですが、現在ではカラーを付けることができるようになっているんですよ。それから頬のちょっとした赤みの表現など、『コララインとボタンの魔女』時代には出来なかった表現が可能になっているんです。」
かつて映像におけるVFX技術がまだ発展途上だったころ、「ついにCGも実写と見紛うほどになった」とその技術の進歩に驚いたものだった。実写と区別が付かないレベルの映像が生み出せるほどVFX技術が発達した今、『KUBO』は「CGと見紛うほどの実写(ストップモーション・アニメ)」を実現してみせた。しかしブラッド氏と話してよくわかったのは、ライカには特にVFX技術の流れに拮抗しようとか、ストップモーション・アニメに頑固に拘ろうといった非合理的な観念はない。あくまでも物理的な検証に基づくストップモーションを基調とし、CG技術による恩恵も効果的に取り入れている。それは、ピノキオに命を吹き込むことを夢見たゼペット爺さんと似た、限りなくピュアなモチベージョンによるものと言える。ブラッド氏はこう語る。
「テクノロジーやVFXの活用により、より大きな絵が描けるようになりました。
これまでの歴史では、ストップモーション・アニメの限界とは即ち”テーブルの限界”で…つまり、物理的な要因に集約されていました。でも現在では、想像通りの世界を思う存分描くことができるようになりました。なぜなら、背景キャラクターなどにCGを活用できるからです。これまで8~10体のパペットを使っていたところを、VFXを使って100体に増やすこともできます。」
『KUBO』におけるストップモーション・アニメとCGIによるハイブリッドの好例といえるのが、映画冒頭の荒れる大海原の演出だ。ストップモーション・アニメならではの人の手で作られたことによる手肌の体温を感じる質感でありながら、しかしCGでしか成し得ない映像でもあるような、不思議な印象を放っている。ブラッド氏はこのシーンについては「CGIを使った」と明かしており、同時に「CGIで有機的な表現を試みた」と言い表している。どういうことか。
「海面の動きを、本物のメッシュ素材を使ってシュミレートしたんです。そのメッシュ素材の上に色々な種類の布やプラスチックなどを実際に貼ってみて、どの素材が海面をリアルに再現できるか試しました。そして、一番良かった素材が黒いゴミ袋でした。表面のシワや光の反射具合が面白くて、映画の世界観にピッタリでしたね。このストップモーションを元に、CGI部門が海を作ってくれたんです。海や雲、霧など、どうしてもストップモーションでは描けないものもありますが、こうして全ては物理的なものから始まっているんですよ。」
しかし一方で、これまでストップモーションで描こうとは考えられなかった挑戦にも、『KUBO』では挑んでいる。「製作において、一番最大の発明は何だと思いますか?」との質問に、ブラッド氏は巨大髑髏だと答えた。
「髑髏の全長は16フィート(約4.9メートル)、体の部分は250キロもあります。これはさすがに動かせないぞということで、遊園地のアトラクションにあるようなフライト・シュミレーターを採用しました。アニメーターが遠隔操作で動きを制御しています。」
「すごく大変でしたよ。通常のストップモーション・アニメでさえ、どうやって動かしているのかと不思議がられるのに。ストップモーション・アニメは、コンマ何ミリずつ動きをずらしてアニメ化していくのですが、この巨大髑髏は全長4.9メートル。こんな規模でストップモーションをやるなんて、アニメーターにとってはとんでもない挑戦でした。腕一本で重さが35キロもありますからね。」
では、その一本35キロもある腕を具体的にどうやって動かしているのかを聞いてみた。