『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』魔法のからくりを直接訊いた!「職人技と最新技術の融合」 アニメーション・スーパーバイザー特別インタビュー

「説明が難しいのですが、砂袋を吊るした滑車が天井につながっていて、コンピューターで縦横高さの三軸の動きをコントロールしています。あぁ、やっぱり説明しづらいんだけど、これが凄いんだよ!(笑)」
この巨大髑髏に、日本人の我々はどこか馴染みを感じることがあるかもしれない。それもそのはず、「がしゃどくろ」と呼ばれる日本の妖怪がモデルのひとつになっている。この妖怪は、骨と骨がぶつかりあいガシャガシャと音をたてることからこの名がついた。現在、ライカ社のある現地のミュージアムで実物が展示中だというこの巨大髑髏も、設置されたスピーカーからガシャガシャという音をポートランドに響かせているという。
懐かしさ感じる映像の理由とは
ブラッド氏と「がしゃどくろ」の話をしているとき、実際の画像をスマホの画面で見せてみると、「そう、これだよ」といった反応を示していた。『KUBO』製作にあたってブラッド氏らライカは、日本文化を相当調べこんでいたのだ。
「日本の文化の再現には本当に注意と敬意を払いました。リサーチには多大な時間を費やしましたし、後藤太郎さんという方に日本文化のコンサルタントとして従事頂きました。後藤さんにはライカのスタジオにお越し頂いて、製作メンバーに混じって我々の描く日本文化の正誤をご指導頂いたのです。」
それからもちろん、黒澤明監督作品、宮﨑駿監督作品からの影響も強い。ライカが大切にしたのは、”黒澤明や宮﨑駿らの目を通じた日本文化”に忠実であることだったという。たとえば宮﨑駿らスタジオジブリがヨーロッパ的な表現にアプローチしたのと同じように、ライカは『KUBO』を通じて日本表現に挑んだ。ブラッド氏は、「ストップモーション・アニメこそ日本の”わびさび”だと思うんです」と微笑む。
「バージョンを都度保存して進められるCGと違って、ストップモーション・アニメの作業はとてもナイーブ。1秒あたり24フレームすべて、人の手によってパフォーミングしなければなりません。たとえば舞台演劇の役者みたいに、どれだけ準備しようとも、いざ始まってみれば予定通りに進む時とそうでない時がある。どれだけリハーサルをしても、人の手によるものである以上、いつも同じ動きができるということはないんです。人の動きとは不完全なもの。ストップモーション・アニメに現れる触覚性こそ、”わびさび”の感覚に近いのではないでしょうか。」
(取材・撮影・構成:Naoto Nakatani)