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歴代最高傑作!『レゴバットマン ザ・ムービー』が最高のバットマン&ロビンのオリジン映画である3つの理由

4月1日に全国公開された『レゴバットマン ザ・ムービー』。2014年に公開された映画『レゴムービー』のスピンオフ作品となっています。ですが『レゴムービー』とは物語上の繋がりはほぼ皆無と言ってよく、あくまでも『レゴバットマン ザ・ムービー』単体で観られるようになっています。前評判が非常に高かったことから、注目が集まっていた今作。

観てみた感想を一言で表すならば「最高傑作」の4文字が相応しい、紛うことなきバットマン映画となっていました。”レゴ”ということで子供っぽいと敬遠する人も多いと思われますが、これほどにバットマンのキャラクターを理解した上で深く掘り下げ、その上でバットマンを救った映画は史上類を見ません。

『レゴムービー』に出たお調子者でキザというコミカルなバットマンを踏襲しつつもコミックで描かれるバットマンの暗い性質をコミカルに、そして誠実に掬い上げて作品に落とし込んだ本格バットマン映画となっております。

以下にこの『レゴバットマン ザ・ムービー』の3つの魅力を紹介します。

【1】バットマンの父親役のアルフレッドが良い!

レゴ バットマン ザ・ムービー
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

まず一つ目が、バットマンとアルフレッドの関係を非常に丁寧に描写していることです。暗黒都市ゴッサムシティで日夜犯罪と戦うヒーローのバットマン、その正体が大富豪のブルース・ウェインなのはあまりに有名ですが、執事のアルフレッド・ペニーワースとの関係についてはあまり知られていません。幼いころに犯罪で両親を亡くしたブルースを男手一つで育て上げたのが執事アルフレッド。彼とブルースの繋がりは非常に強く、広い豪邸の家事を全て取り仕切り、バットマンの活動もサポートするアルフレッドはまさにスーパー執事です。

しかし、それは能力面だけではなく、感情面でも同じことです。ブルースに深い愛情を注ぐアルフレッドは紛うことなきブルースの父親。ブルースの戦いを心配しながらも見守り、彼のことを案じながらも時には耳が痛いアドバイスをするアルフレッドはバットマンにとって欠かせない人物です。そのことは『レゴバットマン ザ・ムービー』でも描かれています。激闘から帰ってきたバットマンが安心できるようにこまめに家事をし、料理を作る彼は、ブルースをたしかに愛しています。しかし夜型人間のブルースに陽の光をあて、がらんと寂しい豪邸で一人留守番しても嫌がる社交界に出て人と触れ合うように強制します。

【2】バットマンとロビンの関係性を真摯に語っている

レゴ バットマン ザ・ムービー
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

二つ目が、ロビンことディック・グレイソンの重要性をコミックを読んだ人ならば誰もが膝を打つ真摯さで、バットマンに詳しくない人でもわかるように語っていることです。上で紹介したようにバットマンは日夜、悪党と戦い、人々と街を守っています。しかし一人で戦い続けたバットマンはいつしか傲慢になり、人と触れ合うことを忘れた彼は家族のトラウマから自分の殻に閉じこもるようになっていました。これは経緯が違えども『バットマンvsスーパーマン』でも描かれていることです。しかし、『レゴバットマン ザ・ムービー』でのバットマンは家族を作った経験が皆無。家族を失った彼はまた家族を作って喪うことを過度に恐れています。そうして『レゴバットマン ザ・ムービー』のバットマンはとてつもなく巨大な豪邸に夜遅く帰り、一人で黙々とアルフレッドが作った食事を食べて、映画鑑賞に耽るようになりました。

『レゴバットマン ザ・ムービー』にてバットマンの問題点を最も端的に現したのがブルース・ウェインがゴードン警部の娘にあたる才色兼備のバーバラ・ゴードンに一目惚れしてしまうというものです。ブルースとバーバラが恋愛関係になる作品は前例があります。しかしバーバラと恋愛関係にあるのはほぼ常にバットマンの義理の息子のディックです。しかしアルフレッドに出たくないとごねて渋々出席したパーティーにてブルースは親子ほどに歳の離れた女性にメロメロになります。これはブルースがまだ大人になりきれておらず、社交界よりも少年が好む冒険や色恋に夢中というのを示しています。ともすれば危険なネタをブルースの心が少年のままというのを表現するために用いたことには見事という他ありません。

以上のように『レゴバットマン ザ・ムービー』ではコミックにて繰り返し描かれてきたテーマ、”世界最高の探偵バットマンは紛れもなくヒーロー。しかしその実は中年になっても実家で暮らして父に家事の一切を任せ。やりたいことだけをやる子供大人なのではないか”ということを提示してきます。これまでのバットマンの映画では痛々しくなりすぎてか描かれなかったタブーをレゴの世界観に載せてコミカルに、しかし胸が痛いほどにストレートに描いているのです。

そんなある意味で誰もが陥る本当の暗闇に光を投げかけるのが後のバットマンの相棒ロビン/ディック・グレイソンになるのです。不器用にも程があり、対人関係に重大な欠点を抱えたバットマンと孤児だが屈託のない明るさを持つディックの触れ合いは心温まるものがあります。

【3】ネタ盛りだくさん!ヴィランも多種多様!

3つめがネタの細かさです。歴代映画、ドラマ、コミックと満遍なくネタを拾ってきており、詳しくなくても笑えるようになっていますが、詳しいと一層笑えるようになっています。登場ヴィランもカイトマンやベイン、キャット・ウーマン、ペンギン、ジョーカーだけでなく、コンディメントキングやキャットマンやクレイジーキルトといった滅多に見かけないヴィランもふんだんに出てきます。時系列がおかしい気がしますが、元二代目ロビンのレッドフードも出演し、台詞はありませんが画面の隅でうろちょろしたりしています。物語の集中を妨げない程度にジェイソンを探してみましょう。

レゴ バットマン ザ・ムービー
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

もちろんバットマンのヴィランと言ったら忘れてはいけないのがジョーカー。ゴッサムシティ最狂のピエロとバットマンの関係はいつもと何ら遜色ないクオリティとなっており、バットマン&ロビンだけでなくバットマンとジョーカーの対決を目当てに行っても満足することでしょう。またバットマンどころかDC作品とは縁もゆかりもない悪役達も目白押しとなっており、あの作品やこの作品の強敵がバットマン達と戦うという熱いシーンもあります。ネタの細かさで言えば伝説的名作ドラマの1966年『バットマン』へのリスペクトです。アダム・ウェストが演じたバットマンのオマージュシーンが随所に張り巡らされており、レゴで名作を再現しているのには感無量です。

少し不満な点も

『レゴバットマン ザ・ムービー』がバットマン映画史のみならずDC映画史に燦然と輝く金字塔なのは確かですが、問題点もあります。バットマンの相棒であり義理の息子となるロビン/ディック・グレイソンの掘り下げがあまりないということです。ディックが天才的な身体能力の持ち主であり、暗闇に満ちたウェイン邸に光を齎す存在なのは語られています。

ですがディックはバットマンと同じく犯罪によって両親を殺されて孤児になった少年。とても美味しい設定なのですが、そこをクローズアップされずにバットマンの息子であり相棒という面だけ強調されたのは尺の問題もあるとはいえ少しだけ残念です。

似たような不満ですが、物語の焦点をバットファミリーとゴッサムシティに当てたため、ジャスティス・リーグの描写がいささか不十分という点です。今作ではバットマンは傲慢で鼻持ちならない男であり、そのせいで仲間にもだんだんと疎まれ始めていることが描写されているのですが、和解シーンがなかったのは残念と言えば残念ですね。

紛れもなく最高のバットマン&ロビンの映画!

© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

しかし、『レゴバットマン ザ・ムービー』はバットマンとロビンが出会い、パートナーとなり家族となる物語です。コミックのバットマンでは“犯罪で家族を喪った男が犯罪との戦いを通じて家族を作っていく”というテーマが作品の欠かせない核の一つとなっています。これまでの映画ではバットマンのキャリア自体がさほど長くなく、孤独に呑み込まれて精神を病んでいく過程を描写する必要がありませんでした。

そんなバットマン映画にて、正面からバットマンの精神の問題点を描き、その上でロビンという存在が如何にバットマンの救いになるかを語った初めての映画が『レゴバットマン ザ・ムービー』です。レゴという子供向けのジャンルでありながらもバットマンというキャラクターを映画にて確実に1ランクどころか5ランクは上のステージに引き上げた問題作であり、その上で正真正銘の”ダークナイト”の成長譚として最上級のクオリティを持っています。

先程挙げた他にも『レゴムービー』のスピンオフなのに『レゴムービー』の痕跡が少ない気がしなくもないという問題点がありますが、それを補って余りあるクオリティの高いバットマン映画となった今作。『バットマンvsスーパーマン』と同じく孤独と事態の変化で精神を病んだバットマンの再生物語となっていますが、前者を救ったのがスーパーマンなら後者を救ったのがロビン。バットマン好きなら必見の名作です。

LEGO BATMAN THE MOVIE:© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

Writer

小村健人村上 幸

DCコミックスと非ヒーローコミックスをメインに読んでいます。ユーロコミックスを原語で読むのが現状の目標です。好きなヒーローチーム:ジャスティス・リーグ・インターナショナル好きなヒーロー:たくさんのDCヒーロー(特にキース・ギッフェンがライターを担当した時のヒーローかヴィラン) salarmko@outlook.jpお仕事の依頼はこちらへ。