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「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」レビュー荒らしに新対策、全投稿を事前に検査・評価

ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪
(c)Amazon Studios

J・R・R・トールキン著『指輪物語』に基づく超大作シリーズ「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」の配信が、いよいよ2022年9月2日(金)にスタートした。本作は配信日に全世界で2,500万人以上の視聴者を獲得し、Prime Video史上最大のプレミア視聴者数となっている。その一方で製作・配給を担当するAmazonは、本作に“レビュー荒らし”の新対策を取り入れていた。

そもそも「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」は、配信の開始前からファンの間でも議論の重ねられていた作品だった。配信直後にはその勢いが強まり、『スター・ウォーズ』やマーベル&DCなどと同じく、現代ポップカルチャーのファンダムにしばしば見られる“レビュー荒らし”に繋がったのである。本記事時点で、米Rotten Tomatoesでは批評家スコア84%に対し、観客スコアは39%。また米IMDbでは6.8点と、視聴者からの評価が著しく低い状態なのだ(これでも配信直後より数字は改善されている)。

そんな中、Amazon Prime Videoの配信ページでは、いまだ日米ともにカスタマーレビューが公開されていない。実はAmazonでは、2022年8月12日に配信されたドラマシリーズ「プリティ・リーグ」(2022-)から、レビューの公開を意図的に遅らせる戦略をひそかに導入していたのだ。米Varietyによると、今後のPrime Video作品に投稿されたレビューは、すべて荒らしやボットの作成物でないかの検査を受け、純正な投稿と判断されたものは72時間後に掲載されるという。

「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」に関しては、配信前からキャラクター/俳優の性別や人種に関する批判が特に大きく、なかには批判と呼ぶにふさわしくない罵詈雑言も認められた。トールキンの原作や、ピーター・ジャクソン監督による映画版との差異を批判的に指摘する声もあれば、単純に作品としてのクオリティを疑問視する声もある。現在はSNSなどを通じ、ネガティブな意見が実際の作品よりも先行して広がることも多いため、Amazonとしてはその中に紛れ込む荒らしやボットへの対策を講じつつ、マーケティングとしても作品への反応をどう表に出すかを制御する狙いだろう。

米報道では「72時間」のルールが伝えられているものの、本記事時点(9月6日午後13:30)で「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」のカスタマーレビューはいまだ公開されていない。非常に反響が大きかったため、事前の想定をはるかに超える数のレビューが投稿されており、検査に時間がかかっている可能性もありそうだ。

なお「プリティ・リーグ」のカスタマーレビューを見るかぎり、各レビューを事前に評価し、後から公開する作戦はうまく機能しているように思われる。米Amazon.comでは6,500以上の評価が寄せられているが、そのうち星5つが全体の84%を占め、星1つが14%。Rotten Tomatoesの観客スコア85%とも(計算方法は違うものの)よく似た数値となっている。

ひとつ懸念があるとすれば、製作・配信元であるAmazonがすべてのレビューをチェックし、意図的にコントロールする姿勢をいまや隠していないことだ。しばしば暴走するファンダムの中で、荒らしや罵詈雑言に適切に対応する必要はあるものの、何をもって「純正なレビュー」とみなすのか、そういった基準が表からは見えていないのが現状である。まだ始まったばかりの新対策、今後の動向にも注視が必要だろう。

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Sources: Variety, Forbes

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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