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ファルコン役アンソニー・マッキー、大企業の映画ビジネスは「史上最悪」 ─ ハリウッドの現状に複雑な思い、ストリーミング進出の理由を語る

アンソニー・マッキー
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/48469318202/

マーベル・シネマティック・ユニバースのサム・ウィルソン/ファルコン役で知られるアンソニー・マッキーは、Netflixドラマ「オルタード・カーボン」シーズン2で、初めてドラマシリーズへのレギュラー出演を果たす。『ハート・ロッカー』(2008)や『デトロイト』(2017)など多くの映画で高い評価を得てきたアンソニーは、NetflixやApple TV+など配信サービスのオリジナル映画にも出演し、登場するメディアを広げる傾向にあるのだ。ファルコン役を再演するドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー(原題)」もそのうちのひとつである。

しかしアンソニーは、ハリウッドの現状に対する複雑な心境を隠していない。米Daily Beastの取材で、アンソニーは大企業が経営する映画スタジオのやり方に対して「史上最悪のビジネスモデル」とさえ言っているのだ。

「もはや、フィルムメーカーは映画では成功しません。僕たちが観て育ってきたような、歴史に残る傑作映画はスタジオでは作られない。そういう映画はストリーミング・サービスが作るんです。イベント映画にもないかぎり――『アベンジャーズ』や『スーサイド・スクワッド』、『スター・ウォーズ』でもないかぎり――映画館に足を運んでもらうのはすごく難しいから。[中略]大企業が映画スタジオを買ったことで、“映画を作る”という考え方は死にました。憧れのフィルムメーカーと仕事ができる場所はストリーミング・サービスしかありません。」

ここでアンソニーが指摘するのは、スタジオが小規模・中規模の映画をほとんど作りたがらず、ストリーミング・サービスがその機会を提供しているという状況だ。

「僕はデヴィッド・O・ラッセル(監督)といつか仕事をしたいと思っているし、ほかの監督たちともまたご一緒したいけれど、スタジオに“2,000万ドルください、小規模の映画を作りたい”とは言えない。彼らが作るのは、200万ドルの映画か、1億ドルの映画かのどちらか。史上最悪のビジネスモデルです。これは、映画を使って金を稼ぐ方法なんですよ。だけどまあ、映画の人たちは金の稼ぎ方を知らないから(笑)。」

インタビュアーの「素晴らしい映画は今でも作られ続けていますよね」との言葉に対して、アンソニーは「だけど、映画館で上映されるためだけに作られた作品ではないですよね」と応答。時代や観客の変化に対する分析を述べつつ、人々が劇場に足を運ばなくなった理由については「コストの問題もある」と口にした。

「若い世代は部屋でじっと落ち着こうとはしなくて、動き回っていたい。だからスマホやタブレットで映画を観る。僕らに時間があったのは、携帯電話を持っていなかったから。だから、映画館で女の子といちゃついたり、ポップコーンを食べたりできたけど、今はそんなことしないでしょう。画面上で済むから、映画館に隠れなくても良くなったしね。それに女の子を映画館に連れて行けば、1人あたり20ドル。ポップコーンやナチョスを買ってソーダを2つ付ければ、もう70ドルですよ。僕たちはニューオーリンズの安い映画館で5ドルのポップコーンと2.5ドルのソーダを買って、10ドルしか払わなかったから。(ストリーミングなら)7ドルで済みます。だけど月に2回デートに行けば、映画を観るだけで150ドルですからね。」

一方でアンソニーは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)の劇場公開時、初回上映にて観客に驚かされたというエピソードも明かしている。当時「オルタード・カーボン」の撮影中だったアンソニーは、スタントマンとともに劇場に足を運び、クライマックスで大人たちが嗚咽を漏らす様子を見て「そんな風になるなんて予想していなかった」と述べているのだ。自身がキャプテン・アメリカの盾を手にすることについても「すごい反応がありました」というが、来たる「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」にプレッシャーは感じていないという。

もし失敗するのなら、完全に大失敗すべきですよね。中途半端にコケちゃダメ(笑)。撮影は楽しいですよ。ディズニーが参加してから、マーベル・シネマティック・ユニバースにはたくさんの企画が進んでいますが、チームはとても協力的ですしね。うまくいかないんじゃないかと感じたら話し合えることが素晴らしいんです。何度かつまづいてはいるけれど、完成に向けて全力で走ってますよ。」

ドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー(原題:The Falcon and The Winter Soldier)」はDisney+にて2020年8月に米国配信予定。

Source: Daily Beast

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。