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色のない砂塵と劫火の世界へ ─ モノクロ版『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をウィットネスすべき1つの理由

皆様ごきげんいかがでしょうか。『ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー』だ、『ドクター・ストレンジ』だ、まったくもって時の流れは早く、世間はかびすましいですが、ちゃんと讃えてますか?イモータンさまを。

暇があれば何度見たかわからないソフトを再生、冒頭のマックスがトカゲを食べるシーンで空腹を感じ、イモータン様の背中に生えた腫瘍に震え、トーストが銃に弾込めるシーン欲情し、リクタスの堂々たる最後に涙する、そんな日常をお過ごしのウォーボーイな皆様に朗報です。

2015年の劇場公開当時から存在が噂され、監督のジョージ・ミラー本人をして「最高のバージョン」と言わしめる『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』が、2017年2月8日(水)とうとう日本国内でBlue-ray(2枚組)が発売されます。以前記事で取り上げましたが、このバージョンが収録されたソフトは、一時は国内発売どころか全米発売も未定で、目にすることが叶うか非常に怪しくファンを長らくやきもきさせていたわけです。

さらに喜ばしいことに、このソフト国内発売を記念して、なんとこの <ブラック&クローム>エディションの劇場ロードショーが2017年1月14日より決定。あの『マッドマックス』を、しかも伝説のバージョンで、再び大スクリーン大音量で鑑賞できる、これを朗報と言わずして何と呼ぶのか、年明け早々非常に景気のいい、テンション爆上がりのニュースでございます。

<ブラック&クローム>エディションを観るべき理由

「ブラック&クロームエディションって、要するにただのモノクロ版でしょ?内容同じなんでしょ?今さら観る必要ある?」

もしかしたら、そんなことを思っちゃう、かわいらしいニュークスな読者もおられるかもしれません。そこで筆者の拙い筆致ではございますが、このブラック&クロームエディションの見どころをご紹介したいと思います。

色情報の排除により、主題が明確に

まず、前知識として、この『マッドマックス 怒りのデス・ロード』という映画、非常に長い構想期間を経て制作されたという背景があります。
どのくらい長いかというと、1998年、監督のジョージ・ミラーがLAの交差点を歩いているときにマッドマックス第4弾のアイデアを思い付いたと言いますから、(中断期間はありましたが)実に20年近い期間を費やしているわけです。

そのことが映画にどのような影響を及ぼしたかというと、作品の根幹をなす世界観の設定、これがとてつもなく膨大かつ深遠なものとなりました。主要登場人物や、乗り物などは言わずもがなですが、画面に一瞬しか映らないような背景、台詞がほとんどないようなキャラクター、特に取沙汰されない小道具に至るまで、「なぜそこにあり、なぜその形をしているのか」をちゃんと理由付けされて配置されており、極限まで絞り込まれた台詞とは対照的に、画面から発信される情報量が突出して多い映画なわけです。

フルカラーの通常版をご覧になったことがある方はお判りになると思いますが、本作を鑑賞していると、その情報量の多さに「今、何が写っていて、何が動いているのか」を一瞬見失うような感覚に陥ることがしばしばあります。世界観が豊かな上に動きの激しい映画ならではの、幻惑作用といえますが、モノクロ版は、あえて色の情報を排除することにより、その混乱を避け、監督自身がそのシーンに映している「主題」が観ている側にとても伝わりやすくなっています。

マッド・マックス モノクロ
©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
©2016 WARNERBROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

またモノクロ写真によく言われることですが、人物描写においても、フルカラーよりもモノクロの方が、表情が分かりやすく、キャラクターへの感情移入をより容易にしてくれます。本作の構想期間において、監督のジョージ・ミラーはコンセプトアーチスト達と「ホワイトボードに絵を描く」ことで、イメージを蓄積して世界観の構築をするという手法をとっていました。もともと『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、ホワイトボードの「白」とマーカーの「黒」によって産み出された世界なのです。

語弊を恐れず言うと、通常版で観ることができる極彩色のカラーデザインは、本作の大きな魅力の一つではありましたが、絶対必要な要素ではなかったというわけです。通常版を普通のコーヒーとするなら、ブラック&クロームエディションはエスプレッソ。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の魅力を抽出したこのバージョンは、初見の方にはもちろん、ファンならば必見の版であり、必ずや新しい発見をもたらしてくれると、断言できます。

マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』は、2017年1月14日(土)より新宿ピカデリー他全国公開。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション Blu-ray(2枚組)』は、2017年2月8日(水)より発売されます。

©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
©2016 WARNERBROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

Writer

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アクトンボーイ

1977年生まれ。スターウォーズと同い歳。集めまくったアメトイを死んだ時に一緒に燃やすと嫁に宣告され、1日でもいいから奴より長く生きたいと願う今日この頃。

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