毎週土曜日夜１０時から放送のTBSラジオ『ライムスター宇多丸のウイークエンドシャッフル』通称『タマフル』。皆さんお聞きになられてますか？
名物映画批評コーナー『ムービーウォッチメン』をはじめ、週替わりの特集コーナー『サタデーナイトラボ』では各界の識者を招いて、映画、音楽、アイドル、アメコミ等ポップカルチャーにまつわる愉快で勉強になる特集をしていて、筆者も毎週楽しみに聴いています。
そんなタマフルが以前の『サタデーナイトラボ』で取り上げた特集の中に、お菓子研究家の福田里香さんが提唱する『フード理論』というものがありました。ご存知の方も多いと思いますが、このフード理論を要約すると『創作世界において、フード（食べ物のことです）は、キャラクターの性格、機微を伝えるための装置として機能し、キャラクターの物語上の役割を一目で表すアイコンである』という論です。非常に頷ける理論で、確かに映画の中でも、食べ物を扱っているシーンというのはそこに登場しているキャラクターと併せて非常に印象に残りやすいですよね。（真っ先に思いつくのは宮崎アニメのラピュタでパズーが目玉焼き食べる場面です）

福田氏曰くこのフード理論には『３つの原則』があり（原則なのでもちろん例外もあります）、それは

1. 善人はおいしそうに食べ物を食べる
2. 正体不明者は食べ物を食べない
3. 悪人は食べ物を粗末に扱う

というもので、これもまた腑に落ちやすいまとめ方です。
このように映画に登場する食べ物に注目して鑑賞するのも、非情に面白いと気づかせてくれた名特集でありました。さて、当サイトTHE RIVER.cinemaでよく取り上げるマーベル原作映画の中でも、よく食べ物が登場します。フード理論原則１の『善人はおいしそうに食べ物を食べる』の延長上にある演出だと思いますが、出て来る食べ物がわれわれ日本人にとって馴染みのない食べ物が多く、見ていて『それ何？どんな味するの？』のと、余計なところで引っかかってしまいます。そこで、今回は特に記憶に残った３つの謎の料理を、調査した結果をご報告いたします。

シビルウォー：キャプテンアメリカ『パプリカシュ』

物語中盤で、ヴィジョンが作っている料理です。
ワンダを元気づけようとしているところから考えて、ワンダの出身国の郷土料理のような演出ですが、クロアチア料理です。身も蓋もない言い方をすると『チキンのトマトクリーム煮込みパプリカ風味』。メインの具材はチキンが定番の様ですが豚の胃袋を使ったりすることも多いようです。サワークリームを使うので、ボルシチに少し似た味わいかもしれません。パプリカとは、辛みのない唐辛子のことです。

アベンジャーズ『シュワルマ』

劇中、トニー・スタークがシュワルマのおいしい店があるから後でみんなで行こうと言い、エンドクレジット後、疲れ切ったアベンジャーズが無言でモソモソ食べているアレです。
皆さんドネルケバブはご存じですよね？鶏肉や羊肉をロール上に成型して遠赤外線で炙り、削ったスライスをピタパンに野菜とソースと一緒に挟んで食べるあれです。トルコではドネルケバブと呼ばれている食べ物が、中東やインドではシュワルマと呼ばれています。

デッドプール『チミチャンガ』

デッドプールの大好物として知られるチミチャンガ。劇中登場するか未確認ですが、予告編に登場したので。
これはアメリカ南西部、メキシコなどで食べられている『揚げたブリトー』のことです。トルティヤに、米、チーズ、干し肉、揚げた豆などを包んで長方形にして油で揚げたもので、昔はアメリカの本当に一部の地域でしか食べられていなかった料理なんですが、ここ数十年でアメリカ中に広がり、さらにデッドプールが原作コミックの中で何度も『チミチャンガチミチャンガ』連呼するので、世界的に有名になってしまった食べ物です。

劇中に登場する食べ物に注目しながら鑑賞するのも、またひとつの楽しみですね。