コッポラ最新作『メガロポリス』配給先探しに難航 ─ 巨匠監督の待望新作なのに、スタジオ各社なぜ消極的?

『ゴッドファーザー』シリーズの巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督が40年温めてきた待望の新作『Megalopolis(原題)』の上映会が米大手スタジオの幹部らに向けて行われた。ところが米The Hollywood Reporterは、同作が配給スタジオ探しに「苦戦している」と伝えている。
本作は、大災害に見舞われたニューヨークを舞台に、ユートピアとして街を再建しようとする建築家を主人公とする物語。アダム・ドライバーをはじめ、ナタリー・エマニュエル、フォレスト・ウィテカー、ローレンス・フィッシュバーン、ダスティン・ホフマン、ジョン・ヴォイト、シャイア・ラブーフといった豪華な面々が出演していることでも話題だ。
現地時間2024年3月28日に米ロサンゼルスにあるIMAXシアターで実施された上映会には、ユニバーサル・ピクチャーズのドナ・ラングレーやソニー・ピクチャーズのトム・ロスマン、Netflixのテッド・サランドスといったハリウッドの大手スタジオのトップたちも出席。大スクリーンでの公開を強く望むコッポラにとって、配給先のスタジオを決める大事な場となった。
ところが上映会に参加した情報筋によれば、各大手スタジオは配給権獲得に消極的だという。すでにユニバーサル・ピクチャーズ傘下のFocusは入札から手を引いたとも伝えられている。
コッポラにとって柊生の大作になるであろう本作には、1億2,000万ドルの製作費が投じられた。コッポラは製作費の一部を自己負担するために所有していたワイナリーを売却しており、身銭を切っての挑戦となる。コッポラ自身、このたびの上映会で契約がすぐに締結されるものだと思っていたと情報筋の1人は証言している。
別の情報筋によると、「誰もがフランシスのことを支持しており、懐かしさを感じている」というが、「ビジネス的な側面」を懸念しているとのこと。ある配給関係者は「この映画を位置付ける方法はない」と語っており、リスクが大きいゆえに各スタジオが慎重な姿勢であることが窺える。なお、コッポラは配給先に、アメリカ国内で4,000万ドル、海外で8,000万〜1億ドル相当のマーケティング費用を捻出してもらうことを期待しているという。
とある配給会社のベテランは、配給費用に加えてマーケティング費までかなりの額がかさむとなると、「どの配給スタジオも資金を提供したいとは思わないだろう」と私見を述べている。別のスタジオの責任者に至っては、「見ていて悲しくなりました」としながら、「マーケティング費を投入したら、損失は確実。コッポラは監督としてのキャリアをこう終えるべきではない」と冷笑的に述べた。一方で、前者はコッポラがマーケティング費用を「自ら肩代わりするというのであれば、もっとたくさんの関係者が興味を示すであろう」とも言い加えた。
The Hollywood Reporterによれば取材に応じた人のほとんどが、物語の難しさから商業映画として幅広い観客にするのは「非常に厳しい」との見解を示したとのこと。一方で、あるスタジオ創設者は、映画を「ものすごく気に入った」「大作」「真の生活がある」と絶賛。「“商業的”の定義はなんでしょうか。『ブレードランナー』のような映画は、公開初週末よりもはるかに商業的な作品になったじゃないですか」と語ったという。
なお米Deadlineによれば、本作は2024年5月17日に第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でワールドプレミアを迎えることが決定したとのこと。