みんな大好きマイケル・ベイ! 爆発をこよなく愛する男の魅力に迫る ─ 『トランスフォーマー/最後の騎士王』

アクション映画の歴史において、マイケル・ベイの登場はまさに“革命”だったと思う。もちろん、これまでにも良質なアクション映画は山とあるが、そこから初監督作である『バッドボーイズ』(1995)でいきなり1つ抜きん出てしまったのがマイケル・ベイだ。コメディアンのマーティン・ローレンスとラッパーであるウィル・スミスを主演に迎え、凸凹コンビの“刑事モノ”をキレのある演出とスピーディーな展開で、映画の中で生き生きと躍動させた。スタイリッシュな映像表現は監督第1作目の時点ではっきりと発揮されていて、ミュージックビデオを数多く手掛けてきた監督だけあってポップミュージックをバランスよく取り込み、若者にフィットするエンタメ作品へと仕上げたのだ。

マイケル・ベイの監督作品群をここで列挙すると、『バッドボーイズ』『ザ・ロック』(1996)『アルマゲドン』(1998)『パール・ハーバー』(2001)『バッドボーイズ2バッド』(2003)『アイランド』(2005)『トランスフォーマー』シリーズ〈無印(2007)、「リベンジ」(2009)、「ダークサイド・ムーン」(2011)〉、『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』(2013)『トランスフォーマー ロストエイジ』(2014)、『13時間 ベンガジの秘密の兵士』(2012)、『トランスフォーマー 最後の騎士王』(2017)となる。映画ファンの多くがおそらく、日本国内で特大ヒットとなった『アルマゲドン』辺りで「マイケル・ベイはヤバい」と認識したのではないだろうか。

爆破スティック・アーティスト

彼の恐ろしいところ、いや魅力の1つに“爆発”があるが、目に見えてその規模が作品を追うごとに大きくなっているのが特徴だ。『バッドボーイズ』ではラストの飛行場で爆発付きの派手なドンパチを繰り広げた程度だったが、『ザ・ロック』では序盤にサンフランシスコでカーチェイスを繰り広げて名物のケーブルカーを吹っ飛ばし、アルカトラズ島を戦場に変え戦闘機による空爆まで行った。『アルマゲドン』に至っては映画開始と同時に隕石を地球にぶつけ、隕石雨が摩天楼に降り注ぎ、上海・パリを崩壊させ、宇宙に飛び出し核爆発まで起こして見せた(そのおかげで地球は救われた訳だが)。ちなみにパリ崩壊シーンは予算が浮いたからという理由だけで大地ごと盛大に吹っ飛ばしているのでやりたい放題である。作品を重ねるごとにマイケル・ベイのテンションがハイになっているのかは分からないが、少なくとも“災害”の規模のステッ プアップが階段でいうと二段どころではない、三、四段飛ばしぐらいのスケールで大きくなっている。トランスフォーマーシリーズになると、「最後の騎士王」に至るまでもはや全編が爆発に次ぐ爆発でいささかマイケル・ベイの精神状態が心配にもなる。

ド迫力すぎるカーチェイス

次に挙げられるのが、これまでにない迫力を体感できる豪快なカーチェイスだ。マイケル・ベイは「車をカッコよく撮らせたら世界一」と言っても過言ではない監督だが、ほぼ毎作登場するカーチェイスシーンでは撮影用特殊車両を製造してまで挑んでいる。これまで多くの映画のカーチェイスシーンは、離れた地点から固定あるいは並走して撮る手法が取られてきたが、マイケル・ベイの“視点”は常にカーチェイスのど真ん中にある。特に『アイランド』や『バッドボーイズ2バッド』ではクラッシュする車の間をカメラが潜り抜けていくという荒技を披露。横転を繰り返す車に観客をぶつけに行くという“ドS”ぶりを見せつけている。

カーチェイスに限らず、マイケル・ベイは常に独創的な画作りを追求している。俳優を中心にして円を描くように捉えたと思ったら、その円をさらに拡大して隔たりのある空間すら360度ぐるりと周りながら1カットで見せきってしまう。『バッドボーイズ2バッド』で、カメラが鍵穴や壁の穴を潜りながら壁で隔てられた2部屋を1カットで見せた銃撃戦には驚かされた。爆発の規模は大きく芸は細かい、それがマイケル・ベイ。スローモーションも要所で見せ、『ザ・ロック』の発煙筒シーンや『アルマゲドン』の宇宙への出発シーンに感情を揺さぶられた観客は多いはず。何を隠そう筆者もしょっちゅうマネたりしている。話を戻すが、マイケル・ベイはそのこだわりぬいた画作りが活きて女優を撮るのもずば抜けて上手い。映画監督デビュー前のCMディレクターとしての感性によるものが大きいと思うが、やはり『トランスフォーマー』でミーガン・フォックスのセクシーさを最大限に映し出し、彼女を一気に表舞台に引っ張り上げた功績も大きいと思う。

マイケル・ベイはどこへ行く

荒唐無稽な作品を連発しつつも、“撮りたい作品”へのこだわりも強く、日本では未公開となってしまった『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』『13時間 ベンガジの秘密の兵士』はまさにそんな作品といえる。大作監督のイメージが強いが規模的な意味での「小品」も積極的に手がけるようになってきたことから、マイケル・ベイのいう「大作はもうこれが最後」「トランスフォーマーを監督するのはこれが本当に最後」という言葉もあながち「最後最後詐欺」ではなくなる可能性もあるかもしれない。いずれにせよ、マイケル・ベイの魅力がそれで削がれることはないはずだ。作品の評価は低くても映画人としての裁量は桁違いで、『トランスフォーマー リベンジ』は脚本家組合のストライキに巻き込まれたにも関わらず、そしてあれだけの規模の作品ながらたった1年で完成させて予定公開日に間に合わせた実績は、作品とは別にマイケル・ベイの評価を高めた。もともとメガホンを使って怒鳴りまくり撮影をスピーディーにこなしていく“鬼監督”として有名で、スタッフたちから仕返しに大量のメガホン(作り物)を投げつけられるサプライズがあったほどだ。それでも監督として、プロデューサーとして映画を大ヒットに導いているのは紛れもない事実。これからの作品にも大きな期待が寄せられる。

余談だがマイケル・ベイは『バッドボーイズ2バッド』や『トランスフォーマー』など自身の作品にこっそりと、或いは堂々とカメオ出演しているのでその姿を探すのも楽しみの一つかもしれない。

About the author

映画・映画音楽ライター。愛知県出身。

竜巻映画『ツイスター』で映画に覚醒。映画音楽に魅了されてからはサウンドトラックも買いあさり、映画と映画音楽漬けの日々を送る。

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