【インタビュー】『ミッシング・リンク』はなぜ野心的なのか ─ ヒュー・ジャックマンからの直電話に監督のお母さんもビックリ

はい。アイデアはノートにガシガシ書き込んでいました。こんなにあります。(ハードカバーの分厚いノートブックを3冊取り出して見せてくれる。)こういうノートが山程、ホントに山程あります。何年もかけてアイデアをぎっしり書いているから、数年後に見直して、「これは良いな」と思うものをまた1ヶ月くらいかけて書いて、煮詰まったらまた別のを書く、という感じ。ノートのおかげで、製作中も気持ちがクリエイティブに動きました。
──実はトラヴィス・ナイトさん(スタジオライカのCEOでプロデューサー、『KUBO』では監督を務めた)にも『バンブルビー』で来日された時にお会いさせていただいているのですが、『バンブルビー』は彼にとって初の実写映画で、「常に居心地の悪いところに行くようにしている(=常に慣れないことに挑戦し続ける)」と教えてくれました。あなたにとって、今作で大変だったチャレンジは何でしたか?
今作のスケールですね。脚本を書いている時は、ストップモーション・アニメの脚本を書いているって感覚はなくて、ただ“映画の脚本”を書いているって感覚でした。実写になるかも分からなかったですし。そうしたらスタジオが(ストップモーションでやるように)薦めてくれた。僕を安全地帯に閉じ込めるようなことをせず、可能性を制限したくなかったんでしょうね。だから、もしストップモーションでやるという前提で脚本を書いていたら、全然違う内容になったと思いますよ。
そういうわけで、脚本を書き始めたその初日から、ストップモーションでやるのは不可能なことを組み立てていたんですよね。あらゆるルールを打ち破る必要があった。難しいことでしたが、『パラノーマン』『ボックストロール』(2014)や『KUBO』で、たくさんの技術やアイデアを試していたし、作品を追うごとにどんどん野心的になっている。だから、やれば出来ると信じました。
──不可能に思えることでも、見事にやってのけた。スタジオライカの作品を鑑賞するといつも思うのですが、あなた方はどうしてそんなにクリエイティブなのですか?スタジオの皆さん、どんな雰囲気で、どんなカルチャーなんでしょう?
クリエイティブなスタジオでして、働いている人たちは全員、自分たちでこの(ストップモーションアニメという)アートの形を前進させるんだと興奮しているんです。ストップモーションアニメって、ある程度、ノスタルジックなもの、過去のものとして見られるでしょう。でもスタジオの全員、“ストップモーションはそれだけじゃない!”と思っています。
ストップモーションの歴史を振り返ると、レイ・ハリーハウゼンの作ったモンスターたちや、『スター・ウォーズ』のウォーカーや宇宙船、クリーチャーたちがあります。僕らがやりたいのは、こういった古いアートの形と共に走って、前に進むこと。ストップモーションが大好きで、滅びてほしくないと願っている人たちが集まっているんです。どうにかしてストップモーションを維持して、生かし続けたいんだという想いです。
この業界は狭くて、従事している人たちもそう多くないんです。同業他スタジオで働いている人にもよく会いますし。ストップモーションに情熱を注ぐ人たちのコアなグループがあって、そういう人たちが集まっているんです。それに僕らにはトラヴィスがいる。見たこともないような面白い物語を作りたがっている人物です。
スタジオの可能性が無限で、次にどんなものが作れるか分からない、っていうところに、僕たちは常にワクワクしているんです。
──そんなライカで仕事をしていて、今までで一番嬉しかった瞬間は?
おぉー。そうですね、僕は『コララインとボタンの魔女』(2009)でも仕事をしていたのですが、『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(2012)の脚本の最初の30ページをトラヴィス・ナイトに渡した時に、オフィスに呼ばれて「次の映画はこれにしたい。君が監督をやってほしい」って言ってもらえた時ですね。正直、びっくりしました。自分のオフィスに戻って、一時間くらい放心状態になりました。それが一番の思い出です。
──で、二番目はヒュー・ジャックマンから電話がかかってきた時ですよね(笑)。
ハハハ(笑)。そうそう(笑)。

──それでは最後に、日本の観客にメッセージをお願いします。日本には、アニメ作品のファンが沢山いますから。
この作品には、僕たちの愛が詰まっています!大スケールのアクション映画、ジェットコースターのような映画を作ったつもりです。美しい世界の大冒険がお楽しみいただけますよ。そして、物語のテーマは、正反対なふたりの「友情」。特に今は世の中がこういう状況ですから、そこから抜け出して素晴らしい旅を楽しんでいただければ。どうぞお楽しみください!