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どうなる『ゴジラ VS コング』、世紀の決戦せまる「モンスターバース」完全ガイド

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』(2014)は、日本の怪獣映画シリーズ『ゴジラ』をシンプルにリメイクしたものではない。ここにはより大きな、過去およそ60年間にわたって日本映画が再現できなかった巨大な企みがあるのだ。ワーナー・ブラザース&レジェンダリー・ピクチャーズによる一大企画「モンスターバース」、その全貌を振り返りながら未来図を予測する。

モンスターバース(Monster-Verse)

そもそも「モンスターバース」とは何かを紐解いていく前に、“バース”とは何かというところから始めなければならない。『アベンジャーズ』(2012)の大ヒット、マーベル・シネマティック・ユニバースの成功以来、ハリウッドでは、複数の映画が同じ世界観を共有する「ユニバース」の構想が特に散見されるようになった。

『アベンジャーズ』後に登場した“ユニバース”のうち、代表的なものには、DCコミックスの映画版からなる「DC映画ユニバース」、ソニー・ピクチャーズによる『スパイダーマン』主体の独自ユニバース「ソニー・ピクチャーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクター」、ジェームズ・ワン監督が仕掛ける『死霊館』ユニバース、残念ながら『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(2017)の一作かぎりで凍結された「ダーク・ユニバース」がある。『ハリー・ポッター』シリーズの世界観を拡張する「魔法ワールド」もこれに類するものだ。「モンスターバース」もそのうちのひとつである。

「モンスターバース」の特徴は、その名の通り、“モンスター”を中心としたユニバースであるところ。東宝・ワーナー・レジェンダリーの三社が協働し、ひとつの世界観に複数の怪獣やモンスターが共存する作品群を構築しているのだ。ただし、3社は当初からユニバース化を告知していたわけではなく、最初は個々の企画として発表されていた。第1作『GODZILLA ゴジラ』の企画が始動したのは2010年3月のこと。その後、2014年に第2作『キングコング:髑髏島の巨神』が始動、翌2015年には『ゴジラ VS コング(原題:Godzilla vs Kong)』の製作決定とともにユニバース計画の始動が告知された。「モンスターバース」という名称が発表されたのは2017年1月である。

『GODZILLA ゴジラ』(2014)

GODZILLA ゴジラ
© LFI/Photoshot 写真:ゼータ イメージ

「モンスターバース」第1作は、1998年版『GODZILLA』以来、実に16年ぶりのハリウッド版となる『GODZILLA ゴジラ』。1954年製作、初代『ゴジラ』に敬意を払った造形をもって、まさしくハリウッドの巨大資本で『ゴジラ』を再解釈するとこうなるという一作に仕上がった。

1999年、日本の原子力発電所にて謎めいた地震が発生。核物理学者のジョー・ブロディは真相をつかもうとするが、その矢先に大地震が起こり、発電所は倒壊する。それから15年後の2014年、ジョーの息子であるフォードは、軍人として世界中を飛び回る毎日を送っていた。ある日、疎遠になっていた父親が日本で逮捕されたことを知る。身柄を引き取るため日本を訪れたフォードに、ジョーは「政府は何かを隠している、発電所には何かがある」と陰謀論を語った。15年前の事故現場である原子力発電所には、いまや正体不明の巨大な物体が出現しており、施設を管理する特務研究機関・モナーク(MONARCH)の芹沢猪四郎博士は、真相に近づきつつあったジョーの主張に耳を傾ける。しかしその時、15年前と同じように大地震が襲いかかり……。

監督は『モンスターズ/地球外生命体』(2010)で注目された新鋭ギャレス・エドワーズ。長編第2作にしてハリウッドの大作映画、しかも『ゴジラ』のリメイクに抜擢された。ドキュメンタリー作品に携わってきた背景ゆえだろうか、あくまでも人間の目線で物語を展開させたり、怪獣同士の戦闘はなるべくお預けにしたりと、独自のアプローチをもって本作ならではの“ゴジラ映画”を形にしてみせた。のちに『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)を手がけている。

登場する怪獣はゴジラ、ムートー(M.U.T.O.)。出演はアーロン・テイラー=ジョンソン、渡辺謙、エリザベス・オルセン、ジュリエット・ビノシュ、サリー・ホーキンス、デヴィッド・ストラザーン、ブライアン・クランストンら。

『GODZILLA ゴジラ』徹底解説はこちら

『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)

キングコング:髑髏島の巨神
©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

アメリカ出身の人気モンスター・キングコングを新たな視点で描き直した『キングコング:髑髏島の巨神』。キングコング映画としては、1933年製作『キング・コング』から始まり、日本で製作された作品も含めれば8作目となる。

物語の舞台は、アメリカがベトナム戦争を撤退した直後の1973年。特務研究機関・モナークの研究者ランダは、南太平洋にある未知の島「髑髏島」の調査を政府に要請。ベトナム帰還兵のプレストン・パッカード大佐らを護衛に、元英軍の傭兵ジェームズ・コンラッド、戦場カメラマンのメイソン・ウィーバーらとともに島を訪れる。一行は地質調査の名目で島への空爆を開始するが、そこに怒り狂ったコングが現れ、チームは散り散りになってしまう。仲間と合流するために各自は移動を開始するが、島には見たこともないモンスターたちが生息していた。そして彼らの前に、太平洋戦争のさなか髑髏島に不時着し、以来この地で生きてきたハンク・マーロウ中尉が姿を見せる。

キングコング:髑髏島の巨神
©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

「モンスターバース」第2作にして、前作『GODZILLA ゴジラ』とは大きく趣を異にする本作は、戦争映画の名作『地獄の黙示録』(1979)にオマージュを捧げながら、キングコングの“青年期”を描く。監督のジョーダン=ヴォート・ロバーツは、前作のギャレス・エドワーズ監督と同じく、長編デビュー作である青春映画『キングス・オブ・サマー』(2013)に続いての大抜擢。日本のポップカルチャーを敬愛するロバーツ監督は、『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『AKIRA』「新世紀エヴァンゲリオン」などへのオマージュをありったけ詰め込み、かつてない形で「キングコング映画」を更新した。

主な登場怪獣はコング(キングコング)、スカルクローラー。出演はトム・ヒドルストン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ブリー・ラーソン、ジン・ティエン、ジョン・C・ライリー、MIYAVIら。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

「モンスターバース」第3作であり、『GODZILLA ゴジラ』の正統なる続編として製作された『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、前作が抑制の効いた怪獣映画だったのに対し、日本の「平成ゴジラVSシリーズ」を彷彿とさせる仕上がり。ゴジラのほか、モスラ・ラドン・キングギドラという『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964)と同じ顔合わせが実現した。

『GODZILLA ゴジラ』から5年後。特務研究機関・モナークは、怪獣の存在を長らく隠匿してきたがゆえに非難の的となっていた。世界各地で怪獣(タイタン)が発見され、“怪獣は人類の敵である”との世論が高まる中、モナークは各地に前哨基地を設置。そんな中、中国でモスラを研究していたエマ・ラッセル博士と娘のマディソンがテロリストによって拉致された。芹沢猪四郎博士は、エマの開発した装置「オルカ」が狙われていると推測する。その装置を使えば、怪獣との交流や、あるいは怪獣を操ることも可能なのだ。エマの元夫であるマークは元妻と娘を救出すべく動き出すが、世界各地で怪獣たちが次々と目覚め、世界の異変を悟ったゴジラも眠りから醒める。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

監督は『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズから、『X-MEN2』(2003)『スーパーマン リターンズ』(2006)脚本家のマイケル・ドハティにバトンタッチ。低予算ホラーの監督としても活躍してきたドハティは、ジャンル映画への偏愛、そして本気すぎる東宝怪獣映画愛を前面に押し出し、これでもかと詰め込んだ。ゴジラを“神”と見る視点を強調し、神話からインスパイアされて怪獣たちを描き直した本作では、宗教画を思わせる美しいビジュアル、真正面から怪獣同士をぶつける戦闘演出のオンパレードで日本の怪獣映画ファンをも驚愕させる。伊福部昭・古関裕而による音楽の採用、1954年版『ゴジラ』への敬意と偏執もポイントだ。

主な登場怪獣はゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラ。出演はカイル・チャンドラー、ヴェラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン、渡辺謙、サリー・ホーキンス、チャン・ツィイー、チャールズ・ダンスほか。

『ゴジラ VS コング』(2021)

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でタイトル通り“怪獣王”の貫禄を見せつけたゴジラと、『キングコング:髑髏島の巨神』の1970年代から成長を遂げたキングコングが、2021年公開『ゴジラ VS コング(原題:Godzilla vs Kong)』で激突する。2018年11月、米ワーナー・ブラザースは以下の「あらすじ」を発表した

「怪獣たちが地球を闊歩する時代。人類による未来を賭した戦いが、ゴジラとコングの決戦に繋がる。地球最強の力ふたつが激突する、歴史に残る壮大な戦いは避けられないのだ。特務研究機関モナークが知られざる土地での危険な任務に挑み、タイタンの起源を暴こうとするなか、ふたつの生物を、善悪にかかわらず地上から永遠に消し去ろうと企む人々も存在し……。」

かつて東宝映画『キングコング対ゴジラ』(1962)で実現した決戦が、約60年の時を超え、ふたたびスクリーンに甦る。「モンスターバース」という試みは、まずはこの“世紀の一戦”に集約されるのだ。1962年の対決時は勝敗の決着がつかなかったが、監督のアダム・ウィンガードは「勝者を決めたい」と宣言。怪獣バトル映画としてエンターテインメント作品に仕上げることを誓いながらも、『ゴジラ』シリーズの原点が第二次世界大戦時の原爆投下にあることをきちんと踏まえると約束している

脚本は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのテリー・ロッシオが主に執筆し、前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』からマイケル・ドハティ&ザック・シールズも参加。ストーリーの詳細は謎に包まれているが、証言によれば「2つの物語が同時に展開する」「作品の核は2人の若い女の子」だという。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』より © 2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

出演者には『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』からミリー・ボビー・ブラウン&カイル・チャンドラー、チャン・ツィイーが続投。新キャストとして『ターザン:REBORN』(2016)のアレクサンダー・スカルスガルド、『アイアンマン3』(2013)のレベッカ・ホール、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)のブライアン・タイリー・ヘンリーらが加わり、日本からは小栗旬が参戦する。

ところで怪獣王たるゴジラに対し、いうなれば“巨大ゴリラ”であるところのコングに勝ち目はあるのか。脚本のドハティは「初登場した1970年代から、コングがどれだけ大きくなったのかは誰も知りません。それに、彼は非常に賢いですから」と述べ、その成長ぶりと知性の高さを示唆。因縁の対決については、「非常に攻撃的で力強く、縄張り意識の強い動物が2匹いて、両方とも自分こそ全生物の支配者にふさわしいと思っているとしたら……一緒にお茶を飲むだけでは終わらなさそうですよね」とコメントした。

監督のアダム・ウィンガードは、『サプライズ』(2011)や『ザ・ゲスト』(2014)など低予算のスリラー映画で非凡なる才覚を顕したフィルムメーカー。初の大作映画、初の怪獣映画でどんな実力を見せつけるのか。本人は「キングコングとゴジラの対決を観るために、できるだけ大きなスクリーンを探しておいてください!」と自信をにじませている。

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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