【モチーフで映画を読む】動物編・犬&猫に注目して『マトリックス』『ジョン・ウィック』『抱きたいカンケイ』を観ると?

皆さんは映画を読み解くとき、何に注目しているだろうか。主人公の動作や表情はもちろん、時代背景や音楽の曲名などを手がかりにする人もいることだろう。しかし「歴史はちょっと苦手」という方や、「音楽には明るくない」という方も当然いるはずだ。

しかし、より簡単に映画を読み解くカギが存在する。“モチーフ”だ。本記事では「犬」「猫」を例にとり、映画を読み解くカギとして“モチーフ”に注目する方法をご紹介しよう。

【注意】

この記事には、映画『抱きたいカンケイ』『マトリックス』『マトリックス レボリューションズ』のネタバレが含まれています。

洋画で「犬」が登場する意味

西洋美術で「犬」とは、女性の傍らで“貞節”を、また一般的には“忠誠”を意味するモチーフだ。洋画も西洋美術の発展したものの一つだと考えると、この考え方は、そのまま洋画を読み解くことに応用できるだろう。

例①:『抱きたいカンケイ』終盤

ナタリー・ポートマン主演で、若者の性生活をコメディタッチで描いた本作では、主役のカップル、アダム(アシュトン・カッチャー)とエマ(ナタリー・ポートマン)以外にも、複数組のカップルの成立過程が存在する。その複数組のカップルのうちの一組が、アダムの父親であるアルヴィンと、その元カノのヴァネッサだ。この二人が破局したことを示すために、犬が活躍する。

アルヴィンが入院したことを機に、二人は破局。ヴァネッサは、病院から出てきたところ(おそらく離婚交渉の話がついたのだろう)で、たまたまアダムに遭遇する。「パートナーが危篤になった時に、看病するどころか別れ話を切り出すなんて、キミはひどい女だな」となじるアダムに、ヴァネッサはアルヴィンと二人で飼っていた犬を手渡す

前述の通り、犬は女性の傍らで「貞節」、一般に「忠誠」を示す。「犬を人に手渡す」、すなわち間接的に「犬を手放す」というという行動は、ヴァネッサが内面に抱えていた「貞節」や「忠誠」を捨てることを象徴する行為だと解釈できないだろうか。

例②:『ジョン・ウィック』に描かれた犬

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(Photo by David Lee)© 2014 Summit Entertainment http://www.imdb.com/title/tt2911666/mediaviewer/rm918603008

キアヌ・リーブス主演のアクション映画『ジョン・ウィック』では、犬が大きな役割を果たしている。

元・最強の殺し屋であるジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)は、最愛の妻と幸せに暮らしていたが、妻が病死。ジョンのことを案じた妻は、子犬をジョンのために手配しており、ジョンはその子犬に生きがいを見出す。しかし、ある日、ジョンの車を狙っていた強盗が家に押し入り、車を奪った上、子犬を殺してしまう。子犬を殺されたジョンは、再び裏社会に身を投じていく……。

西洋美術のモチーフの考え方を応用すると、この映画における犬の役目は「妻の形見」というだけではなく、「妻の、夫に対する変わらぬ愛(≒貞節)」の象徴だと解釈することができるだろう。

洋画で「猫」が登場する意味

犬が「貞節」や「忠誠」というプラスのイメージを持つのに対して、猫はマイナスのイメージを持っている。「猫」は、西洋美術において「不幸」「悪魔」の意味を持つとされるのだ。猫派の筆者としては信じたくないが、昔のヨーロッパの画家はそんな価値観を持っていたようである。

それでは早速、猫が「不幸」「悪魔」の意味合いで映画に登場した例を見ていこう。

例:『マトリックス』デジャヴュのシーン

ウォシャウスキー兄弟(姉妹)監督、キアヌ・リーブス主演のSFアクション大作『マトリックス』にも猫が登場する。

主人公のネオは大企業で働く天才プログラマーだったが、この世界が実は仮想現実の世界「マトリックス」だと告げられ、救世主になることを決意する。それでもネオは「ほんとにオレが救世主でいいの?」という疑問を抱えていて、その疑問を解消するため、預言者オラクルに会いに行くのだ。

オラクルからお告げを受けた後、マトリックスから現実世界に戻るポイントに向かっていたネオは不思議な光景を目にする。黒猫が廊下を、まったく同じ動作で2回通り過ぎたのだ。

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©1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. http://matrix.wikia.com/wiki/File:Deja_Vu.jpg

疑問に思ったネオが仲間にそのことを伝えると、仲間は「コードが書き換えられたときに起こる現象だ」と言って足を速めた。その言葉通り、SWATチームが自分たちを追いかけるよう、コードが書き換えられていた……。

ここで注目すべきなのは、通り過ぎたのが猫だったことだ。この場面は、意味だけなら“清掃員が2回同じ素振りで会釈しながら通り過ぎる”という演出でもよかったはずである。そこを敢えて猫にしたところに、「これから主人公に不幸が訪れますよ」ということを伝える制作者の意図が感じられる

また『マトリックス』シリーズには、猫がもう一回登場する。

『マトリックス レボリューションズ』のラスト、ネオによってスミス全滅し、少女(サティ)が横たわる姿に書き換えられるシーンでも、猫が通り過ぎて画面から消えるのだ。これは、「不幸の象徴」である猫が去っていったことで、不幸が消えたという意味だと解釈できる。

とはいえ筆者としては、猫が不幸の象徴として使われるケースは少ないように思われる。もしかして、筆者のような猫派の人が西洋でも増えているからだろうか。あるいは、猫が撮影に向いていないという実務上の原因だろうか……。

以上、「犬」と「猫」というモチーフが西洋でどんなことを意味するかという点に注目して、それぞれ映画のシーンを解説した。映画に込められた細かいニュアンスやサインを読み解くのは非常に楽しいことだ。もっとも、製作者側に特別な意図がない場合もあるので、十分注意は必要だが……。こんな映画の楽しみ方もある、ということを知って頂ければ幸いである。

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[参考文献]宮下規久朗『モチーフで読む美術史』(2013年、ちくま文庫)
Eyecatch Image: http://www.imdb.com/title/tt2911666/mediaviewer/rm918603008 (Photo by David Lee) © 2014 Summit Entertainment

About the author

2000年生まれの高校生。天下の台所で、映画愛を叫ぶ。

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