世界最大の球体型シアターでアロノフスキーが初作品 ─ かつてない没入感、宇宙からも視認できるLEDディスプレイ

2023年10月、米ラスベガスに世界最大の球体型没入シアター「MSGスフィア」が完成する。超巨大なプラネタリウムのようなこの施設、かつてない解像度のLEDディスプレイや、風・香りなどの4D演出によって、極めて高度な没入体験が可能になるようだ。ここで上映される初の映像作品を、『ブラック・スワン』(2010)や『ザ・ホエール』(2023)などのダーレン・アロノフスキー監督が手がける。いったい、どんな体験が可能になるのか。
この次世代型シアターは2022年4月に詳しい概要が発表されたもの。高さ336フィート、幅516フィート、最大2万人を収容でき、完成すれば世界最大の球体建造物になる。建設費は21億7,500万ドル(およそ3,100億円)の見積だ。
球体の内側には16万平方フィートのLEDディスプレイが張られる。外側にも58万平方フィートのLEDディスプレイが取り付けられることで、この球体建造物は宇宙空間からも視認可能の輝きを放つという。LEDディスプレイは16K×16Kの解像度に対応するとのことだ。
映像ばかりでなく、カスタム空間オーディオシステムなる仕組みによって、風や香りといった4D演出も組まれるほか、全ゲストとのコネクティビティー(相互接続性)も用意されるという。実施されたデモを体験した人々は、まるで自分が本当に“そこ”にいるようだと驚愕したとのことだ。
これまでにない高度な没入体験が楽しめるとして、コンサートなどのライブ・イベントや、ゲーム、そのほか全く新しい形の娯楽が提供されるというMSGスフィア。その栄えある最初のプロジェクトを手がけるのが、ダーレン・アロノフスキー監督だ。
作品は、“地球からの絵葉書”を意味する『Postcard From Earth(原題)』という、SF的でもありロマンチックでもあるようなタイトル。「映画とは、ファンタジーや現実逃避、別の場所や時間、あるいは他人の主観的体験など、観客を日常生活から連れ出す没入型のメディアです」と、アロノフスキーは米The Hollywood Reporterに話している。「このスフィアは、その没入感をさらに高める試みです」。
アロノフスキーが手がける『Postcard From Earth』は、インドやイタリア、バハマの海中など世界各地で撮影された映像を用いた、物語とドキュメンタリーの両要素を持つ作品。「私たちの子孫が共通の故郷を振り返りながら、私たちの未来へと深く入っていくSF旅」と説明されている。撮影は『ザ・ホエール』に至るまでアロノフスキー作品を共にしているベテラン、マシュー・リバティークが行い、アンドリュー・シュルキンドが撮影監督を務めた。
なおこの作品は、Big Skyと呼ばれる新たなカメラシステムを使用する最初の作品にもなる。MSGスフィアのために特注で開発されたこの一眼カメラは、316メガピクセル、3インチ×3インチのHDRイメージセンサーが搭載され、18K×18Kの映像を最大120フレーム/秒で撮影できるという。これはアロノフスキーをもってして「信じられないほどの高解像度で、視野も広い」と言わしめるものでありつつ、「課題も多くある」とのこと。
『Postcard From Earth』は現在ポストプロダクション中で、日々カメラの新たな活用方法を学びながら進めているところだという。「つい最近はマクロレンズの撮影方法がわかったところ。枝の上でカマキリが休んでいるところを撮影したのですが、その映像を20階建のビルの高さで投影したらどんな感じか、想像してみてください」。
『Postcard From Earth(原題)』は、MSGスフィア初の作品として2023年10月6日に上映予定。チケット価格は49〜199ドル。世界的ロックバンドU2もここでコンサートを行う。