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『ノー・アザー・ランド』監督、イスラエル軍の拘束から解放される ─ 暴行受け病院で治療

ノー・アザー・ランド 故郷は他にない
Photo by Maya Dehlin Spach/Getty Images

映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の共同監督ハムダーン・バラール氏が、イスラエル軍の拘束を受けていたが、現在は解放されたことがわかった。同じく共同監督のユヴァル・アブラハーム氏が報告した。

報道によると、バラール氏の拘束事件は3月24日(月曜日・現地時間)の夜間に発生。ヨルダン川西岸のマサーフェル・ヤッタ地区にあるスシヤ村にイスラエル人の入植者数十人が武装して民家を襲い、監視カメラを盗む、貯水タンクを破壊するなどの行為に及んだという。

バラール氏はこのときに入植者から暴行を受けたあとイスラエル軍に拘束され、連絡が取れなくなっていた。その後、25日(現地時間)早朝にアブラハーム氏は自身のXアカウントに「一晩中手錠をかけられ、軍事基地で暴行された後、ハムダン・バラールは解放され、家族のもとに向かっている」と投稿。拘束現場を目撃していた、同じく共同監督のバーセル・アドラー氏は、病院で治療を受けているバラール氏の写真を投稿している。

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バラール氏の早期解放は、アブラハーム氏が事件を報告したあと、国際的に安否の懸念が高まったことを受けたものとみられる。ハリウッドではバラール氏の即時解放と安全を求める署名運動が行われ、映画監督たちを含む3,700人が署名。俳優のマーク・ラファロも、SNSを通じて「すべての映画監督とアカデミー会員」に連帯を求めた。

『ノー・アザー・ランド』をイギリスで放送・配信しているChannel 4は、バラール氏の拘束に「深く心を痛めている」とのコメントを発表。デンマーク国際ドキュメンタリー映画祭(CPH:DOX)も、事件の報道を受けて「非常に恐ろしく、ショックを受けています」と綴った。国際ドキュメンタリー協会も、バラール氏の即時釈放を求めるとともに、現在地と容態、拘束の正当性を説明すべしとの声明を公開した。

ノー・アザー・ランド 故郷は他にない
Ⓒ2024 ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA

なお今回の事件について、イスラエル軍は「テロリスト数名がイスラエル国民に石を投げつけ、車両を破壊した」ことがきっかけであり、双方が互いに投石行為に及び、イスラエルの国防軍とイスラエル警察に向けて「数人のテロリストが石を投げつけた」ため、バラール氏を含む3人を拘束したと主張した。

しかし、この主張は目撃者やユダヤ人非暴力センター(CJNV)によって否定されている。事件発生時、バラール氏を含むスシヤ村の住民たちは、日没時の断食明けの食事(イフタール)のために着席していたところ、イスラエル人入植者の一方的な襲撃を受けたという。軍は攻撃を止めず、住民たちを助けようとする人々の行動を阻んだと証言されている。米The Hollywood Reporterは、目撃者の提供した事件現場の映像や写真を確認した。

映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』は、イスラエル軍の占領が進む故郷・ヨルダン川西岸地区のマサーフェル・ヤッタを撮影するパレスチナ人の青年バーセル・アドラーと、彼の活動を支えるイスラエル人ジャーナリストの友情を記録したドキュメンタリー。アドラー氏、バラール氏、アブラハーム氏のほか、レイチェル・ゾア氏を含む4人の共同監督体制で製作された。

報道によると、マサーフェル・ヤッタではアカデミー賞授賞式のあと、バラール氏が巻き込まれた今回の事件以外にも同じような襲撃事件が4件起きている。証言者は「今回の事件が話題になったのはハムダーンがオスカー受賞者だからです。我々は毎回出来事を記録し、世間に伝え、警察に訴えようとしていますが、何ひとつ成果はありません」と語った。

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Source: Deadline, The Hollywood Reporter (1, 2)

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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