ルーヴル美術館特別展『ルーヴルNo.9~漫画、9番目の芸術~』レポート/『ブレードランナー』の原点となった巨匠の作品も
現在、ルーヴル美術館特別展『ルーヴルNo.9~漫画、9番目の芸術~』が六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリーで開催されている。
https://twitter.com/no9manga/status/751334928537620480
フランスで『第9の芸術』と呼ばれているバンド・デシネ(漫画)。その芸術性の高さから、ルーヴル美術館は『ルーヴル美術館BDプロジェクト』というプロジェクトを数年前から遂行しているのをご存じだろうか?
【ルーヴルをテーマに自由に作品を描いてもらう】というオファーを受け、これまでフランス国内外(もちろん日本も)の著名な漫画家による12作品が発表されている。
- 『氷河期』ニコラ・ド・クレシー
- 『レヴォリュ美術館の地下』マルク=アントワーヌ・マチュー
- 『奇数時間に』エリック・リベルジュ
- 『ルーヴルの空の上』ベルナール・イスレール&ジャン=クロード・カリエール(デジタル展示)
- 『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』荒木飛呂彦
- 『魔法』クリスティアン・デュリユー
- 『ルーヴル横断』ダヴィッド・プリュドム
- 『ルーヴルの亡霊たち』エンキ・ビラル
- 『寄り目の犬』エティエンヌ・ダヴォドー
- 『千年の翼、百年の夢』谷口ジロー
- 『坑内掘りの芸術』フィリップ・デュピュイ&ルー・ユイ・フォン
- 『ルーヴルの猫』松本大洋
さらに、今回の展覧会に合わせて日本人作家4名の作品も展示されている。
- 『王妃アントワネット、モナリザに逢う』坂本眞一(デジタル展示)
- 『Palmyre au Musée 美術館のパルミラ』ヤマザキマリ(デジタル展示)
- 『ニケのうた』五十嵐大介
- 『ルーヴル消失』寺田克也(デジタル展示)
以上、計16名の漫画家による作品の原画(およびデジタル展示)、資料が約300点一堂に会した展覧会だ。
これらの作品はいわゆる大衆文化としての漫画のイメージを覆し、誰がどう見ても”アート”として成立している。圧倒的な画力、発想、哲学的思考、世界観。すべての作品がルーヴルという出発点から、想像もできない領域に羽根を広げていて、漫画家たちの才能の前にひれ伏すしかない気持ちになる。
もちろん、“美とは何か?”という問いを投げかけてくる作品もある。また、それらの作品の世界観を余すことなく表現した空間デザインも一見の価値アリだ。
https://twitter.com/no9manga/status/760125128625623040
参加している作家はいずれも世界にその名を轟かす存在なのだが、中でも特に映画ファンにとって重要な作家はエンキ・ビラルだろう。セルビアに生を受けた彼は、バンド・デシネ作家としてデビューした後にいくつかのSF作品を発表するのだが、彼の描く壮大な世界観は『ブレードランナー』や『フィフス・エレメント』に多大なる影響を与えたことで知られている。エンキ・ビラル自身も映像作品を手がけており、『バンカー・パレス・ホテル』(1989年)『ティコ・ムーン』(1997年)、『ゴッド・ディーバ』(2004年)という3本のSF作品を監督している。
エンキ・ビラルの展示エリアは本展覧会の中でも特に目立つ。美術作品と彼の世界観が融合した圧巻の“画“と、濃密すぎて目がチカチカしてしまうほど情報量の多いキャプションをぜひとも目撃していただきたい。彼が存在しなければ、『ブレードランナー』は生まれなかった。その尋常ならざる脳内を少しでも覗けるチャンスだ。
この展覧会は、『人気漫画家の原画展』であると同時に、『ルーヴル自身のオファーによって生み出された現代アートの紹介』だ。漫画がどこまで豊かに発展しているのか、一流の漫画家たちの”本気”を見ることができる稀有な展覧会。きっとTHE RIVER読者には気に行ってもらえるはず。是非とも足を運んでいただきたい。
https://twitter.com/no9manga/status/754600917161259008
会期:2016年7月22日(金)− 9月25日(日) ※会期中無休
開館時間:10:00 − 20:00(最終入場19:30)
会場:森アーツセンターギャラリー
大阪会期:2016年12月1日(木)− 2017年1月29日(日)
大阪会場:グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボ
福岡会期:2017年4~5月開催予定
福岡会場:後日発表
名古屋会期:2017年7月15日(土)- 9月3日(日)
名古屋会場:松坂屋美術館
- <
- 1
- 2