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『オーシャンズ8』徹底解説 ─ キャラクター&キャスト紹介、過去作復習にカメオ出演者も

オーシャンズ8
(c) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.

サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、リアーナほか豪華キャストが集結し、『オーシャンズ』シリーズを新たに甦らせた映画『オーシャンズ8』が2020年7月10日の金曜ロードSHOW!にて地上波初放送となる。

1960年製作『オーシャンと十一人の仲間』をリメイクした『オーシャンズ』シリーズから繋がる『オーシャンズ8』だが、物語そのものは完全に独立。予習ゼロでも十分に楽しめる一作に仕上がっているが、今回は出演者や過去作品の復習、知っていると深く楽しめるポイントなどを押さえていくことにしよう。

『オーシャンズ8』予告編映像

『オーシャンズ8』あらすじ

かつて「オーシャンズ」のリーダーだった伝説の強盗、ダニー・オーシャンの妹であるデビー(サンドラ・ブロック)が仮出所した。服役中の5年8ヶ月12日、獄中で練りに練った強盗計画を実行に移すため、デビーは元相棒であるルー(ケイト・ブランシェット)を訪ねる。デビーの狙いは、“ファッションの祭典”として名高いイベント「メットガラ」にて、1億5,000万ドルの宝石・トゥーサンを盗み出すこと。しかし、計画の達成にはプロフェッショナルたちの力が必要だった。

デビーとルーは、ファッションデザイナーのローズ(ヘレナ・ボナム=カーター)を計画に引き入れる。ターゲットとなる人気女優、ダフネ・クルーガー(アン・ハサウェイ)がメットガラで着用する衣装をデザインし、トゥーサンを彼女に身につけさせねばならないのだ。さらに一同は、ジュエリー職人のアミータ(ミンディ・カリング)、天才ハッカーのナインボール(リアーナ)、スリの達人コンスタンス(オークワフィナ)、盗品ディーラーのタミー(サラ・ポールソン)を招き入れる。おのおのが計画実行に向けて動き出す中、実はデビーには、かつて自分を陥れた元恋人に対する企みがあって……。

『オーシャンズ8』出演者・キャスト・キャラクター

サンドラ・ブロック(デビー・オーシャン)

1980年代後半、学生映画や舞台からキャリアをスタートさせ、1994年にキアヌ・リーブス主演『スピード』でヒロインを演じてブレイク。翌1995年、『あなたが寝てる間に…』でゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされている。その後、『ザ・インターネット』(1995)や『評決のとき』(1996)、『スピード2』(1997)などに出演し、『デンジャラス・ビューティー』(2000)では再びゴールデングローブ賞主演女優賞候補となった。

ロマンティック・コメディからアクション、サスペンスなど幅広いジャンルをこなす女優としてキャリアを確立し、『クラッシュ』(2005)や『あなたは私の婿になる』(2009)を経て『しあわせの隠れ場所』(2009)でアカデミー主演女優賞に輝く。『ゼロ・グラビティ』(2013)でもアカデミー主演女優賞候補となった。近作に『ミニオンズ』(2015)のスカーレット・オーバーキル役(声優)、Netflix映画『バード・ボックス』(2018)など。

ケイト・ブランシェット(ルー・ミラー)

1992年に舞台女優としてデビューし、映画への進出後も早くから数々の映画賞候補となる。『エリザベス』(1998)でアカデミー主演女優賞候補となったのち、『リプリー』(1999)『耳に残るは君の歌声』(2000)『コーヒー&シガレッツ』(2003)などを経て、『アビエイター』(2004)でアカデミー助演女優賞に輝く。『アイム・ノット・ゼア』(2007)でヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞、『ブルージャスミン』(2013)ではアカデミー主演女優賞をはじめ世界の映画賞を総なめにした。『キャロル』(2015)でも数々の映画賞候補となっている。

賞レースで高い評価を受けつづけるかたわら、ケイトは『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』シリーズをはじめ、数々の大作映画・話題作にも出演。『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008)や『シンデレラ』(2015)のほか、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)ではマーベル映画にも進出した。

アン・ハサウェイ(ダフネ・クルーガー)

2001年、『プリティ・プリンセス』で映画デビューを果たし、ブレイク。『ブロークバック・マウンテン』(2005)『プラダを着た悪魔』(2006)『ゲット スマート』(2008)などで人気を博し、『レイチェルの結婚』(2008)でアカデミー主演女優賞候補となった。『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)や『ラブ&ドラッグ』(2010)ののち、『レ・ミゼラブル』(2012)ではアカデミー助演女優賞を受賞したほか、数々の映画賞に輝いている。

同じく2012年には、クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト ライジング』にも起用され、ノーランとは『インターステラー』(2014)で再びタッグを組んだ。近作に『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(2016)や『シンクロナイズドモンスター』(2015)『セレニティー: 平穏の海』(2019)など。今後は児童文学の映画化『魔女がいっぱい(原題:The Witches)』や、映画版『セサミストリート(原題)』を控えている。

ミンディ・カリング(アミータ)

テレビ番組のスタッフを経て、2002年にベン・アフレック&マット・デイモンの友情を描いた舞台『Matt & Ben(原題)』でベン・アフレック役と脚本を兼任して注目される。2005年に『40歳の童貞男』で映画デビュー、同年からはイギリスの同名コメディドラマをリメイクした「ザ・オフィス」にて出演・脚本・製作・監督を務めた。2012年からは主演・脚本・製作を務めたドラマシリーズ「The Mindy Project(原題)」も手がけている。

映画では声優業も多く、『怪盗グルーの月泥棒』(2010)へのカメオ出演や『シュガー・ラッシュ』(2012)、『インサイド・ヘッド』(2015)ムカムカ役など。

サラ・ポールソン(タミー)

1990年代から映画・テレビ・舞台で活躍し、レネー・ゼルウィガー&ユアン・マクレガー出演『恋は邪魔者』(2003)や、フランク・ミラー監督『ザ・スピリット』(2008)、『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(2011)『それでも夜は明ける』(2013)『キャロル』(2015)などに出演。映画の近作には『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017)や、本作と同じくサンドラ・ブロックが主演を務めた『バード・ボックス』(2018)、M・ナイト・シャマラン監督『ミスター・ガラス』(2019)。

ドラマ「アメリカン・ホラー・ストーリー」には2011年のシリーズ開始から連続的に出演。「アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件」(2016)ではエミー賞・ゴールデングローブ賞に輝いた。

オークワフィナ(コンスタンス)

中国系の父親、韓国系の母親のもとに生まれたアジア系アメリカ人の女優&ラッパー。13歳からラップを始め、2012年に「My Vag」がYouTubeにて注目されたのち、2014年に初のアルバム「Yellow Ranger」を発表。2016年にはドキュメンタリー映画『バッド・ラップ』に登場し、2018年にアルバム「In Fina We Trust」をリリースしている。

女優としての映画デビューは『ネイバーズ2』(2016)で、2018年には『エンド・オブ・ハイスクール』と本作『オーシャンズ8』、『クレイジー・リッチ!』で大きな注目を集める。『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019)のほか、A24製作『フェアウェル』が日本公開待機中(7月1日時点)。今後の作品にマーベル映画『シャン・チー&ザ・レジェンド・オブ・ザ・テン・リングス(原題)』など。

リアーナ(ナインボール)

2005年、アルバム「Music Of The Sun」を発表して鮮烈なデビューを飾り、全世界で100万枚以上のセールスを記録。2006年には「Girl Like Me」をリリースし、翌2007年の3枚目のアルバム「Good Girl Gone Bad」で世界的ブレイクを遂げた。以来、シングル・アルバム・他アーティストとのコラボレーションなどを続けており、“21世紀最大の歌姫”とさえ呼ばれる人気・実力を誇る。

女優デビューはカルト的人気を誇るアクション映画『バトルシップ』(2012)。その後、『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(2017)や本作『オーシャンズ8』のほか、2019年にはドナルド・グローバー/チャイルディッシュ・ガンビーノとのコラボレーションによる『Guava Island』に出演している。

ヘレナ・ボナム=カーター(ローズ)

1983年にテレビからキャリアをスタートし、『眺めのいい部屋』(1987)や『ハワーズ・エンド』(1992)などを経て、『鳩の翼』(1997)でアカデミー主演女優賞候補、『ファイト・クラブ』(1999)などに出演。ティム・バートン監督作品には『ビッグ・フィッシュ』(2003)『チャーリーとチョコレート工場』(2005)『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(2007)などに多数出演、プライベートでもパートナーとなる。

『ハリー・ポッター』シリーズのベラトリックス・レストレンジ役でも知られるほか、『英国王のスピーチ』(2010)でアカデミー助演女優賞にノミネートされた。そのほか近年の代表作に『レ・ミゼラブル』(2012)『シンデレラ』(2015)『未来を花束にして』(2015)など。ドラマ「ザ・クラウン」シーズン3~4ではマーガレット王女を演じており、今後の作品には、ミリー・ボビー・ブラウン&ヘンリー・カヴィル出演のNetflix映画『エノーラ・ホームズの事件簿』がある。

ジェームズ・コーデン(ジョン・フレイジャー)

ジェームズ・コーデン
Photo by Dominick D https://www.flickr.com/photos/idominick/16364434933/ Remixed by THE RIVER

俳優・コメディアン・脚本家として活動するかたわら、アメリカを代表する人気司会者としても知られる。英BBCの人気シットコム番組「Gavin & Stacey(原題)」(2007-2010)で脚本・出演を務めて高い評価を受け、2010年のFIFAワールドカップではイングランド代表の非公式応援歌「Shout」をリリースしてUKシングルチャートのNo.1を獲得した。

俳優としての評価も高く、2012年の舞台『One Man, Two Guvnors(原題)』ではトニー賞主演男優賞を受賞。主な出演作には『はじまりのうた』(2013)や「THE WRONG MANS/間違えられた男たち」(2013-2014)、『トロールズ』シリーズや実写版『ピーターラビット』(2018)での声優業、『キャッツ』(2019)など。2015年からは、アメリカの人気トーク番組「The Late Late Show」にて4代目の司会者を務めている。

リチャード・アーミティッジ(クロード・ベッカー)

リチャード・アーミティッジ
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/13947668133/ Remixed by THE RIVER

1980年代の末に舞台からキャリアをスタートさせ、テレビドラマでも活躍。1999年、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』でナブー戦闘機のパイロットとして映画デビューを果たした。

映画の主な出演作品には『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)や『ホビット』3部作、『イントゥ・ザ・ストーム』(2014)『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(2016)など。ドラマには「ロビン・フッド」(2006-2009)「MI-5 英国機密諜報部」(2008)、マッツ・ミケルセン主演「ハンニバル」シーズン3(2015)がある。オーディオブックのナレーターとしても多くの作品に参加。

主な出演者・キャスト、吹替声優 一覧

キャラクター名 キャスト 日本語吹替声優
デビー・オーシャン サンドラ・ブロック 本田貴子
ルー・ミラー ケイト・ブランシェット 塩田朋子
ダフネ・クルーガー アン・ハサウェイ 甲斐田裕子
アミータ ミンディ・カリング 釘宮理恵
タミー サラ・ポールソン 園崎未恵
コンスタンス オークワフィナ 杉浦慶子
ナインボール リアーナ 村中知
ローズ ヘレナ・ボナム=カーター 高乃麗
ジョン・フレイジャー ジェームズ・コーデン かぬか光明
クロード・ベッカー リチャード・アーミティッジ 大塚明夫

『オーシャンズ8』解説

ダニー・オーシャン、どうなった?

『オーシャンズ8』は、2001~2007年に製作された、ジョージ・クルーニー主演『オーシャンズ』シリーズに連なる物語だ。時系列は『オーシャンズ13』の後にあたる2018年、主人公は過去3作でクルーニーが演じたダニー・オーシャンの妹であるデビー・オーシャンである。それでは今、兄のダニーはどこで何をしているのだろうか?

その疑問は早いうちにいったん解消されることになる。本作では、ダニーがすでにこの世を去っていることが幾度となく示唆されるのだ。デビーの口から「兄は安らかに眠っているのかも」と語られるほか、デビーはダニーの墓を訪ねて「そこにいたほうがいいわ」と口にする。ところが、『オーシャンズ』シリーズのファンであれば、“本当にダニーは死んだのか?”という疑問は避けて通れないところであろう。

オーシャンズ8
(c) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.

実際のところ、ダニーが本当に死んでしまったのかどうかはわからない。もちろんダニーの死体は登場しないし、死因さえ明らかにならないのだ。ダニーは2018年、すなわち本作の物語が始まる直前に死去しているようだが、それにしてはデビー自身はあっけらかんとしている。おまけにデビーは、兄が本当に死んだのかどうかを尋ねられると、これにはきちんと答えていない。ダニーは生きているのか、それとも本当に死んだのか。真相は闇の中である。

女性ばかりのオールスターキャスト、続編の可能性は

サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ミンディ・カリング、サラ・ポールソン、オークワフィナ、リアーナ、ヘレナ・ボナム=カーター。『オーシャンズ8』に揃ったのは、スター俳優の競演で話題を呼んだ『オーシャンズ』シリーズと肩を並べる──文脈やジャンル、業界のトレンドなどを鑑みれば同シリーズをしのぐといってさえいい──豪華な顔ぶれだ。

脚本・監督のゲイリー・ロスは、米Cinema Blendにて「これほどの女性アンサンブルが集まったことは今までにないと気づいた」話している。しかし、企画当時はさほど難しくないことだと考えていたそう。デビー役のサンドラ・ブロックに初めて相談を持ちかけた際、ロス監督は「脚本さえ悪くなければ、望み通りの人が集まるでしょうね」と言われたというが、それから企画が実を結ぶまでは3~4年を要しているのだ。

オーシャンズ8
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本作が公開された2018年5月、サンドラ自身は『オーシャンズ8』の企画について「(最初は)実現しないだろうと思っていました」振り返っている。「面白いアイデアだとは思ったけど、その時は作れると思わなかった」。ルー役のケイト・ブランシェットも「2~3年前なら不可能だったと思う」と述べている。「公開されて本当にうれしい。“当然でしょ”って感じだけど、いろんなことが変わったんだと思います」。『オーシャンズ8』の実現は、映画業界の変化を示唆するものなのだ。

ちなみに出演者たちは『オーシャンズ8』の撮影をしっかりと楽しんでいた模様。タミー役のサラ・ポールソンは、同じく劇場公開当時、本作を「すごく貴重な機会だった」と語った。「私は、人とのコミュニケーションが楽しい仕事はあまりないし、それがしんどいこともあるくらい。だけど今回は、ちょっとくつろぐ時間もすごく良かったんです。もっとやりたいですね、『オーシャンズ9』で!」。2020年7月現在、残念ながら続編の話題は聞かれていないが、実現の可能性やいかに。

カメオ出演者たち

『オーシャンズ』シリーズといえば、セレブリティやスター俳優のカメオ出演も見どころのひとつ。ファッションの祭典・メットガラを舞台とする本作には、映画・テレビやファッション、スポーツなどさまざまな分野から豪華な顔ぶれが顔を出している。見つけられるかどうかはあなた次第、ここでは一部を挙げておくので、目を皿のようにして探してみてほしい。

本人役で登場する女優は、『バットマン ビギンズ』(2005)のケイティ・ホームズ、『ザ・プレデター』(2018)のオリヴィア・マン。モデル界からはキム・カーダシアン、ケンダル&カイリー・ジェンナー、ジジ・ハディッド、ハイディ・クルム、ヘイリー・ボールドウィン、アドリアナ・リマ、リウ・ウェンほか。また、音楽業界からはラッパーのコモン、デザイナーらが登場している。

オーシャンズ8
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スポーツ界からは、日本でもおなじみのテニスプレーヤーであるマリア・シャラポワ、セリーナ・ウィリアムズ、そして重鎮ジョン・マッケンローら。ビジネス界からは“メディア王”ルパート・マードックの元妻として知られるウェンディ・デン、『ソーシャル・ネットワーク』(2010)でマーク・ザッカーバーグの敵役として描かれたウィンクルボス兄弟も姿を見せる。

ファッション業界からは、俳優としても活動するワリス・アルワリア、ザック・ポーゼン、アレキサンダー・ワンら。また、米Vogueの編集長であるアナ・ウィンター、メトロポリタン美術館のキュレーターであるアンドリュー・ボルトンも登場。さらに本人役ではないが、アン・ハサウェイ演じるダフネ・クルーガーのライバル女優役でダコタ・ファニングも出演している。

ちなみに『オーシャンズ』シリーズの過去作品からは、ルーベン・ティシュコフ役のエリオット・グールド、イエン役のシャオボー・チン。ライナス・コールドウェル役のマット・デイモン、ソール・ブルーム役のカール・ライナーも撮影に参加したが、2人の出番はカットされてしまった。

これまでの『オーシャンズ』シリーズ

『オーシャンズ11』(2001)

1960年製作『オーシャンと十一人の仲間』のリメイク作品。泥棒・詐欺師のダニー・オーシャンは、窃盗罪で服役していた刑務所から仮出所し、獄中で企んでいた犯罪計画を、右腕のラスティ・ライアンに打ち明ける。それは、ラスベガスの大手カジノである「ベラージュ」「ミラージュ」「MGMグランド」から金が集まる巨大金庫に押し入るという計画だった。巨額の現金が集まる日を狙い、ダニーとラスティたちはチームを組んで世紀の計画に挑む。集まったのはカジノのディーラーやスリの達人、爆発物のスペシャリスト、メカニックの専門家、資産家など。しかしオーシャンには、もうひとつの狙いがあって……。

主な出演者は、ダニー役のジョージ・クルーニー、ラスティ役のブラッド・ピット、スリのライナス役のマット・デイモンをはじめ、チームのメンバーにドン・チードル、ケイシー・アフレック、バーニー・マック、エリオット・グールド、カール・ライナーほか。ターゲットとなるカジノのオーナーであるベネディクト役をアンディ・ガルシア、オーシャンの元妻テス役をジュリア・ロバーツが演じている。

あらすじを読めば、『オーシャンズ8』がシリーズの続編でありながら、『オーシャンズ11』のリメイクであることがよくわかるだろう。『オーシャンズ11』から3作目『オーシャンズ13』までを手がけたのは、『トラフィック』(2000)『セックスと嘘とビデオテープ』(1989)などのスティーヴン・ソダーバーグで、『オーシャンズ8』にもプロデューサーとして参加している。

『オーシャンズ12』(2004)

舞台は『オーシャンズ11』から数年後。カジノからの強盗計画を成功させたダニーたちの前にベネディクトたちが現れ、盗んだ金に利子を付けて返すようにと迫った。しかし、すでに一同は盗んだ金に手をつけており、もちろん利子のぶんは足りない。そこでオーシャンズはヨーロッパを舞台として新たな強盗計画に着手するが、行く先々で“先客”が仕事を終えており、すでに盗むものはなくなっている状態だった。彼らの前に立ちはだかったのは、ヨーロッパの怪盗“ナイト・フォックス”。彼との勝負に勝てば、オーシャンズはベネディクトに金を返すことができるのだ。

出演者は前作メンバーのほか、怪盗ナイト・フォックス役にフランスの名優ヴァンサン・カッセル、女性捜査官イザベル役にキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。ブルース・ウィリスやアルバート・フィニーという大御所俳優の登場、さらには“ジュリア・ロバーツ演じるテスが偽物のジュリア・ロバーツになりすます”といった展開も楽しい。

『オーシャンズ13』(2007)

オーシャンの仲間である資産家、ルーベンがホテル王のウィリー・バンクに裏切られ、心筋梗塞で倒れてしまった。話を聞きつけたダニーはラスベガスを訪れ、仲間たちを集めてバンクへの復讐を画策するのだった。狙いはバンクが経営するカジノホテルのグランドオープン。一同はバンクから金を奪うだけでなく、名声をも破壊することを狙っていた。ところが、バンクのホテルはそう簡単に破れるものではなく……。

出演者はおなじみの顔ぶれに加え、前作『オーシャンズ12』からヴァンサン・カッセルも再登場。ターゲットのホテル王ウィリー・バンク役はアル・パチーノ、バンクの右腕である部下アビゲイル役はエレン・バーキンが演じた。なお、前2作でテス役を務めたジュリア・ロバーツは出演していない。

監督 ゲイリー・ロス

1956年生まれ。1988年、トム・ハンクス主演のファンタジー・コメディ『ビッグ』で脚本家デビューを果たし、フィルムメーカーとしてのキャリアをスタートさせる。同作はアカデミー脚本賞候補に選ばれた。その後、ごく普通の男がアメリカ大統領の替え玉になるコメディ映画『デーヴ』(1993)で再びアカデミー脚本賞候補となった。トビー・マグワイア主演『カラー・オブ・ハート』(1998)で監督デビューし、『オーシャンズ』シリーズを手がけたスティーヴン・ソダーバーグが同作のプロデュースを担っている。

2003年、再びトビー・マグワイアを主演に迎えた実話映画『シービスケット』(2003)では脚本・監督を兼任し、アカデミー作品賞・脚本賞候補となったほか、数々の映画賞にノミネートされた。近作には、人気シリーズの第1作『ハンガー・ゲーム』(2012)や、マシュー・マコノヒー主演の伝記映画『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016)がある(ともに脚本・監督を務めた)。ソダーバーグからバトンを受け取った本作でも、長年にわたる脚本家としてのキャリア、映画監督としての職人性をいかんなく発揮している。

オーシャンズ8
(c) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.

レビュー・評価

『オーシャンズ8』は米国公開後、オープニングの3日間で4,150万ドルを突破し、初登場No.1大ヒットとなった。これは『オーシャンズ11』の3,800万ドル、『オーシャンズ12』の3,900万ドル、『オーシャンズ13』の3,600万ドルを抜いて、シリーズ史上最高のオープニング成績となっている。最終米国興行成績は1億4,021万ドル、全世界興行成績は2億9,771万ドル。米Rotten Tomatoesでは批評家スコア69%、観客スコア45%となっている。

Chicago Readerは「監督・脚本のゲイリー・ロスは、(スティーヴン・)ソダーバーグの皮肉っぽいユーモア、スピーディなプロット、緊密なリズムを忠実に継いでいる」とシリーズらしさの継承を称えた。 一方、Detroit Newsは「あらかじめ成立しているコンセプトのギミックや性別反転に成功しただけでなく、シリーズのしかるべき後継者としても独立している」と成功を評し、Slateも「あらゆる意味で過去作品の鏡だが、女性らしさで独自の道を進む時こそ一番楽しい」と記した。

エンターテインメントとしての質を評価した媒体も少なくない。NPRは「キャストのカリスマ性が圧倒的な、爽やかで大胆な強盗映画。特に(アン・)ハサウェイの演技はすばらしく、過去作品と同じようなタイムリーさもある」。Village Voiceも「スターあり、ドレスあり、チームが作られ犯罪計画が練られていく小気味よいモンタージュあり。『オーシャンズ8』の愉しみはまさに期待通りだ」と書いている。

オーシャンズ8
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一方、厳しい声もまた少なくなかった。London Evening Standardは「すぐに忘れてしまえる、ポップコーン片手の現実逃避を作る狙いだったなら成功している。しかし、それはこの素晴らしいキャストに跳ばせるには低すぎるハードルではないか」。New York Timesは「大部分は観ていて楽しい映画だが、ジャンルと同じくらいジェンダーについても軽やかに(そして真面目に)扱ってくれたなら、もっと風通しがよく楽しめる映画になっただろう」と作品の志を問うている。

そのほか、英Independentは「本作は男たちが強盗を指揮した過去作品と同じくらい表面的で、かつペラペラだ。それが『オーシャンズ8』を画期的なものとしているのか、オリジナルに忠実なものにしているのかは議論の余地がある」と疑問を呈した。より辛辣なのはNew Yorkerで、「『オーシャンズ8』は非常に優等生的で素朴な作品だ」とポジティブのようでいて、「なにひとつ面白くあろうとはしていないが、すべてが役目を務めてはいる」とバッサリ切った。

リリース情報

『オーシャンズ8』ブルーレイ&DVDは2018年11月28日にリリースされ、その後、廉価版も発売された。映像特典には「未公開シーン集」のほか、本作のために忠実に再現されたメットガラの舞台裏を捉えた「メットガラの再現」、そのほか「美しく華麗に盗む」「新生オーシャンズ」が収録されている。キャストやスタッフのインタビューなど貴重な映像もチェックしてほしい。

オーシャンズ8
(c) 2018 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.

Source: Cinema Blend(1, 2, 3), Vulture

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。