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『ピーターラビット2』は「ウサギ版強盗映画」だと監督 ─ 「ガイ・リッチー作品やマフィア映画を参考にしました」

ピーターラビット2/バーナバスの誘惑

2018年に大ヒットした映画『ピーターラビット』の続編『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』がついに2021年6月25日より公開となる。コロナ禍の影響で延期が続いていただけあって、待望の上映開始だ。

世界中で愛されるベストセラー絵本の実写映画化ながらも、「ウサギ版アウトレイジ」や「マッドマックス 怒りの湖水地方」など物々しい愛称で親しまれた前作に引き続き、本作でもウィル・グラック監督がメガホンを取った。

THE RIVERでは、この作品のためウィル・グラック監督とオンラインでの単独インタビューを実施。監督は前作でも来日を果たしていて、筆者とのインタビューは3年ぶり、シリーズ連続だ。嬉しいことに前回のインタビュー時のことを覚えてくれていた監督と、2度目のトークとなった今回も『ピーターラビット2』にまつわるユーモアあふれる話をうかがうことができた。前作ではまさかの戦争映画が参考作にあげられていたが、どうやら今作では強盗映画にインスパイアされているようで……。

「古いイギリス映画に出てくるギャングスター」のように?

──こんにちは!実は僕、前作『ピーターラビット』で監督が来日された時、東京でインタビューさせていただいたことがあります。またお話できて嬉しいですが、直接お会いできないのは寂しいですね。

覚えていますよ!前回のインタビューは、東京のホテルでしたね。このご時世、仕方ないですね。

──『ピーターラビット2』は長らく公開延期を繰り返していましたが、ようやく公開となって、本当に嬉しく思います。

ついに、ですよね!僕も劇場公開を迎えられてとてもワクワクしています。

──続編となる本作では、ピーターラビットがバーナバスという悪いウサギにそそのかされて、悪の道に引きずり込まれます。このバーナバスは、マフィアドラマ「ザ・ソプラノズ」の主人公、トニー・ソプラノがモデルになっているとお聞きしました。

実はそれよりも、ガイ・リッチー監督作のようなイギリスのマフィア映画を参考にしているんです。もちろん「ザ・ソプラノズ」は大好きなので影響は受けていますが、古いイギリス映画に出てくるギャングスターのようにしたかったんです。彼と、その手下の3人(three people)。……3人?うん。2匹の猫とネズミも、古いイギリスのギャング映画を参考にしました。

ピーターラビット2/バーナバスの誘惑

──前作のインタビューでは、アクションシーンで『プライベート・ライアン』(1998)を参考にしたと仰っていましたよね。

イエス(笑)。

──で、今作ではガイ・リッチー映画を参考にしたということですね。それから、『オーシャンズ11』(2001)のような強盗映画の影響もあったのでは?

ガイ・リッチーの『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998)や、『オーシャンズ11』の要素もちょこっと織り交ぜています。それから『バンク・ジョブ』(2008)なんかも取り入れていますね。この方針、スタジオに声を大にして伝えていたら、たぶん受け入れられなかったと思います。でも、やっちゃった(笑)。

──戦争映画や強盗映画といったダークな要素を、このキュートなアニマル映画に取り入れるところ、ホント面白いですよね(笑)。

でしょ。だって、ドライフルーツ盗みに行くだけだし。暴力があるわけでもないから、安心して観れるかなって。ウサギ版強盗映画です。

──ウサギ版強盗映画!(笑)最高ですね。もふもふのウサギや動物たちは今作でも最高に可愛いですが、動物たちの表現や質感は前作からアップデートされていますか?

アニメ制作は、オーストラリアのAnimal Logicという会社が手掛けています。前作から今作の間に、より豊かな表情が表現できるようにかなりのリサーチをされています。だから、この2作目を観てから1作目を観直すと、1作目が古く感じて驚くと思いますよ。2作目が技術的に進化している証ですね。

それから、本作は自宅のテレビ画面ではなく、映画館の大画面で観る映画ですから、キャラクターの細かな表情や、風にゆれる毛といった細かな表現が大切です。オーストラリアのアニメーターたちが新しいテクノロジーを駆使して、前作よりもリアルに表現してくれています。

──中でもバーナバスには注目ですよね。厳しい世界で生き抜いているから、身体が少し汚れていて、そんなところも表現されています。

よく見ると耳に切れ跡もありますよね。彼はストリート・ラビットなので、ピーターみたいにキレイじゃないんです。

ピーターラビット2/バーナバスの誘惑

──ところで、バーナバスの日本語吹替声優は、哀川翔という有名な俳優が演じているんですよ。やくざ役で有名で、日本では「アニキ」って呼ばれています。Big broみたいな意味です。バーナバスにピッタリなんですよ。

そうなんですね!クール!それは嬉しいな。

──前作は大成功を収めましたが、前作から引き継ぎたかったところと、この続編で新たに取り入れたかったところは何ですか?

引き継ぎたかったのはファミリーの要素です。それを新しい世界に連れて行きたかった。前作の、(マクレガー家の)庭や湖水地方での展開はすべて大好きです。あの感覚は保ちつつ、庭から外に、街に出たかった。だからといって、すっごい大都会、みたいなところまでは行きたくなくて、ちょっとした街です。映画をご覧になれば分かりますが、高層ビルは出てきません。ウサギの目線からは大きく感じますが、私たちからするとそこまで都会ではないという街です。なぜかというと、ビアトリクス・ポターが描いていたような、イギリスの田舎街の雰囲気を保ちたかったからです。

──街に飛び出したことで、前作よりもロケーションが増えた。

そうです。庭や家も再登場はしますが、街に出ますから。しかも、その街にも様々なロケーションがある。大きなファーマーズ・マーケットの場面では、セットを組んで撮影しました。それから、イタリアやスペインと、ヨーロッパ中を旅もします。

──ロケーションが増えて、大変だったことはありますか?

撮影に時間がかかるようになったことですね。初めてロンドンで撮影をしました。市街地での撮影は、楽しいけれど、難しかったですね。

ピーターラビット2/バーナバスの誘惑
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──本作では、絵本作家のビアが出版社のもとでピーターラビットのおかしな物語を書かされるというくだりがありますよね。あれって、ハリウッド業界への皮肉だったり?

イエス(笑)。あれは……、うん、そうなんです。間違いないです。示唆的にハリウッド業界を皮肉っています。ハリウッドって、愛されたプロパティで、ああいうことをやるでしょう。劇中でナイジェル(ピーターラビットの絵本で金儲けをしようとする出版社の社長)が言っている言葉は、まさにハリウッド業界で誰かが言っていることと全く同じだと思いますよ。

──ドーナル・グリーソン(マクレガー役)とローズ・バーン(ビア役)は前作で、CGで描かれる動物たちとの共演に苦労したと話していましたが、本作では慣れた様子でしたか?

それは彼らに聞かないといけないですが、僕から見るかぎりイエスですね。確かに慣れた様子で、すぐに調子を掴んでいましたよ。初出演のデヴィッド・オイェロウ(ナイジェル役)にとっては初めての経験でした。彼が現場に合流した時、他のキャストはもうプロでしたが、彼はどう演じるべきか、少し時間をかけて探っていましたね。デヴィッドはピーターとフィジカルなやり取りをするシーンが多かったので、苦労していました。特に、何もないところを掴む演技とか(笑)。

── 前作では、劇中でマイク・シノダ(Fort Minor)の楽曲が起用されていて、前回のインタビューでもマイク・シノダについてお話しましたよね。今作では、グリーン・デイの「Boulevard of Broken Dreams」が起用されています。マイク・シノダと同じく、世代的に直撃なのですごく嬉しかったです。思わず一緒に歌い出しそうになりました!今作での音楽について教えて下さい。

はい、マイク・シノダのお話をしたこと、覚えていますよ。「Boulevard of Broken Dreams」も気に入ってもらえて良かった!

そうそう、前作ではマイク・シノダや、ヴァンパイア・ウィークエンドに参加してもらいました。今作では書き下ろし曲はなく、既存の楽曲を使わせてもらっています。グリーン・デイの「Boulevard of Broken Dreams」のシーンではリスが一緒に歌っていますが、アニメ制作はかなり時間がかかるので、予め早い段階から楽曲の使用許可を確認していました。だから「Boulevard of Broken Dreams」はかなり初期から使うと決めていて、あの曲のためにシークエンスを作ったんです。

本作のサウンドトラックを聴くと、それぞれの楽曲に特に共通点がないと思われるかもしれません。様々なところから、様々なタイプの楽曲を集めていますからね。でも、物語や映画によく合っていると思います。合わないと思っていた曲でも、ハメてみるとすごくマッチするから、音楽の作業はいつも楽しんでいます。

──今作ではどんなところに期待してほしいですか?

新しいストーリーや、ちょっぴり大人になったピーター、悪党たち、イギリスの美しい田舎風景や街の風景、それから、前作よりももっと可愛いキャラクターたちです。

──ところで、監督は昔日本に8年間住んでいたんですよね。前回の来日はちょっとした里帰りだったのでは?どんなところに行きましたか?

そうなんです。最高でした!だからこそ今回は日本に行けなくてガッカリしました。前回は本当に楽しかったですから。実は、自分が住んでいた家にも行ったんですよ!でも、なくなってた。めちゃくちゃデカいビルが建ってて……40階建てくらいの(笑)。住んでいた辺り全部がなくなっていて。けっこう悲しかった(笑)。

それから上智大学にも行って、自分が住んでた寮を探したんです。それもなくなっていた(笑)。ちょっと変わった里帰りになっちゃいました。

──お気に入りの日本食も食べられましたか?

はい。好きなものは全部食べました。僕はデパ地下が大好きで、片っ端から食べてやりましたよ。

──それでは最後に、日本の観客へメッセージをお願いします!

『ピーターラビット』前作が気に入ったなら、今作も引き続き、なだらかな丘が美しい田舎街や可愛い動物たちが登場しながら、さらにお楽しみいただけると思います。今作はもっとドラマティックになっていて、ピーターのアイデンティティがより探求されています。今、私たちも「自分は一体誰なのか」というアイデンティティのテーマと直面させられる時期にあると思うので、とても重要なことを描いています。誰がなんと言おうと、自分はこうなんだということにピーターが気付いていく物語になっています。ぜひ劇場でお楽しみください!

映画『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』は2021年6月25日(金)全国ロードショー。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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