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『アド・アストラ』ブラッド・ピット、「映画の成功」をどこで判断するか ─ 「週末の興行収入で決められるのは間違いだと思う」

『アド・アストラ』ブラッド・ピット 来日記者会見
© THE RIVER

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』『アド・アストラ』。2019年、2本の大作映画で主役級の役どころを務めるブラッド・ピットは、名実ともにハリウッドのトップスターでありながら、しかし俳優だけにとどまらない存在だ。自身の製作会社・プランBを通じてプロデューサーとしても活動するピットは、自らは出演していない作品であっても、『それでも夜は明ける』(2013)『ムーンライト』(2016)『Okja/オクジャ』(2017)などに携わっている。

盟友であるジェームズ・グレイ監督と初めて本格タッグを組んだ『アド・アストラ』で、ピットは主演俳優とプロデューサーを兼任。スクリーンに映らないところでも、本作の完成に力を尽くしたという。では、プロデューサーとしてのブラッド・ピットが考える“映画としての成功”とは何か。米GQのロングインタビューでは、その野心と信念が語られていた。

「大手スタジオの映画でも、インディペンデント映画でも、出資者にとって(成功の基準は)お金でしょう。けれども僕は、多くの映画が(成功かどうか)公開された週末に判断されるのは間違いだと思う。ヒットしたか、コケたか、という話になりますよね。だけど僕が好きな映画は、公開が終わった後にも素晴らしいと思えるものですから。」

こう語った後、ピットはプロデューサーとしての自分に立ち返って「このことは、僕の引き受けている責任について語るものではありません」と一言。しかしその直後、やはり「いや、だけど実際、僕はそういうことには反対の立場です」と率直に述べた。

僕が映画を観ながら考えるのは、その映画が10年後、20年後にも何かを語れる作品かどうかということ。それほど長持ちするか、それほどの力があるかということです。(映画の)歴史には、公開当時はとんでもない“大コケ”だった、しかし今では人々に愛されている作品がたくさんありますよ。僕たちはそういう映画に後から気づいたり、あるいは追いついたりしていくんです。」

2007年、ピットはプランBを通じて、自身が主演・製作を務めた『ジェシー・ジェームズの暗殺』と、アンジェリーナ・ジョリー主演『マイティ・ハート/愛と絆』を発表。どちらの作品も高い評価を受けたが、興行的には非常に厳しい結果となった。当時、ピットはプランBのデデ・ガードナー社長らに「とても誇りに思います。これらの作品は、これから時の試練を受けるのだと考えてください」と話したという。12年前から、映画に対するピットの価値判断は変わっていないのだ。

最新作『アド・アストラ』は、すでにヴェネツィア国際映画祭などで「宇宙版『地獄の黙示録』」と形容されるなど高い評価を獲得しており、ピットの演技にも「キャリア史上最高」との声が寄せられている。興行的成功よりも、むしろ長く残る映画を生み出すことを重視するプロデューサー、ブラッド・ピットは、今後どんな作品を手がけていくのか。

映画『アド・アストラ』は2019年9月20日(金)より全国公開中

ベネチア国際映画祭での絶賛レビューはこちら

Source: GQ

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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