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『500ページの夢の束』ベン・リューイン監督インタビュー ─ 「最近の僕はお金のために書いていた、ウェンディが僕を引き戻してくれた」

500ページの夢の束
©2016 PSB Film LLC

映画『I am Sam アイ・アム・サム』(2001)や『宇宙戦争』(2005)などで知られるダコタ・ファニング主演映画500ページの夢の束は、自閉症を抱える主人公ウェンディが大好きな『スター・トレック』の脚本コンテストに参加するため、施設を抜け出してハリウッドのパラマウント・ピクチャーズへと旅立つ姿を描くハートフル・ロードムービーだ。

ポップカルチャー・ファンが思わずニヤリとさせられる『スター・トレック』に関するネタも楽しいが、本作の最大の注目ポイントは「自閉症に悩む女性」を描くのではなく、自閉症はあくまで二次的な問題とし、ウェンディの人となりや彼女が繰り広げる「人生の旅」にフォーカスしている点。そんな観客の心に響く物語を作り上げ、観客全員が応援したくなるような魅力をウェンディにもたらしたのは、障がい者の性を扱った『セッションズ』(2012)のベン・リューイン監督である。

リューインを監督に起用した理由について、本作のプロデューサーであるララ・アラメディンもこう語る。

「ベンは自身も障がいと共に生きてきました。だから、障がいをもったキャラクターを日常のことのように扱い、特別な見方はしないんです。多くの困難を乗り越えるために、彼はユーモアのセンスを活用してきました。彼には子供のような心があり、人生に対しても一風変わった見方をしているんですよ。」

THE RIVERは、ベン・リューイン監督にインタビュー取材を行い、本作に関する詳しいお話を伺った。

500ページの夢の束
左:ベン・リューイン監督、右:ダコタ・ファニング。©2016 PSB Film. LLC

『スター・トレック』との繋がり

──『500ページの夢の束』、とても気に入りました。こんな素敵な作品を作ってくださり、ありがとうございます。

感謝の言葉を頂けるとは、嬉しいですね。

──どのシーンも心が温まるものばかりで、本当に良い映画でしたから。リューイン監督のお気に入りのシーンはありましたか?

この作品で最も感情的なシーンは、彼女が自分の頭の世界に入り込む場面かな。スポックの頭というべきかも。世界の謎を理解しようと努力するこのシーンは僕にとって一番心の動く瞬間でした。他の人がどう感じたかはわかりませんけどね。監督っていう生き物は、他の人と違う風に映画を語るんですよ。

──その場面のように、本作では『スター・トレック』にまつわるシーンが沢山登場しますね。『スター・トレック』には様々なシリーズが存在しますが、どのシリーズを一番参考にされましたか?

確かに『スター・トレック』のどの世代の作品を軸にするか、決める必要がありましたね。僕は最初のシリーズがとても気に入っていたんです。だって、あれは『スター・トレック』の歩むべき道を定めて、礎を築いた作品ですから。

──具体的に参考にしたエピソードはありますか?

ある時、本作で使用する宇宙服を決める必要があったんですけど、そんな時に”The Tholian Web”を見ました。で、このエピソードに出てきた宇宙服があまりに変だったんで、僕たちもこれで行こうって決めたんですよ。それに、カーク船長がゴーンと戦ったエピソードも使ったな。これは”The Tholian Web”とは違うエピソードですね。Vasquez Rocks(※)という、実際にあのエピソードを撮影した場所で撮影したんですよ。この2つのエピソードが具体的に参考にしたものだったかな。あ、あとはクリンゴン語!どの『スター・トレック』作品よりも、クリンゴン語を使用した自信がありますよ(笑)。

※Vasquez Rocks:アメリカ合衆国ロサンゼルスから車で1時間ほど北に向かったところに位置する奇岩群。『スター・トレック』の他にも「猿の惑星」の撮影が行われたことでも有名である。

キャスト・キャラクターへの思い

──物語の中で大きな鍵を握るのが、ウェンディとオードリーの姉妹関係です。オードリーは昔と違いウェンディと距離を置くようになっていますが、そんなオードリーの心情の裏には何が隠されていると思いますか?

オードリーは小さい頃からずっと妹の面倒を見てきたから、よくある姉妹関係とは違った中で成長してきたんですよ。でもある時、オードリーは自分の人生を望むようになる。結婚生活が始まって、子供ができて、これを守ることが彼女にとって最も重要になるんですね。だから、ウェンディが自分の人生にふさわしくないのではと不安になってしまう。共に成長したものへの愛情と自分の人生を守りたいという思いの中で引き裂かれるようになって行くんですよ。

Writer

Marika Hiraoka
Marika Hiraoka

THE RIVER編集部。アメリカのあちこちに住んでいました。

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