【レビュー】『ランペイジ 巨獣大乱闘』は巨大なる穴馬、穴ゴリラだ ─ 1秒も退屈させない最高のモンスター映画

怪獣(または妖怪)とモンスターは、似て非なるものだ。前者は、大地震や津波など「手のつけられない自然への畏怖」を抱いた日本人の恐れの原体験の現れが強いのに対し、後者は陸続きの地理条件による敵国からの武力侵略を恐れとした欧米人の精神が現れている(吸血鬼やフランケンシュタインなど、欧米のモンスターが人の形をしているのもそのためか)。日米におけるゴジラを巡る解釈の違いとは、常に「怪獣か、モンスターか」の一点に終始すると筆者は考えている。
そういった意味で、『ランペイジ 巨獣大乱闘』は怪獣映画というよりも、大満足のモンスター映画だ。

2018年5月。ハリウッドの大作映画を好むファンにとっては、少し油断する期間ではないだろうか。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の衝撃が一段落し、6月1日公開の『デッドプール2』までは暫くある。このタイミングにヘヴィ級の一撃を見舞ってくれるのが、この『ランペイジ 巨獣大乱闘』だ。
これがとにかく面白い。『ランペイジ 巨獣大乱闘』は、3DのIMAXシアターの醍醐味をフルに活かしたスリリングな冒頭シーンから、既に「これは当たり作品だ」と実感させてくれる。ドウェイン・ジョンソンと白いゴリラ「ジョージ」が登場し、2人のユーモア溢れるやり取りが交わされる頃には、完全にこの作品の虜になっていることに気づくだろう。
勝てるわけがないので、とにかく見守るしかありませんでした
『ランペイジ 巨獣大乱闘』では、遺伝子実験の失敗により、よりにもよってゴリラ、オオカミ、ワニが巨大化&凶暴化。危険極まりない巨獣どもが高層ビルひしめくシカゴの街に集結し、文字通り巨獣大乱闘を見せる。例によって戦車もミサイルも通用しない中、人間側ではドウェイン・ジョンソンが事態収拾に奔走。あのロック様でさえ小さな存在に見せてしまう迫力の展開がひたすら続く。

巨大なゴリラが大暴れすると言えば、もちろん誰もがキングコングの存在を思い出すだろう。最近では『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)が公開、コングは『レディ・プレイヤー1』(2018)にも登場していたが、『ランペイジ』のジョージはただ凶暴なのではなく、人懐っこい性格がポイントだ(念の為に補足しておくが、本作のゴリラはキングコングと関連性はない)。知性もあり、ドウェイン演じる霊長類学者デイビス・オコイエとは手話を通じてコミュニーケーションを取り、ジョークまで交わすほどである。そんなジョージは謎のスチームを吸引してしまい遺伝子が変異、巨大化&凶暴化してしまう。
キングコングは、未知の島の「キング」として人々に怒り、後にニューヨークに無理やり連れてこられると訳も分からぬまま攻撃されるというのが基本設計。一方『ランペイジ』のジョージは心優しい性格のまま、意志に反して凶暴化してしまうというところから、「超人ハルク」に近い印象だ。

ジョージは、同じく極悪巨大化したオオカミやワニと死闘を繰り広げる。特に見どころとなるのはチタンより硬いウロコに守られた巨大なワニとの対決だ。水面を這うように街へ忍び寄り、咆哮と共に出現する姿は、今度はゴジラを彷彿とさせる。2020年に公開予定の『ゴジラ対キングコング』が早くも開戦してしまったかのような迫力だ。
キャラ立ちが素晴らしくて、バトルシーン以外でも1秒も退屈しませんでした
映画の魅力も巨大化する『ランペイジ 巨獣大乱闘』は、「巨大モノ映画」枠すらも余裕でハミ出していく。こうした巨獣らの大バトルの足元では、ロック様ら演じるキャラクターたちの個性溢れるコミュニーケーションが繰り広げられるからだ。ぜひ注目頂きたいのが、ドラマ「ウォーキング・デッド」悪名高きニーガン役でもお馴染みのジェフリー・ディーン・モーガン。敵か味方か掴みにくいラッセル捜査官を演じている。ゆったりと喋り、不気味な笑みを浮かべるジェフリーの存在感は巨獣にも劣らぬ。ストレート直球タイプのドウェインとの「この2人を鉢合わさせてはいけない」感が堪らない。さらに、『マジック・マイク』(2012)『マジック・マイクXXL』(2015)や『ジャスティス・リーグ』(2017)デスストローク役のジョー・マンガニエロも銃弾と男性ホルモンを撒き散らしながら参戦。巨獣との勝ち目ない激闘に身を投じていく。
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