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黒澤明の傑作『羅生門』ハリウッドでドラマ化 ─ スピルバーグ率いる製作会社が主導

羅生門
写真:ゼータ イメージ

巨匠・黒澤明による、映画史に残る傑作『羅生門』(1950)がハリウッドでドラマ化されることがわかった。スティーブン・スピルバーグ率いるアンブリン・エンターテインメントが製作を務める。米The Hollywood Reporterほか複数のメディアが報じた。

映画『羅生門』は、芥川龍之介による短編小説『羅生門』『藪の中』を原作に、ある武士が殺され、その妻が暴行された事件の真相を、事件の当事者をはじめとする人々の証言から紐解いていく物語だ。下手人の盗賊や武士の妻たちは自分自身の主観と主張にもとづいて事件を語り始めるが、それぞれの証言は食い違っていく……。

ハリウッドでのドラマ版(タイトル未定)は全10話構成となり、ひとつの事件について、登場人物がそれぞれの視点で語っていくという構造を踏襲。物語の最後には謎に秘められた真実が明かされるという。

プロデューサーを担当するのは、アンブリン・テレビジョンのダリル・フランク氏とジャスティン・ファルヴェイ氏、米Atmosphere Entertainmentのマーク・カントン氏だ。
発表にあたって、ダリル氏&ジャスティン氏は「ドラマティックなミステリー/スリラーのシリーズを新たに生み出すため、この傑作映画を翻案できることをとても嬉しく思います」とコメント。「真実の限界や、異なる視点が同じ現実をいかに明らかにしないかを描く」作品になるという。マーク氏は「この物語のアプローチや、真実や現実の描き方は、現在の世界にとりわけタイムリーなものだと感じています」と述べた。

『羅生門』の“ひとつの事件を複数の人物が異なる視点から語る”という構造は、原作小説『藪の中』に由来しており、この構造は映画やドラマ、小説など、媒体を問わず、あらゆる物語に影響を与えてきた(海外では「『羅生門』スタイル」とすら呼ばれる)。
ただし今回のドラマ版は、あえて映画『羅生門』を原作とする企画であり、アンブリンは『羅生門』の翻案権を取得している。ドラマ版の内容は物語の構造を踏襲すること以外明かされていないが、おそらく黒澤明・橋本忍による脚本に基づいたストーリーになるのだろう。とすれば、作品の肝となるのは映画終盤の展開ということか。

近年、アンブリン・テレビジョンは「ジ・アメリカンズ」(2013-)やNetflixオリジナルシリーズ「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」(2018)をはじめ、高い評価を獲得するドラマシリーズを数多く製作している。『羅生門』の完成度にも期待がかかるところだ。

映画『羅生門』ドラマ版(タイトル未定)の放送局・配信サービスは未定。続報を楽しみにしておこう。

Source: THR, Deadline, Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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