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『サイレントヒル2』実写化『リターン・トゥ・サイレントヒル』レビュー ─ すべての観客を満足させる映画ではないかもしれないが、「巡礼」体験ができる

https://www.youtube.com/watch?v=BGMpSfE_qzE

(カナダ・トロントから現地レポート)近年、ゲーム業界は久しぶりにサイレントヒルの世界で盛り上がりを見せた。まず『サイレントヒル2』(2001年発売)リメイク版のリリースが話題となり、原作の重苦しい空気感や心理描写を丁寧に再構築している点が高く評価され、絶賛の声が相次いだ。続いて2025年にリリースされた『サイレントヒルf』は、舞台を日本に移した新作として注目を集め、海外メディアでも「シリーズの新たな方向性」として取り上げられ、大いに盛り上がった。

そんな流れの中で公開されたのが、ゲーム『サイレントヒル2』を原作とする映画『Return to Silent Hill(原題)』だ。2006年の映画『サイレントヒル』を手がけたクリストフ・ガンズが、約20年ぶりにメガホンを取り、ファンの期待は自然と高まっていた。北米では1月23日に劇場公開され、筆者が暮らすトロント中心部の映画館でも、平日のレイトショーにもかかわらず賑わいを見せていた。

物語の主人公は、芸術家であり元サイレントヒル住人のジェームズ(ジェレミー・アーヴァイン)。亡き妻メアリーから届いた一通の手紙をきっかけに、彼は再びサイレントヒルへと足を踏み入れる。かつて二人が共に暮らしたこの町は、今や灰と霧に覆われ、廃墟の町と化していた。深い喪失感を抱えながらメアリーを探すジェームズは、やがて黒い体液を吐き出すクリーチャーや、現実と悪夢の境界が曖昧になる異常現象に次々と遭遇していく……。

本作はゲームと同様、ジェームズがVHSテープや警察無線機といった手がかりのアイテムを拾いながら、廃墟や迷路のような町を探索しながら彷徨う様子を中心に展開する。特に印象的なのは、ピラミッドヘッド(三角頭)やナースといったおなじみのクリーチャーたちのデザイン。不気味さ・奇怪さを演出し、大スクリーンで見る彼らの存在感は強烈。個人的には、ゴキブリに近い形の昆虫型クリーチャーである“クリーパー”の大量発生シーンは、脳裏に焼き付くほどのトラウマだった。その一方で、サイレントヒルらしさを感じさせる美術セットにも感激した。

主演のジェレミー・アーヴァインは、ほぼ単独で物語を牽引する難しい役どころを担っている。当てもなく必死に彷徨う彼の姿は、まるでゲームをプレイしているような感覚にさせてくれる。さらに、ゲーム版でもおなじみの作曲家・山岡晃による音楽が、重苦しい雰囲気を効果的に演出。しかし、メアリーそのほか登場人物の描写が浅く、感情移入しづらかったのが残念ポイントだった。

Rotten Tomatoesでは、批評家スコアが19%、観客スコアが30%を記録(1月29日現在)。ゲームの緻密なプロットを全編に盛り込むことは難しく、映画としてのリズムや尺に合わせたことが、この結果を導いてしまったのかもしれない。興行面でも、公開初日は米国内ランキング4位に入ったものの、翌日には8位へ後退。週末の米国内興行収入は約320万ドル、全世界でも約1,930万ドルにとどまっている。シリーズ3作の中で、最も低いオープニング成績となってしまった(米Box Office Mojoより)。

しかし本作は、サイレントヒルという世界に足を踏み入れたい人にとっては、“巡礼”のような体験をすることができる。すべての観客を満足させる映画ではないかもしれないが、あの町特有の空気、罪と喪失の感覚を大スクリーンで味わえる作品であることは確かだ。

『Return to Silent Hill(原題)』、日本公開は今のところ未定となっている。

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Writer

Ayaka SaitoAyaka Saito

カナダ・トロント在住の映画レポーター/コラムニスト。北米で感じ取れる「ポップカルチャーへの熱」をお届けします。好きなジャンル:ホラー、好きなヒーロー:DCブルービートル。

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