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【特集】『スタンド・バイ・ミー』クリス役リヴァー・フェニックス、23年間の生涯で遺した厳選7作 ─ 親友キアヌ・リーブスとの連続共演も

リバー・フェニックス River Phoenix
© TriStar 写真:ゼータイメージ

1970年、アメリカはオレゴン州に生を受け、1993年に23歳という若さで突然この世を去ったリヴァー・フェニックス。ジョニー・デップが経営していたカリフォルニアのナイトクラブ「ザ・ヴァイパー・ルーム」で前触れもなく起きた人気俳優の悲劇は、世界を震撼させた。

死から28年が経過してなおも色褪せない人気を誇るリヴァーは、短い俳優人生の中でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたり、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)でハリソン・フォード演じるインディ・ジョーンズの若き頃を演じたり、映画という形で確かに生きた証を遺した。そして、その遺志は弟のホアキン・フェニックスに受け継がれている。

『スタンド・バイ・ミー』のクリス役で一躍有名となったリヴァーだが、『インディ・ジョーンズ』を除いてはほとんどの出演作がインディペンデント映画だった。ときには事務所の反対を押し切り、ノーギャラ出演を承諾するまでに出演作にこだわりを持ったリヴァー。本記事では、そんなリヴァーの出演作品からピックアップした7作をご紹介する。

『リトル・ニキータ』(1988)

『スタンド・バイ・ミー』後も、ハリソン・フォード主演の『モスキート・コースト』(1986)や青春ラブコメ『ジミー/さよならのキスもしてくれない』(1988)に出演したリヴァーは、映画『リトル・ニキータ』で夢と家族の間で葛藤する少年を演じる。監督は、1973年版『ウエストワールド』などで知られる俳優リチャード・ベンジャミン。脚本は『カッコーの巣の上で』(1975)『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992)などで知られるボー・ゴールドマンが執筆した。

本作でリヴァーが演じた愛国心の強い少年ジェフは、空軍士官学校への入学を希望し、パイロットになることを夢見ていた。しかし皮肉なことに、ジェフの両親はソ連のスパイであることが判明。さらにジェフは、士官学校の面接で対面したシドニー・ポワチエ演じるFBI捜査官から裏口入学と引き換えに(もちろん嘘)、捜査に協力することを余儀なくされてしまう。

ネオノワール作品として、ダークな雰囲気も帯びた本作で、リヴァーが演じたジェフは温かみをもたらす存在として描かれた。ドライブイン・シアターに彼女を連れたり、友人と車を乗り回したり、意気揚々なジェフの姿には青春を感じることができる。

『旅立ちの時』(1988)

『オリエント急行殺人事件』(1974)『評決』(1982)などを手がけたシドニー・ルメット監督によるヒューマンドラマ。主演を務めたリヴァーは、弱冠18歳の若さでアカデミー賞助演男優賞にノミネート。キャリアの絶頂を極めた。

本作のストーリー設定は『リトル・ニキータ』と類似しており、リヴァーは、反戦運動のテロリストとしてFBIに指名手配された両親の下で素性を隠しながら生活する少年ダニーを演じた。ピアノの才能を持ち、周りから一目置かれながらも、親がテロリストであるがゆえに、まともに他人と関係を築くこともできない。親から真実を隠されていた『リトル・ニキータ』のジェフに比べると、初めから「テロリストの家族」としての運命を背負っていたダニーの表情は、一貫して悲しみと孤独に満ちている。

両親がカルト宗教団体のメンバーとして活動していたこともあり、リヴァーはアメリカ各地を転々とし、一時的に南米ベネズエラに移住したこともある。ダニーと似た生活を経験していたリヴァーだからこそ、説得力のある演技を自然に出すことができたはずだ。

離れ離れになると知りながらもダニーが恋に落ちてしまった同級生ローナを演じたのは、リヴァーと私生活で交際していたマーサ・トンプソン。『モスキート・コースト』(1986)に続くリヴァーとの共演作でもある。ダニーの母親役は『幸せへのまわり道』(2019)などのクリスティーン・ラーティ、父親役は『アンカット・ダイヤモンド』(2019)などのジャド・ハーシュ。息子の夢を妨げてまで嘘をつき続けることに対して葛藤するふたりの演技も見どころだ。

[左]リヴァー・フェニックス[右]マーサ・トンプソン|Photo by Alan Light https://commons.wikimedia.org/wiki/File:River_Phoenix_and_Martha_Plimpton.jpg

『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)

『モスキート・コースト』で親子役を演じたハリソン・フォードの代表作で、若き日のインディ・ジョーンズ役に抜擢されたリヴァー。ハリウッドの大作映画経験がなかったにもかかわらず、リヴァーはそれまで描かれてきた向こう見ずなインディアナ・ジョーンズ像を崩さずに、かつ新たな要素を加えながら堂々と演じた。

インディ役にリヴァーが抜擢されたのは、ハリソン・フォード本人の提案によるもの。フォードは、メガホンを取ったスティーブン・スピルバーグ監督に「あの頃の私に一番似ている男は、リヴァー・フェニックスという名の俳優だ」と伝えたという。その後、スピルバーグ監督はリヴァーと面会し、そのまま起用するに至った。恐らくフォードも、『モスキート・コースト』での親子役を通して、リヴァーの才能に気づいていたのだろう。リヴァーにとっての大作映画は、本作が最初で最後となった。

『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』(1990)

数少ない親友として知られたキアヌ・リーブスとの初共演作として知られるコメディ映画。それまでヒューマン・ドラマ路線での出演が目立っていたリヴァーは、バイト先のピザ屋の店長の妻ロザリーに恋心を抱く青年ディーボを演じている。

一途に献身してきた夫ジョーイの浮気を目撃してしまったロザリーは、母親からのそそのかしもあり、夫の殺害を画策。リヴァー演じるディーボも、ジョーイの横暴ぶりや女たらしぶりを目撃しており、思いを寄せるロザリーを助けようと殺害計画に加担する。

見どころは、自分では夫を殺すことが出来ないロザリーに殺害を依頼されたキアヌ演じる殺し屋と、リヴァー演じるディーボ、そしてロザリーら共謀者が一つ屋根の下に集まり、死にかけのジョーイを囲むシーン。瀕死の男を前に繰り広げられる軽いドタバタコメディには、思わずクスッと笑ってしまう。ディーボのさりげないガメつさも良いアクセントになっている。

監督は、『スター・ウォーズ』シリーズや『ボディーガード』(1992)などの脚本で知られるローレンス・カスダン。リヴァー&キアヌのほか、共演には『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(1988)などのケヴィン・クライン、『イントゥ・ザ・ウッズ』(2014)のトレイシー・ウルマン、『インクレディブル・ハルク』(2008)『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)のウィリアム・ハートが名を連ねている。

『マイ・プライベート・アイダホ』(1991)

リヴァーとキアヌがダブル主演を務めた青春映画。監督は『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)『エレファント』(2003)などで知られるガス・ヴァン・サントだ。

ヴァン・サント作品でおなじみ、米ポートランドを舞台とする本作は、リヴァー演じるマイクとキアヌ演じるスコット、2人の男娼に焦点が当てられる。ほかの男娼たちと共に生計を立てるマイクとスコットだが、かたや孤児、かたや市長の息子と、出自には天と地の差があった。それでも親友となった2人は、マイクの母親を探しにイタリアへと旅に出る。

『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』でのコミカルな演技は封印し、人生に悩む若者のありのままを表現したリヴァーとキアヌ。そんな2人の間にも、イタリアへの旅を経てすれ違いが生じていくのだが、関係の絶妙な変化の過程は、互いをよく知るリヴァーとキアヌだからこそ繊細に表現されたものだ。

なお撮影中、リヴァーやキアヌをはじめとする出演者一同は、ヴァン・サント監督の一軒家で共同生活を行った。ちなみにリヴァーは、売春やドラッグなどの設定が登場する本作への出演には所属エージェントから猛反対されていた。にもかかわらず事務所の反対を押し切り、ほぼノーギャラで出演したという逸話を残している。

『愛と呼ばれるもの』(1992)

リヴァーの遺作となった作品。カントリー音楽の中心地アメリカ・ナッシュビルを舞台に、歌を生業にしようと全米から集まったミュージシャンたちの温かい交流が描かれる。リヴァーが演じる青年ジェームズ・ライトは、自由気ままに歌い、心の赴くままに詞を書く。そんなジェームズの元にある日、ニューヨークからギターだけを携えてやってきた女性ミランダ・プレスリー(サマンサ・マシス)が現れる。音楽を心の拠り所にする2人は、くっついては離れるといった若者らしい淡い恋を紡いでいく。

本作でのリヴァーは、音楽をこよなく愛した自分の魂を自然体に、ときに強引にさらけ出している。ギターを肩からかけて、どこか遠くを見据えながら歌うジェームズの姿は、妹のレインと共に組んでいたバンド「Aleka’s Attic」でパフォーマンスをするリヴァーの姿と重なる。ある意味では、人生最後の出演作としてふさわしい1作だったのかもしれない。傷つきやすい若者たちの揺れ動く心は、時代にかかわらず共感を呼び起こす。そんな繊細な若者のひとりを、リヴァーは自分の人生と重ねるようにして演じきった。

ジェームズと恋に落ちるミランダを演じたのは、『アメリカン・サイコ』(2000)『パニッシャー』(2004)などのサマンサ・マシス。リヴァーとは私生活でも交際しており、その関係は彼の死まで続いた。ほか共演には『しあわせの隠れ場所』(2009)などのサンドラ・ブロック、『ヤングガン』(1988)『アバウト・シュミット』(2002)のダーモット・マローニーらが名を連ねた。監督は、『ラストショー』(1971)『マイ・ファニー・レディ』(2014)のピーター・ボグダノヴィッチ。劇中では、エルヴィス・プレスリーやポール・オーバーストリートなど、ナッシュビルの偉人たちの曲も使用されている。

『ダーク・ブラッド』(2013)

リヴァーが撮影期間の途中に急死したことで、未完の作品として棚にしまわれていた幻の1作。リヴァーの死から20年後の2013年、オランダ映画祭で初めて公開された。

本作でリヴァーが演じるのは、砂漠に一人暮らす青年ボーイ。妻を病気で亡くしたボーイは、ホピ族の精霊とされるカチナ人形を彫り続け、世界の終焉を待っていた。ある日、砂漠で立ち往生してしまった中年夫婦から助けを求められるボーイ。仲違いする夫婦に執着するようになったボーイは、自分の宗教観を押し付け、しだいに狂気を見せていく。

リヴァーが急死した時点で、撮影は80%が済んでいたという。リヴァー最後の姿を映し出した本作は、20年もの間お蔵入りとなっていたが、余命を告げられたジョルジュ・シュルイツァー監督最後の作品として2009年に製作が再開。ファンには『愛と呼ばれるもの』がリヴァーの遺作として認識されていたが、シュルイツァー監督は病と闘いながら、4年の歳月をかけてリヴァーの本当の遺作を完成させた。

ボーイの狂気にはまっていく夫婦役は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『2人のローマ教皇』(2019)などのジョナサン・プライスと、『わが青春の輝き』(1979)『インドへの道』(1984)などのジュディ・デイヴィスが演じた。本作が公開された2013年、リヴァーの訃報を知った時を振り返ったプライスは、「何が何だか分からなかった」と英Telegraphに当時の心境を伝えている。「プロデューサーが電話で“リヴァーが死んだ”とだけ伝えてきて。そんなことはあり得ないと思いました」。

Source: Express,Telegraph

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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