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高橋ヨシキ氏の「『ローグ・ワン』にイウォーク族が登場する説」を大真面目に分析・検証する

小生、THE RIVERで記事を書く上で、なるべくバリエーションに富んだコンテンツを扱おうと、常々意識してはいるのですが、ここ最近(2016年12月上旬)、寝ても覚めても考えるのは『ローグ・ワン』のことばかり。他のことを話題にしても、どうしても上の空になってしまうので、これはもうスッパリ諦めて、来週金曜12月16日に『ローグ・ワン』を鑑賞して心が平穏を取り戻すまでは、もうスターウォーズのことばっかり書いていようと開き直りました。

そこで今回扱うのは、TBSラジオでレギュラー放送中の超人気番組「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」。2016年11月19日の放送では、名物コーナー「サタデーナイトラボ」で「月刊わたしのスターウォーズ2016 11月号~わたしの見たいローグ・ワン~」という特集が組まれたのですが、そこでこのシリーズの固定ゲスト、雑誌「映画秘宝」のアートディレクター・ライターである高橋ヨシキ氏が「『ローグ・ワン』にイウォーク族でる説」という持論を展開されておりました。

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最初にお断りしておくと、小生は同番組のファンであり、中でも昨年の『フォースの覚醒』公開半年前からはじまった、この「月刊わたしのスターウォーズ」という特集が大好きです。そして固定ゲストである高橋ヨシキ氏に対しても、映画全般に広大で深淵な知識をお持ちの映画ライター/著作家として多大なリスペクトの念を抱いております(氏の著作『暗黒映画入門 悪魔が憐れむ歌』『暗黒映画評論 続悪魔が憐れむ歌』名著ですので未読の方は是非)。

しかし、そのうえであえて! ネタ話とは分かっていますが! この「『ローグ・ワン』にイウォークでる説」はいささか論拠に乏しいと思いましたので、反論めいたことをしてみたいと思います。ちなみに前置きが長くなりますが、小生のイウォーク族に対するスタンスは拙稿「我が偏愛のSWクリーチャー3」で扱った通りでございます。イウォーク族、ローグ・ワンに出てきたらどんなに嬉しいか……だがしかし! そういうお話です。ちょっと固くなりそうですが、小生の反論も含めて『ローグ・ワン』公開前だからできる、ゆるい与太話のたぐいですので、いつもと同じように銀河系のような広い心でお読みください。

「『ローグ・ワン』にイウォーク族でる説」とは

まず懸案の、高橋ヨシキ氏が展開された「ローグ・ワンにイウォーク族でる説」というのはどういうものか。この説の論拠は、主に以下の2つです。

1.「第二デス・スターはいつから建造しているのか」

高橋氏の説をまとめるとこういうことになります。「第1デス・スターですら建造に20数年かかっている。それよりも一回り大きい第2デス・スターは、劇中での登場こそエピソード5と6の間、ほんの1年間程度のブランクの間に出現したが、当然第1と同程度かそれ以上の建造期間が必要とされるはず。つまりエピソード4直前である『ローグ・ワン』の頃には、イウォーク族の暮らすエンドア軌道上では第2デス・スターの建造が進んでいるはず」。

デス・スターがSW正史に初めて登場するのは『エピソード2/クローンの攻撃』です。ジオノーシアンに発注したデス・スターの設計図をドゥークー伯爵がパルパティーンに届けるシーンがあります。この時点ではまだ設計図段階でしたが、それより3年後の『エピソード3/シスの復讐』のラストではデス・スターの建造が始まっているとわかる描写があり、それから19年後の『エピソード4/新たなる希望』では完成直後という設定です。確かに建造に1個20数年かかるのであれば、エンドア軌道上の第2デス・スターも同じころに作り始めないと間に合わないという説には説得力があります。

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2.このタイミングで宝島社がイウォークのムック本を出した

これを論拠というにはあまりに苦しいですが(笑)、10月31日に宝島社が「STAR WARS Ewok Pouch Book」というイウォークのぬいぐるみポーチ付きのムック本を発売しました。これはイウォークの生態に詳しい素晴らしい本ですが、それゆえに「なぜこのタイミングでイウォークの特集本が発売されたのか?宝島社は我々が知らない『ローグ・ワン』の情報を何か握っているのではないか?」という疑惑なのです。高橋氏いわく、この件に限らず、たくさんいるスターウォーズのキャラクターで2本もスピンオフ映画が製作されたのはイウォーク族のみである、ことほど左様にスターウォーズ屈指の人気キャラクターであるわけだから、もうそろそろ出るはず、出てほしいというものでした。

それでは、反証をはじめましょう。

デス・スターは短期間で造れる

実は、高橋ヨシキ氏の説の大部分を占める、「第2デス・スターはいつから建造しているのか」という、シリーズのファンなら一度は抱くこの疑問には公式回答が存在します。これは、やっぱり第1デス・スターが壊された後、ということみたいです。第2デス・スターの設計に、ヤヴィンで反乱軍に破壊された第1デス・スターの構造上の弱点がフィードバックされていることからも言えるのですが、その短すぎる建造期間について、ジョージ・ルーカス自身がDVD『エピソード3/シスの復讐』の音声解説で「第1デス・スターは資材の調達に苦労したから期間が長くなった」と答えています。

拙稿「【壊す前によく考えて!】デススターの破壊で失われた金と犠牲者を計上してみた」でも触れましたが、確かにデス・スターをひとつ作るには膨大な資源を必要とします。資源を安定供給できるサプライチェーン体制を建造と並行して構築したために時間がかかった、ということらしいです。建造自体、資源さえあれば1年ちょっとでできるってことですね。また、後に「ジオノーシアンの初期設計にいくつもの不備が見つかり、そのたびに研究所に差し戻していたので、何度も建造が中断された」という設定が公式に追加されてしまいました。確かにあんな巨大な構造物、初期の設計図がそのまま最後まで使えるなんて不自然ですね。つまり、「第2デス・スターを建造する時間が短すぎる」のではなく「第1デス・スターを建造するのに時間がかかり過ぎた」という話なのです。

たしかに日本のインフラ工事を振り返っても、豊洲の新市場のように、いつの間にかできちゃうものもあれば、民主党政権時代にすったもんだした「八ッ場ダム」みたいに、何十年も計画が頓挫するものもありました。そういう話は、時代を超えてどこの世界にもよくある話なのかもしれません。

それでも「エピソード5から6までの1年って、どんだけ労働力を動員すりゃ、あんな直径何百キロもあるものを短期間に作れんだよ」という向きもあるでしょうが、考えてみてください。はるか昔遠い銀河系の話ですが、スターウォーズの世界には、24時間休みなく、しかも大量動員できる労働力が存在します。そう、建築用ドロイドです。そんなドロイドが存在する描写は劇中にありませんが、いないほうがおかしいですよね? 人間より遥かに重い物資を運べて、補給も自分で勝手に行えて、休暇も酸素も必要としないわけですから、われわれが生きる現代では推し量れないような「建築作業効率」が、スターウォーズの世界では実現できているとしても全く矛盾は起こりません。

これらの事柄から、高橋氏の「『ローグ・ワン』の頃には、エンドア軌道上でせっせとデス・スターが造られている」という説は残念ながら間違っており、ゆえに『ローグ・ワン』にエンドアが登場する理由もない、ということになります。

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イウォーク族、どうせ出すならもう出てるはず

そして「なぜこのタイミングでイウォークの特集本が発売されたのか」という点ですが、思い出してみれば、昨年の『フォースの覚醒』公開前には、現在よりもはるかに多くのイウォークグッズが発売されておりました。タカラトミーアーツ社から定価40,000円の等身大ウィケットがリリースされたのも記憶に新しいところです。今回話題になったポーチ型のぬいぐるみも、供給過多気味に大量に出回ってましたよね。「イウォークのグッズが公開直前に出ると、映画にイウォークが登場する」のであれば、『フォースの覚醒』にイウォークが出なかった時点でその説は成り立ちません

もっと言うなら、『フォースの覚醒』の方がよっぽどイウォーク登場しそうでしたよね? なんせウィケットを演じたワーウィック・デイヴィスをわざわざキャスティングしたのですから。デイヴィスの出演が発表されたとき、世のイウォーク信者は『フォースの覚醒』にイウォークが再登場することはもはや確定事項のように感じたものです。ところが蓋を開けてみれば、彼が演じたのはマッツ城にいた、なんだか見たことない小っちゃいクリーチャー。あれはあれでかわいいですが、ちょっとJ.J.エイブラムスに「何だよ、あの肩透かし」と、今でも小一時間、問い質したいです。

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そもそもイウォークというクリーチャー、筆者は熱烈肯定派ですが、その存在がファンの間でも賛否が真っぷたつに分かれる存在です。ジャー・ジャー・ビンクスの陰に隠れてしまいましたが、あの爬虫類が登場する前は、何かというと悪い意味で槍玉にあがる存在でした。現在でもイウォーク不要説を唱えるSW信者は少なくありません。再登場させるには、よっぽどの理由と、製作陣の勇気が求められる“めんどくさい存在”なのです。新しいSWの映画を作るにあたって、わざわざそんな危険を冒す必要はないと、みんな判断するのではないでしょうか。

最後の希望はフランチャイズ

結論としましては、高橋ヨシキ氏の「『ローグ・ワン』にイウォーク族でる説」は、その根拠にやや乏しく、筆者は「『ローグ・ワン』にイウォークは出ない」と思っております。ただ、論理的整合性をもってイウォークの出現を立証しようとしても無理なのですが(論理的とか言っちゃいました)、筆者自身は今後作られるスターウォーズ作品にイウォーク族が再登場する希望は捨てておりません

理由はただひとつ、「スターウォーズのフランチャイズがディズニーにあるから」です。ディズニーがこのまま、あんなかわいい子供受けするクマちゃんたちを「過去の作品のキャラ」として放っておくでしょうか。アナザーストーリー「ハン・ソロ」の次の作品が「エンドア」だとしたら? そんなタイトルの映画には、イウォーク否定論者はわざわざ行かないと思うので、バッシングもコントロールできるはずです。起こりうる未来と言えるのではないでしょうか。以上、相変わらずどうかしてるファンの妄言でございました。

スター・ウォーズ キャンペーン

Eyecatch Image:
http://starwars.wikia.com/wiki/File:Rogue_One_Logo.png
http://cover32.com/2014/05/05/seahawks-select-an-ewok-in-star-wars-mock-draft/

Writer

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アクトンボーイ

1977年生まれ。スターウォーズと同い歳。集めまくったアメトイを死んだ時に一緒に燃やすと嫁に宣告され、1日でもいいから奴より長く生きたいと願う今日この頃。

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