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【ネタバレ無しレビュー】『ローグ・ワン』が全く新しい史上最高のスター・ウォーズである4つの理由

筆者(Dr.Falcon)はこの度、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の試写会に幸運なことに参加することができた。前日は正直興奮と不安が眠気に勝っていた。

小学校の頃に初めて『エピソード1 / ファントム・メナス』を観て以来、スター・ウォーズの世界観に魅了されてから15年以上が経過した今、こうしてスター・ウォーズの新作を鑑賞できるとは想像だにしていなかった。この記事では、映画のネタバレは極力せず、試写会で観た興奮と感動を伝えたいと思う。

この記事を通じて、スター・ウォーズ・ファンの1人としてはっきりと断言したい。本作はこれまでで最も最高で最もスター・ウォーズらしい作品である。ローグ・ワンという永久不滅の傑作(マスターピース)が誕生した。

【注意】

この記事には、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』全編を鑑賞した上でのレビューです。
物語の核心部分や結末には触れておりませんが、一般に明かされているあらすじ部分に沿って記述されています。
ネタバレはございませんが、鑑賞前に情報を入れたくない方は、鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。

これまでの7部作でテーマとされてきたことは、大局的な戦いである、分離主義勢力と銀河共和国の軋轢、ドロイドとクローン・トルーパー、ジェダイとシスの闘争、銀河帝国と反乱同盟軍の戦争、そしてフォースのライトサイドとダークサイドの闘争であった。その中でジェダイやハンソロ、チューバッカといったヒーローたちの活躍が語られていたものがこれまでのスター・ウォーズ・サーガだといえる。

しかし、ローグ・ワンはこれまでにない視点で描かれている。もちろんスター・ウォーズ要素がふんだんに盛り込まれていた。戦闘機同士のドッグファイトに、インペリアルウォーカーが迫ってくるシーンはこれまでのスター・ウォーズ・サーガのシーンを彷彿とさせた。しかし、本作は全く異なっていた。本作はスター・ウォーズ・サーガの中にある個々人ひとりひとりのストーリーなのだ。実は、事前に明らかにされていたように、スター・ウォーズの定番であったオープニングクロールとファンファーレが今回はなかった。

これまでのスター・ウォーズと異なる、「もうひとつのスター・ウォーズ」とは、果たしてどのようなものなのか。今回は4つの違いに焦点をあてようと思う。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=frdj1zb9sMY]

違いその1: 最終兵器 デス・スター

デス・スターといえば、スター・ウォーズを代表する巨大兵器だ。

「あれは月ではない、宇宙ステーションだ」
ベン(オビワン)・ケノービ

その姿を現したとき、あまりの巨大さには息を呑んだ。デス・スターは、この世に存在する最も大きな兵器であり、その名の通り惑星を1個丸ごと破壊する。『エピソード4 / 新たなる希望』で銀河共和国の都市オルデランが一瞬で破壊される様子は驚きだったであろう。

http://www.itsvery.net/star-wars-4.html から転載。
http://www.itsvery.net/star-wars-4.html から転載。

本編の中では、予告編にもあるように惑星の静止軌道上に突如としてデス・スターが現れ、その破壊力を惜しげもなく示す。地上に振り落とされたスーパーレーザーは都市を瞬く間に消し去り、大地はめくれ上がり、粉塵が宇宙空間まで撒き散らされていく。このシーンは核兵器の爆発とキノコ雲を上空から眺めているかのようだった。

しかしこれは、兵器の威力を示す実験に過ぎなかった。この実験により、デス・スターは名実ともに人の手によって宇宙に生み出された大量破壊兵器であり、銀河系を恐怖と支配と死(Death)で包み込む象徴となった。これだけ兵器としての役割をクローズアップされたのはこれまでのスター・ウォーズにはなかっただろう。

違いその2: 銀河に広がる帝国主義の脅威


スター・ウォーズに銀河系の様々な星や、戦時中の人民にフォーカスした描写もまたこれまでになかったものだ。
タンクで全体主義を街宣し、人々を検閲するストームトルーパーたちの姿から、銀河系の至るところでこういう光景があったのだろうと想像できた。『エピソード1』 から『エピソード3』で現れた銀河共和国は多様性の共存であったが、銀河帝国が勃興し、画一的な戦闘服を身に纏ったストームトルーパーが闊歩する姿は戦争のリアリティそのものだった。全体主義時代が銀河全体を覆っていた。全体主義の統制下に生きる個人それぞれの”ストーリー”が垣間見えた。

違いその3: 科学者の苦悩

出典:http://www.cbr.com/rogue-one-a-star-wars-story-15-revelatory-new-trailer-moments/
出典:http://www.cbr.com/rogue-one-a-star-wars-story-15-revelatory-new-trailer-moments/

科学と戦争というテーマは映画製作において最も大きなテーマの1つである。現実の世界でも科学技術の進歩は戦争とともにあった。しかし、これまでのスター・ウォーズ作品には科学者が登場するシーンは少なかった。ローグ・ワンの中では、科学者ゲイレン・アーソが主役の1人である。彼は帝国軍のクレニックの銘を受けてデス・スターの設計を行う科学者である。
もともと、ゲイレン・アーソはオルソン・クレニックとともに銀河帝国で仕事をしていたのだろう。しかし、2人は袂を分かつことになった。クレニックは銀河帝国の軍閥の中で提督まで登りつめたが、ゲイレン・アーソは辺境の星へと逃れ、妻のライラと娘のジンとともに隠遁生活を送っている。しかし、クレニックは再び、最終兵器デス・スターの完成を目指すため、ゲイレン・アーソを連れ去る。そして彼の家族は壊されてしまうのだ。

ゲイレンは家族を守れなかった贖罪の気持ちで、自分を貪るようにデス・スターの建造に奴隷のように身心を捧げる。しかしゲイレンの心は帝国に隷属してはいなかった。ジンはゲイレンから受け取ったメッセージを頼りに、デス・スターの設計図を盗み出す作戦を開始する。

違いその4: 正義と信念

帝国の圧政に対抗するために集まった人々は反乱同盟軍を組織した。銀河帝国を打倒し、圧搾され続けた自由を再び取り戻すためだった。しかし、銀河帝国との圧倒的な実力差の前に、一度は団結した正義は大きく揺らぐ。デス・スターの登場は、反乱同盟軍に不安と動揺を与え、彼らの信念を大きくかき乱す。銀河帝国が銀河系、あるいは宇宙全体を統べてしまったらどうするのか。本編でジンは心の声に耳を傾け、ローグ・ワンの仲間たちとともにその問いに対して答えを導こうとする。それが、最終兵器デス・スターの設計図を盗み出し、デス・スターを破壊することであった。

しかし、設計図を得るために彼らは仲間や同士たちの命を危険に晒さなければならなかった。本編では、帝国領スカレフの浜辺で死闘が繰り広げられる。全ては設計図を手に入れるために、彼女たちは命を賭して闘うのだ。

ひとりひとりのスター・ウォーズ・ストーリー

戦争は、多くの人たちの尊い命を奪うにとどまらず、その人たちの生活、積み上げた歴史、愛、そうしたものを全て、灰と瓦礫の中に埋没させ、歴史のメインストリームから消し去ってしまうのだ。「歴史は勝者が語る」とはよく言われている。
これまでのスター・ウォーズのメインストリームはひょっとしたら「勝者の歴史」だけだったのかもしれない。ローグ・ワンでは歴史の隅に追いやられていた、隠れた英雄たちの生き様を描き出した作品だったのだ。ここで、冒頭で述べたことがはっきりとつながる。

「勝者の歴史」というのは、これまでのオープニング・クロールそのものであった。

そう。オープニングクロールがないということは、全体の歴史ではなく、個人のストーリーにフォーカスしていることを示していたのだ。歴史の表舞台に出ることのなかったひとりひとりの生にフォーカスしていたのだ。ローグ・ワンは「勝者の歴史」に埋れた無数の生を歴史の表舞台へ蘇らせてくれたのだ。

本作は『エピソード4 / 新たなる希望』の始まるわずか10分前に終わると噂されていた。

『新たなる希望』に集約していくクライマックスは、瞬きすることを忘れさせられる。本編が終わり、エンドロールが流れたとき、全ての緊張の糸がぷつっと切れたようだった。

スター・ウォーズが世界中の人々に愛されてやまないのは、サーガの中で一瞬だけ登場するキャラクターであっても、ファンが愛情を込めてそのストーリーを見つけていくことにあったと筆者は考えている。だからこそ何度でも見返して、キャラクターに心を寄せて何回も感動するのだ。筆者自身にとってスター・ウォーズはそうであった。確かにスターデストロイヤーと宇宙船の間の派手な戦闘シーンに心が躍ることは間違いない。しかしそれと同時に、全ての登場キャラクターや世界観に魂が宿っているのだ。これはきっと万物に宿るフォースと通ずるところがあるかもしれない。これが本来目指すべきスター・ウォーズの真骨頂だ。

今年新たに後世に受け継がれるべき最高の作品ができた。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー]』はフォースと共にある万人の中に語り継がれていくに違いない。

Eyecatch Image:https://theriver.jp/rogue-one-review/

Writer

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Dr.Falcon新居 舜

若き理論物理学者。専門は宇宙論・重力理論。この世界の成り立ちを求める探求者であり表現者。映画やゲームなどでヴァーチャルで表現される世界観を科学的に分析するのが大好き。ブラックホールに入りたい。